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「鳴りを顰める」という創造


専門家集団への憧憬と現実の壁

近年、「クリエイター」「デザイナー」「リサーチャー」など、特定の専門分野に特化した職業名を持つ人が増えています。高い専門性を身につけることで、就職や転職で有利になるだけでなく、仕事においても大きな強みとなります。
先日、そのような専門家たちと接してみる機会があった。彼らの共同体の中で話されている事が、一般サラリーマンである自分との世界にギャップがありすぎで、苦しんだ。専門家同士の会話についていけなかったり、距離を感じたりしてしまう経験をすることは、当たり前かも知れない。
これは、知識と経験の差が大きいからだ。専門家は、実践を通して培ってきた身体感覚を持ち合わせており、知識だけでは到底理解できない領域が存在している。その度に「自分は何者でもない」ただのサラリーマンのおじさんだなぁと。。悲しい気持ちになった。

創造的な「待つ」という営み

NHK100分de名著の神谷美恵子「生きがいについて」では、「待つ」という行為が創造的な営みとして語られています。第3章「待つ」という営為という章にはこう記されていた。

避けがたい出来事に打ちのめされる。あるいは挑戦したが思うようにいかずに挫折する。こうした「生きがい」を脅かす経験は、いつでも誰にでも起こり得る。危機を感じる人は、何とかして一刻も早く立ちあがろうと躍起になります。しかし、なかなかうまくいかないこともある。
さらなる困難が襲いかかる場合もあるかもしれません。また、立ち上がれないことに罪悪感を覚えることもある。神谷はこうした試練のときにおける「待つ」ことの意味、「待つ」ことのはたらきを語る。
前に進むだけでなく、そこにたたずみ、時期を待つ。それが、もっとも創造的な営みである場合が、人生にはある、というのです。「待つ」という行為を経ることで、私たちは、真に自分に必要なものを、自分のなかから見出すということへ導かれていく。
------------途中略
人間もまた外的条件に恵まれないときになるべく抵抗を少なくして、エネルギーの消耗を防ぎ、何とかその時期をやり過ごす方が全体からみて得策のことがある。鳴りを顰め、小さくなって時期の到来を伺うその姿は、一見消極的にみえても、内に強靭な自由の意思を秘めている。

NHK100分de名著の神谷美恵子「生きがいについて」

避けがたい出来事や挫折に直面したとき、人は何とかして立ち上がろうと焦る。しかし、うまくいかないことも多々ある。さらに困難が襲いかかり、立ち上がれないことに罪悪感を抱くこともある。

しかし、神谷氏は、そのような試練のときこそ「待つ」ことが重要だと説きます。前に進むだけでなく、そこにたたずみ、時期を待つ。それが、もっとも創造的な営みである場合が人生にはあると指摘する。私はこのメッセージがストレートに響きました。

鳴りを顰め。小さくなり。そのチャンスを伺う。

他人はそんな私を見て、積極的なアピールが足りないだの、もっと動けば良いだのと、思うかも知れません。しかし絶望の淵ぎわを覗いた自分にしか、わからない自分という人間を理解しているのは自分だけ。自分と向き合う時間をとり、自分の内側から湧水のように湧き上がるエネルギーの源、ぶれない軸がこちらにはある。

「専門家集団への憧憬」「現実とのギャップ」を感じるから鳴りを顰める。
しかし来るべき時は来る。この苦しみを悲しみを忘れてはいけない。

以上

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