【映画鑑賞】今月のベストムービーは「オットーという男」(2023年10月 10本)
祝100本!という事で今月も頑張って見ました。最近思うのですが映画という無茶苦茶金がかかっている娯楽がここまで安く見られるのは驚きだなあと。映画こそが人類が長年作り上げてきたアイデアや感情や学びのコラージュなんじゃないかと。これからも何の為に頑張っているのかよく分かりませんが今後も映画を見続けていきたいと思います。
【第1位】オットーという男(2022年 スウェーデン/アメリカ)
トムハンクスが結構なお爺ちゃんになっていて時の流れを感じた。60代後半だから仕事をリタイアして悠々自適になって後は死を待つのみとなった時に生き方が問われる。
この映画のテーマは「老い」だと思う。
類似作品として「マイ・インターン」があるがあれは老いのポジティブな部分のみを捉えすぎており自分はこちらの方が好きだ。
妻を尊敬し自分の全てだと生きる価値の全てだと信じていたオットーは何度も自殺を試みる。「前向きに生きなきゃ」という隣人マリソルの言葉に「前なんか向きたくないんだよ」というオットー。
いやー解るよオットー。分かりすぎるよオットー。俺が癌になった時に「前向きに!」とか言ってくる知人友人に対して心の中で「そんな簡単に綺麗事言うなよ。前なんかそんな簡単に前なんか向けるかよ」と思ったものだ。
オットーは自分には価値がないと思っていたが価値はあった。線路に落ちた老人を身を挺して救った。暖房のラジエーターのガス抜きをする事、マリソルの子供の面倒を見る事、運転を教える事。妻の教え子の心の支えになる事。そしてパーキンソン病になったかつての親友夫婦の窮地を才覚で救う事。
オットーは人を救い続ける事で自分が救われている事に気がついた筈だ。自分に価値があると気づいたオットーの死は同じ死でも晴れやかだっただろう。
【第2位】ノーウェア(2023年 スペイン)
とてつもない発想から生まれた良作。
自国のクーデターが発生しコンテナに乗って逃げるニコとミア。そこから離れ離れになり大海原の中コンテナに取り残されたミア。ずっとバラバラドキドキのスリラー映画なのだが動の前半と静の後半は恐怖感が違う。
「Fall」という600m以上の高さの鉄塔に取り残された恐怖を描いた映画の類似作品と思う。子を持った女性が持つ根源的な強さ。抗えない自然の残酷さ。人間愛やサバイバーに成長していく過程も含めて感動的。
「昨日より愛している。でも明日以下だ」という夫婦の愛の囁きはスパニッシュ映画ならではだと思う。
【第3位】ザ・ホエール(2022 アメリカ)
270kgを超えたデブが太り過ぎで死にゆく最期の5日を描いた映画。最初はゲイポルノの自慰行為をして胸に物を詰まらせてチャーリーが死にかけるシーンから始まる。270kg超えるチャーリーは太り過ぎてアパートの2階に住んでいるのに外に出かける事も出来ない。後ろを振り返る事も歩行器なしで歩く事も出来ない。
よってこの映画はチャーリーの部屋という密室で対話のみで成り立っている。登場人物も5人しか存在しない。いや5人も存在したというべきか。
チャーリーは同性愛者で元妻との間にエリーという娘がいる。娘はチャーリーが8歳の時に居なくなったのがトラウマになり悪魔のようなグレ方をしている。
9年間放ったらかしておいて死ぬ間際に逢いたいなどとは身勝手にも程があろうがそれでも死にゆく弱さを抱えたチャーリーに最後は元妻もエリーも何も言えなくなっていく。弱さというものが極まると強く純粋になっていくのだろうか。トーマスという宣教師が死にゆくチャーリーに神の救いを捧げるべく付き纏う。だがそこには身勝手さが随所に見え隠れする。
つくづく思う。人は他人を救う時に自分は救われたと感じるのだ。だが実際に救ってなくても救っていると思い込めば自分は救われる。そこに大きな落とし穴が存在する。ボランティア活動をしていた友人がいた。だがどう見ても自分が救われたいと思っているだけだった。トーマスがチャーリーはアランとの同性愛故に堕落したと決めつけた瞬間、静かに怒りをほとばしらせます。当たり前だ。
トーマスの内面を炙り出したのは良識あると思われた看護師のリズではなく悪魔のようなエリーだった。思い入れや自分の世界観が結局人を観る目を曇らせる。エリーがトーマスの正体を暴き、彼の家族にチクった事が彼女の意図とは別に彼を救う事になる。
この映画は暗く、この映画の間中部屋から出る事は出来ない。そして嵐のシーンが多い。まるでこの部屋が大海の中にいる舟でチャーリーが白鯨のように思えてくる。色々な読み解き方が出来る映画だと思うが自分が感じる事ができたのは現時点では上記くらいだ。
【第4位】ハンナ・キャズビーのナネット(2018 オーストラリア)
とある映画インフルエンサーが激推ししていたので視聴。結論はNetflix入ってる人は見たほうが良い!
