中学生の残像
中学の時だった。
当時好きな子がいた。自分はシャイで、向こうもなかなかなシャイで。
確かめたことはない。ただなんとなく、向こうも自分のことを好きなんじゃないかって、勝手に思っていた。
3年の修学旅行。同じ班で京都を巡った。
男女3人づつの班で、自然と自分とその子は隣同士だった。男女の境界線にいたのが自分達だった。
手は繋がなかった。繋ぎたかった。
少し離れると声をかけられた、話し相手がいなくなる、と。
君、自分のこと好きだろう。
何度思ったか。最後まで口に出さなかった。
その時買った恋のお守りは今はどこかにやった。
冬の始まり。卒アルのための写真を撮った。全員ロータリーに出て二階のレンズを見上げた。
君、どうして隣にいる。もっと仲のいい友達の隣に行きなよ。
言いたくなかったから、言わなかった。ずっと隣にいてくれた。
二人は、付き合ってるの?なんて。
うん、そうだよ。なんて、言ってやろうかと思ったけど。
隣の君がどんな顔するか考えただけで、喉まで出かかったものが引っ込んだ。
そんなわけないじゃん!!付き合ってないよ!
君の顔を見ることはできなかった。
君。急によそよそしくなるなよ。悲しいだろ。
目を合わせてくれよ。こっち見て笑ってくれよ。
話してくれよ。君がいないと自分だって話し相手なんかいないよ。
高校違うんだよ。せめて卒業式の思い出をちょうだいよ。
結局、君の顔も見えないまま、卒業しちゃったよ。
君、今、何してんだろうな。
元気だと嬉しい。笑ってくれてたらもっと嬉しい。
風の噂で君のこと聞く時があるよ。
そんな薄い君の残像で、私、今、息をしている。