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経営における無形資産との向き合い方 - BE+Social VOICE#2(3/3)

前回のBE+Social VOICE #2(2/3)はこちら

経営として「時間を買う」「人を育てる」ことへの投資の納得感を得られるかどうか

社会関係資本の構築において課題だと感じていることはありますか。

 私としては、経済価値と社会価値がうまく両立しているのは、マーケットでいうと再生エネルギーぐらいしかないと思っています。だから課題は結構大きいと思っていまして、結局人を見て投資をできていない。例えば、大企業が何かヘルスケア領域で新しいビジネスをゼロから立ち上げるとすると5年ぐらいかかりますと。だけど、どこかのスタートアップと組めば5年かかるところを1年でできますと。スタートアップ側で主だった医療系の学会を全部押さえていたりとか、テクノロジーのベータ版というようなものを持っていると、時間軸が5年から1年に短縮されますよね。その時間軸の効果を見える化することが重要な気がします。
 経営の中で時間を買うために、人だったり社会関係資本だったりに投資することをマーケットに納得させられるかどうかということですね。もちろん無形資産なのでどうしても明確に数値にできないけど、投資を納得感のあるものだと訴えるとすれば、「時間を買う」とか「人が育つ」ということがわかりすい。社会関係資本に投資することで、社員の離職率が減ったとか雇用者報酬を増やしたとかそういうことを言っていくということですね。

投資家はあくまでも財務的な数値を見ていると捉えるしかないでしょうか。

 私がスタートアップの資金調達をやっている中で、スタートアップ側はお金が欲しいわけですが、「この技術に1億出して」と言ったときに、大企業が意思決定するのはどうしても時間がかかってしまう。ただ、エンジェル投資家だと、「もういいよ」と言って5分で決断できちゃうじゃないですか。どこのスタートアップも結局エンジェル投資家を口説くしかなくなってくる。今日の本題とずれるかもしれないけど、そういう投資家の層が薄い気がしています。スタートアップ側でメガバンクからの出資を実現したこともありますが、実現させるまでにパワポで100枚ぐらい「うちの会社はソーシャルキャピタルあります」と作るわけですよ。でも最後は役員の人が「君たちを信じます」というような一言で決まるわけですよね。だから何が評価されているかわからないというか。

重要なのはお互いにリスクテイクした上下関係ではなくてフラットな関係

近年、営利・非営利のセクターの境界線があいまいになってきているといえると思いますが、営利活動は利益を出さないといけない中でどのように非財務資本を捉えていけばよいでしょうか。

 例えば、TSUTAYA図書館の事例があります。ああいった取り組みは、要は官が民に仕事を落としているのではなくて、お互いにリスクテイクをしていると思います。もちろん官は官でちゃんとしたルール作りをしてガバナンスをしないといけないのだけども、TSUTAYAも官のためにお金を払ってアイデアを出していくという意味で言うと、上下関係ではなくてフラットな関係だと思います。私は空港の運営民営化もやっていましたが、市場化するときは官と民がプロフィット・ロスシェアをするパートナーということで、官の方も意識を変えないといけないし、民の方も政策提言をしていくというところで意識変えないといけない。
 大きな会社は社会資本をアピールしやすいですけど、小さな会社であっても新しい政策とかアイデアを世の中に突きつけて、新しいサービスを出すこと自体が社会関係資本であり、売上に直結する。

無形資産のCxOのような人を置くことも必要

短期的には利益が出にくいものをアピールしていくことで、一般の方々のイメージや印象は変わっていくと思われますか。

 会社の広報ツールとしては使いづらいと思いますが、副業とか社会の交流活動をやっている若い人がおそらくいて、その中から会社を辞めてスタートアップをやる人が何人か出たりすると、「新しい時代が生まれる」というようなストーリーになっていいですよね。

企業が今後も継続的に事業活動進めていくうえで、非財務資本をないがしろにはできないという前提でいらっしゃいますでしょうか。

 もちろん非財務資本をしっかり捉えていくことが大事だと思います。無形資産がいかにキャッシュを生んでいくかということにミドルマネジメント層が目を光らせることが大事だと思います。そういった意味で、無形資産のCxOというような人を置くことも必要という気はします。