ハンナギャズビーは同性愛者に理解のないタスマニアで生まれ育った。彼女にとってスタンドアップコメディは自虐ネタで世と自分を皮肉る表現だった。
その彼女はもう自虐で笑いをしたくないのだとそのスタンドアップコメディ中に言い放つ。正しく伝えなければ世界は良い方向に向かわない。笑いは痛みを紛らわすハチミツみたいなものだとスタンドアップコメディアンのハンナ自身が言い放つ時は感動がある。ステージ4の癌を発症した時に「笑いに変えていかないとな」といった仲間の言葉に傷ついた事を私は忘れないだろう。笑いは大切だが軽く見たり笑いに変える事は必ずしも万能ではない。
笑いに変える事で「自分を破壊した人達を野放しにする」。
美術に詳しいハンナはゴッホとピカソを例に取り分かりやすく説明する。ピカソは人間は2次元に収まるものでなく多角的な視点を絵に放り込む事で20世紀最大の巨匠となった。そのピカソですら女性の、若い女性の視点に立つ事は出来なかった。「別れた女を人生を焼き尽くしてしまえ」というピカソの人格を精神を病んでいると看破する。
破壊しない事が人間性の証。
回復する事が人間性の証。
考察する事が財産。自分には価値がある、壊されてたまるものか、と。そこまで言い切るまでどれだけの考察が、時間がかかったのだろうと思うと感動する。
【第5位】別れる決心(2022年 韓国)
最初見終わった時はなんだこれ?の世界。
暫くしてあっと思った。これは6種体癖の恋愛物だったんじゃないかと。
6種体癖はロマンを求める。安定を嫌い退廃的な恋愛を好む6種の内面を表に出したのだとすればこれ程学びの深い作品はないのではないだろうか。昔6種体癖の美人とデートした事がある。彼女は不倫を繰り返しておりイタリア人みたいなロマンチックな人が良いと溜息をついていた。ゴリゴリの未成熟の9種体癖の自分は余り興味を持たれなかったが良かったのか悪かったのか今でも思う所はある。
未解決事件が心の支えである刑事とアリバイのある妖しい魅力を持つ夫を殺された未亡人。彼女は容疑者でありながらお互いに惹かれ合う。東洋版の氷の微笑だ。ネットリとした目と目の会話。含みを持たした言葉のマジわい。性行為はなくともこれって不倫じゃんて思うよね。特にエロいのが一緒に料理を作る所。一緒に料理を作るのってこんなにエロいんだーって思ったね。あと微妙に言葉が通じないのもエロい。
未解決事件の筈がひょんな所から刑事の彼は彼女のアリバイを崩してしまう。で彼女にアリバイを崩した事を示すと同時に「刑事ともあろう者が貴方に惹かれて崩壊してしまった。証拠のスマホは深い海に投げ捨てるように」みたいな事を言って別れを告げるのだけど彼女は「崩壊=愛」て受け取るんだよね。つまり刑事の彼が別れを告げた決心をした時に彼女の愛は始まる。わざわざ転勤した彼の元に又容疑書として現れる。そして「永遠の未解決」となるべく海に等身自殺するという荒技を最後に繰り出す。
9種体癖の自分にはぽっかーん、のラストだけど6種体癖の人にはわかるーていう映画なんだろうか。
【第6位】Fashion Reimagined(2022 イギリス)
映画というより学びが多い映画でございました。今巷にある社会貢献、環境問題、SDGsはファッションだと思う。だけどそういう言い方はファッションに対して失礼だと感じた。
この映画は8、9、10種の良い人しか出て来ない。エイミーパウニーという人。Mother of Pearl(MOP)という会社。
ファッションは業界としては1つの国と考えると3番目に環境破壊をしている。スタイリッシュに生きる事とサスティナブルを両立させる事は難しい。何せジーパン1本作るのに1500L使うとは知らんかった。
エイミーパウニーは追跡可能で動物愛護をし最少のエネルギーで羊毛を求めてウルグアイまで行く。そこで「サスティナブルは生き方(a way of life)が問われる」とエイミーが語った所だ。
そうなんだよ!サスティナブルというのは生きとし生ける物に対する姿勢でありそこに自分も含まれる。身体と心も生命が有限なものでありそれを愛しく使いつくす、という事。
