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オーディオ初心者がゆく、イヤホンレビュー ~炎の16連投~(音楽編)

序文

初めましての方は初めまして、そうでない方はお世話になっております。
Missing、あるいは踪無影勿(あとなし・ような)と名乗るものです。

さて私は別段オーディオ沼に落ちた人間ではありませんが、ガジェット蒐集の過程でなぜか手元に16機種ものイヤホンがずらりと並んでしまいました。
折角手元に置いているものなので、今回それらを一括レビューという形で紹介したいと思います。
もちろんオーディオ沼に落ちた人間ではないので、レビュー内容は感覚的かつ主観的で、詳細な技術的特性については別に譲るかたちになりますが、逆説、オーディオ初心者が耳で聴いて感じたことをストレートに表現した内容となっているはずなので、よろしければ何かの参考になればと思います。


レビュー方式

試聴環境

デジタルオーディオプレイヤー:SONY WALKMAN NW-A300/MK
オーディオソフトウェア:Spotify(高音質モード)
有線イヤホン接続時DAC:FiiO BTR5 2021(USB-MQA接続)
 
有線接続時はWALKMAN側の音量を「100」に固定のうえ、DAC側の音量ゲインをいじるかたちにしています。無線イヤホンでの接続時は音量ゲージが最大になる位置から、音量マイナスボタンを何クリックしたかを表記します。
リスニング環境は家屋の室内で、多少の空調雑音以外は静かな状況での試聴となっています。

NW-A300+BTR5 2021

試聴楽曲一覧

以下の25楽曲を通しで一巡して素点付け及び評価を行いました。自分が知っている曲を中心に選定したため、ジャンルはそれなりに偏っています。
なお、最後の5曲は後から付け足したため、厳密には20曲通し→5曲通しという順序で試聴を実行しています。
今回のレビューでは音楽の試聴に限り、ボイスチャットやラジオ試聴、あるいはASMRなど、それ以外の用途での特性については評価していませんので、あらかじめご了承ください。それらの用途についてはそのうち別途レビューするかもしれません。(あやふや)

以下のアーティスト表記については一部省略しています。また、ジャンル表記についてはできるだけ精査しましたが、誤表記がある可能性がありますので、参考に留めてください。
曲順.曲名/アーティスト/ジャンル

  1. Ouvertüre(FULL Ver)/USAO,DJ Genki,ルーン/Happy Hardcore

  2. 声なき魚 - 新川崎(仮)/トゲナシトゲアリ/Alternative Rock

  3. エイトビート・バーサーカー/岸田教団&THE明星ロケッツ/Post-Hardcore

  4. 迷星叫/MyGO!!!!!/Punk Rock

  5. 電波感傷/オフィウクス/Electoro-Pop

  6. 放送室/星街すいせい/Idol Pop

  7. unravel/TK from 凛として時雨(cover by Lia)/Alternative Rock

  8. 再生/25時、ナイトコードで。/Ambient Pop

  9. マーシャル・マキシマイザー/柊マグネタイト,可不/EDM

  10. PRESERVED VAMPIRE/SOUND HOLIC,Nana Takahashi/Power Metal

  11. ハルトキ~Spring Moment~/米倉千尋/Piano Rock

  12. 切札/V.W.P/Dark Pop

  13. Killer neuron/藍月なくる/Gothic Rock

  14. クロライドに没む/millstones,初音ミク/Electronica

  15. 約束/如月千早/Sentimental Ballad

  16. はつ恋/福山雅治/Rock Ballad

  17. 奇跡/THE BACK HORN/Post-Grunge

  18. 飛天/Ayase,R-指定/Hip-Hop

  19. ultra soul/B'z/Hard Rock

  20. Scars/I Prevail/Metalcore

  21. 地球最後の告白を/kemu,GUMI/Vocaloid Rock

  22. 紅蓮華/LiSA/Anison Rock

  23. Lemon/米津玄師/J-Pop

  24. Pretender/Officiai髭男dism/Piano Pop

  25. Shape of You/Ed Sheeran/Pop

レビュー項目

以下の項目について、個人で出来得る限り客観的に評価を行っています。
素点の最大値は「100」で、「70」以上であれば実用に堪え、「80」以上であれば優秀、「90」以上であれば特に優れた特性であることを示します。

明瞭性
 音が耳に明瞭さを伴って届くかどうか、つまりこもった音になっていないかを評価しています。
分解能
 音と音の境界がはっきりしているか、音の要素同士が団子にならず、分解された状態で聞こえるかを評価しています。
迫力
 音の力強さを感じるか、強く圧倒するような音の圧力感があるかを評価しています。
艶感(質感)
 音全体の艶やかさ、逆に言えば粗さのなさを評価しています。高いほど艶のある、なめらかな音として聴こえるという評価です。
高域
 高い音域の質感と、量的な過不足がないかを総合的に評価しています。
中域(Vo.)
 ボーカル域の質感と、量的な過不足がないかを総合的に評価しています。
中域
 ボーカルを除いた中音域、ピアノ・ギター・シンセサイザーなどの質感と量的な過不足がないかを総合的に評価しています。
低域(Ba.)
 ベース音の質感と、量的な過不足がないかを総合的に評価しています。
低域(B.Dr)
 バスドラムの音の質感と、量的な過不足がないかを総合的に評価しています。なお、この項目についてはキック感も評価の中に畳み込んでいます。
素点平均
 明瞭性~艶感(質感)の素点の平均です。基本性能の総合評価と考えてください。
 
