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ポートフォリオ戦略実践講座:「業績見通しの改善で異常事態から正常に向かう株式相場、持続性は?」

 3月半ばに底を打った後、株式相場は業績の改善を背景に足元で上げ足を速めています。しかし、この上昇傾向が続くと見るのは難しそうです。何故か・・、データに基づいて解説します。


株式相場は3月半ばにセリングクライマックスの様相を呈して底を打った後、回復過程を辿り足元ではむしろ上昇局面の力強さも感じられます。以下で堅調相場の背景と持続性を解説します。
 リーマン・ショック後の2009年から直近までの12年間にわたる日経平均と理論株価(*)の動向を見ると、この3月以降の株式市場の状況が異常な事態であることが分かります。ここでは対象を今年初以降に絞り日次ベースでキメ細かく相場の実態を検証します。
 下図は今年初から直近の5月28日までの日経平均と理論株価の日次ベースの推移を示すグラフです。

日経平均と理論株価の推移(日次ベース)
―2020.1.6~2020.5.28―
  

20200529日暮増刊グラフ-1

下図は理論株価の説明要因である日経平均ベースの予想1株当たり利益(予想EPS)と米ドルレートの推移を示すグラフです。

予想EPSと米ドルレートの推移(日次ベース)
─2020.1.6~2020.5.28─

20200529日暮増刊グラフ-2

赤線が予想EPS(左目盛)、青線が米ドルレート(右目盛)で、それぞれの指標名の枠内は直近の値です。別の枠でこの間の高値、安値を日付と共に記しています。
 米ドルは3月に一時102円台まで下落した以外は106円から112円の間で比較的穏やかな動きを続けていることから、理論株価は主に予想EPSによって変動しています。予想EPSはコロナ禍の影響を折り込んだ2021年3月期の業績見通しを反映する形で4月半ばから急落し始めます。

 予想EPSが底値をつけたのは5月18日ですが、急上昇は5月21日を起点に生じています。この日は緊急事態宣言が25日にも解除されるという報道がなされた22日の前日で、翌22日から過度に悲観に傾いていた業績見通しが正常に向かい始めて急騰したと見ることができます。この予想EPSの急反発によって理論株価が急騰して異常な高水準であったかい離が大幅に改善しました。5月21日から直近の5月28日までの1週間で予想EPSは70%上昇し、株式市場は正常化に向かったと言えます。
 では、この上昇傾向はこのまま続くのかというと、“なかなか難しい”と言わざるを得ません。理論株価と日経平均のかい離は縮まっているものの、水準自体は依然として高く、相場はかなり割高の位置にあることが示されているからです。
 相場上昇が本格化するにはもう一段の業績改善を軸としたファンダメンタルズの改善が必要と言えます。

(*)理論株価
業績を中心としたファンダメンタルズに見合う日経平均の水準を示す指標。日経平均ベースの予想EPSと米ドルを基に算出。詳しくは個人向けの投資学習サイト、「資産運用のブティック街」で無料で公開している「相場の実相を見る」コーナーを参照してください。当コーナーでは相場の割高・割安を示す指標である「リスク回避指数」も公開しています。

講師:日暮昭

日本経済新聞社で証券分析サービスの開発に従事。ポートフォリオ分析システム、各種の日経株価指数、年金評価サービスの開発を担当。2004年~2006年武蔵大学非常勤講師。インテリジェント・インフォメーション・サービス代表。

(*)ご注意

当講座は投資判断力を強化することを目的とした講座で投資推奨をするものではありません。当講座を基に行った投資の結果について筆者とインテリジェント・インフォメーション・サービスは責任を負いません。

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