MOPの宣伝映画みたいな映画だったけどエイミーパウニー自体インスタ1.5万フォロワーしかいないというのは少な過ぎるな。とりあえずpop up店には行くよ。
【第7位】ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年)
体癖講座の課題なんで観ないと思いつつも予定がパンパンで何処で観れる所はないだろうか目を皿にしてfilmarksで観れる所を探したら奇跡的に行ける所を見つけて早朝行ってまいりましたよ。
9割はアクション。カメラワークが上からの図とか見てるとこの監督きっとゲーマーだなっと思ったね。
筋は余り大した事はねぇなって感じだけど梅田の大阪コンチネンタルが出て来てここはエモかった。コンチネンタルで大立ち回りを演じて梅田駅から電車で逃げるあたりのストーリーも大雑把で好き。真田裕之コウジ率いるヤクザ軍団が弓矢でアメリカ主席連合を迎え撃つとか相撲取りが用心棒とか設定が無茶苦茶なとこも好き。フランスに住んでいる人は凱旋門からサクレクール寺院での大立ち回りをどう観ているのかな。
登場人物は盲人ケイン(ドニーチェン)が良かったなぁ。力の抜けた達人ぶりをすげぇ味のある演技で出していた。ほぼ今回の主役じゃねぇ?完全にキアヌーリーブスを食ってたじゃん。真田裕之の娘アキラのリナ・サワヤマも凄い良い。ぞくっとするエキゾチックな顔立ちでどういう人なんだろうと思ったらイギリス育ちでイギリスで活動している日本ミュージシャンなんだね。
憎ったらしい侯爵のビル・スカルスガルドのファッションもガチカッコ良いし、Mr.nobodyのちょっとファンキーな存在感もスパイスとして効いていた。
【第8位】熊はいない(2022年)
解釈がとても難しい映画だと感じた。
イランという国はとても親日家だと聞いた事がある。世界一周した人が1番良かった国としてイランをあげる人は複数いる。
この映画はパナヒ監督が実名で登場するドキュメンタリー風映画である。
パナヒ監督は政府に睨まれている。これは事実な訳で登場するパナヒ監督と全く重なる。やむを得なくリモートで指示を出しながら進める向こう側とこちら側にカップルがいてそのどちらにも悲劇が起きる。
本音と建前。村社会。この映画で感じたのは昭和の日本映画に描かれている事に酷使している。映画的面白さは皆無で時折とても退屈ではあった。しかしパナヒ監督が描かざるを得ない、命の危険を感じながらも表現せざるを得ない切実さはあり、それは最近の映画に感じなかったものだ。
イランには「熊はいない」のであろうか。色々な含みがありそこだけは読み取りたかった話でもある。
【第9位】ラストナイト・イン・ソーホー(2021年)
前評判もあって観たけどホラー、サスペンスというより60年代イギリスのSOHOへの強い郷愁映画だなと見た。母親が自殺し田舎から都会へ出てきたマッケンジーちゃんだったが何となく合わない、周りから距離をおくみたいなのは青春時代の自立の映画に見えなくもない。
SOHOでアパートを借りたマッケンジーちゃんだったが眠りに落ちるとサンディという自信に満ちたお人形さんのような60年代の女性になる。クイーンズギャンビットで有名なアニタ・テイラー=ジョイは昔の服装が似合うのだよね。
ちょっと切なくて悲しい話だったけどハッピーエンドで良かったね。ティーンズ向きの映画とfilmarksは言ってたみたいだけど色んなものを詰め込み過ぎたのが良いと感じるか悪いと感じるか評価が分かれる作品やと思う。
【第10位】種まく旅人〜みのりの旅(2011年)
本当は正月に行く淡路島に備えて「種まく旅人 くにうみの郷」を観たかったのに間違えてみのりの里を見てしまった。淡路島に茶畑なんかあったっけ?何か変だなと思っていて最後まで気が付かんかった。
お役所の超お偉いさんがお忍びでお節介にも知り合いの孫のお茶づくりを手伝うというお話。現在の「暴れん方将軍」とか「遠山の金さん」みたいなもんだ。自分は高校生や大学生の頃このパターンのドラマが大好きだったが今見ると流石に幼稚に見える。大人になっちまったな、自分。
田中麗奈てこの頃31歳だけどまだあどけない美少女感があり「福田村事件」では貴婦人感が凄かった。気になる顔立ちやなぁ。