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【3分読書メモ】「100分de名著 ディスタンクシオン」(岸政彦)を読んで
■基本情報
書名:100分de名著「ディスタンクシオン」
著者:岸政彦
出版元:NHKテキスト
出版日:2020年10月
ジャンル:社会学
読書メーター:https://bookmeter.com/books/17152147
■気になったポイント(引用文+コメント)
『ディスタンクシオン』のテーマを大まかに言えば、趣味とは何か、文化とは何か-趣味や嗜好という個人的な領域が、いかに社会と結びついているかです(中略)ブルデューは、自分が好きで選び取った(区別した)はずの趣味というものが、実は社会構造によってはっきりと傾向付けられているということを明らかにしました。
<メモ>趣味は単なる娯楽ではなく、「我々とは何者なのか?」と省みる上で非常に重要な着眼点である。ある人物の趣味を丹念に分析することで、生き方や階級、ある物事に対する向き合い方や傾向性が分かってしまう。
「眼」とは歴史の産物であり、それは教育によって再生産される。つまり、純粋無垢な眼など存在しないというわけです。私たちの眼、つまり見たものに好感を持ったり嫌ったりする姿勢(性向)は、私たちそれぞれが享受してきた社会環境、つまり歴史によってつくられるとブルデューは主張しました。
<メモ>確かにその通りだろう。趣味に打ち込む姿勢や趣味そのものを選びとる意思は、自らが育った(関わった)環境によって規定される場合が多い。
ブルデュー理論におけるハビトゥスとは、簡単に言うと「傾向性」「性向」です。私たちの行為や価値判断には傾向性が存在し、私たちはその傾向性に動かされてあるものを好きになったり嫌いになったりするというのです。
<メモ>個々人の趣味や嗜好、そしてそれらを選び取る態度には一定の法則(傾向性)がある。『ディスタンクシオン』では、その傾向性を「ハビトゥス」と名付けている。
ここで重要なのは、趣味に関する「いい/悪い」の判断は、単純な記号のレベルではなく、自分の生き方そのものが関わっている点です。なぜならば、私たちはハビトゥスによって方向づけられているため、私たちが好きになる音楽、映画、絵画、食べ物、服装などには共通の傾向性があるからです。そして同時に、すでに述べたように、そのハビトゥスによって私たち自身が分類され、一定のクラスターを形成してしまうのです。
<メモ>ハビトゥスによって人間が分けられている以上、趣味活動を介した差別化やレッテル貼りは避けることができない。
美的性向を含む文化資本は、大きくは階級によって形成されます。それは文化的な評価と意味づけと実践のシステムであり、私たちはそれによってあらゆる趣味や文化を分類します。
<メモ>美術品を嗜む鑑賞眼をはじめ、各々の文化資本は生まれ育ちといった階級によって形成される。つまり、出自や生育環境が違えば、己が内包する文化資本も異なっていく。
【こんな人にオススメ】
・「ディスタンクシオン」の原著を読む前に事前知識を取り入れたい人
・個人単位の活動と社会の結びつきに興味がある人
・社会学の名著を探している人