以下の項目は言語的な評価となり、また、個人的な感覚が色濃く反映されていることに留意してください。
音域バランス
 音域の特性を言語的に評価しています。「〇〇特化」であればその音域に特に強みを持つ特性、「○○強化」であればフラットな特性にその音域を上乗せした特性、「平坦」であれば全体がフラットに鳴る特性です。また、「ドンシャリ」は高域と低域が強く中域が弱い特性、「凸型」(一般的に言う「かまぼこ型」)はその逆、中域が強く高域と低域が弱い特性を指します。
遠近感
 音が鳴っている位置が耳から遠く感じるか近く感じるかを概ね評価したものです。近く感じる方から順に、「近+2」「近+1」「中立」「遠+1」「遠+2」となります。
刺さり(聴き疲れやすさ)
 耳に刺さる感覚、長時間のリスニングで耳が疲弊しやすい特性をおおむね評価したものです。疲れの小さい方から順に「小+2」「小+1」「中立」「大+1」「大+2」となります。
外観
 そのまま、見た目のファーストインプレッションです。基本的に本体のみの外観の印象になります。
装用感
 身に付けた時の感触です。この部分は個々人の耳の形などで大幅に変わってくると思いますので、軽く流す程度の記述になっています。
コメント
 音楽を試聴し切ったうえでの全般的な感想です。主に音の傾向などを記述していますが、その他の機能で気になる点があればそれも含んでいます。
相性の良い曲
 20+5曲を聴いたうえで、そのイヤホンの性能を引き出せる曲を3つチョイスしたものになります。これは全くの主観によるもので、かつなるべく曲が偏らないように選んだものなので、チョイスする人によって全く違う結果になるかと思います。

レビュー本文

レビュー順は「概算価格が低い方から」となっています。
それでは、炎の16連投、参ります。


TANCHJIM Tanya

概算価格:3,600円
接続:有線
ドライバ:1DD(7mm)
公称周波数:20Hz~42kHz
インピーダンス:16Ω
感度:112dB
(DACゲイン:45)

【外観】
筐体後方に圧力開放用のくぼみがある独特の形状。ミニマムだがマットシルバー塗色で安っぽさを感じさせないデザイン。

【装用感】
軽量小型で装用感は軽い。密閉感が強いところが気になる場合があるかもしれない。

【コメント】
全般に明瞭快活で、まとまりのあるサウンド。高音の厚みやバスドラムのキック感には若干欠けるが、それを補って余りある高精度の音を鳴らしてくれる。
全体が騒がしいタイプの曲よりも、トラックの分離がはっきりした曲に向いているように思う。値段を考えると脅威的な水準の音質と言っていい。
なお、左右表記がなくが分かりづらいが、「TANCHJIM」と書いてある方が右、「Tanya」と書いてある方が左とのこと。

【相性の良い曲】
マーシャル・マキシマイザー
Pretender
Killer neuron


final E3000

概算価格:3,700円
接続:有線
ドライバ:1DD(6.4mm)
公称周波数:記載なし
インピーダンス:16Ω
感度:100dB
(DACゲイン:55)

【外観】
細身のシルエットにステンレスシルバーが美しい筐体。後方はメッシュ加工が施されており、精緻さをうかがわせる。

【装用感】
軽く、閉塞感も無い快適な着け心地。shure掛け用のイヤーフックが付属しているのも嬉しい。

【コメント】
フラットな特性で、原音に忠実に奏でる。明瞭なキレにはやや欠ける部分もあるが、特に中音域から高音域についてはクリアで伸びやかな鳴り方をしてくれる。
優しく静かな曲から元気な曲まで、幅広く高い適性を発揮する。若干鳴らしづらさがあり、DACゲインは大きめに取っているが、音質そのものは非常に高品質。
好悪は別としてモニター的なサウンドなので、シチュエーションによって向き不向きが出るように思う。

【相性の良い曲】
約束
クロライドに没む
Shape of You


CCA Trio

概算価格:5,200円
接続:有線
ドライバ:3DD(8mm*3)
公称周波数:20Hz~40kHz
インピーダンス:15~20Ω
感度:101~103dB
(DACゲイン:48)
その他:スイッチパターン「1100」(低音強化)
    イヤーピース変更(JVC HA-XC91T用純正)

【外観】
艶のあるブラックのフェースと、内部構造が見えるスケルトンのハウジングを組み合わせた、カタマリ感のある洗練されたデザイン。

【装用感】
重量感はあるが耳介にしっかり乗ってくれるため、強い負担は感じない。

【コメント】
内側に沁み込むような豊潤な重低音が出色の出来。高域の量に若干物足りなさがあるものの、3DDという特性を生かして広い音域を余裕をもって鳴らしてくれるオールマイティ機。
音質調整スイッチはデフォルトより「1100」パターンの低音強化に振り切った方がよりメリハリの効いたサウンドに。ノズル径が大きく、イヤーピースはモノを選ぶ。
3ドライバに音質調整スイッチと多機能な分、大柄で重量がある点には気を付けたい。

【相性の良い曲】
迷星叫
ハルトキ~Spring Moment~
飛天


KZ ZS6

概算価格:6,900円
接続:有線
ドライバ:2DD(10mm/6mm)+2BA
公称周波数:20Hz~22kHz
インピーダンス:16Ω
感度:108dB
(DACゲイン:38)
その他:シルバー色モデル
    リケーブル(TRIPOWIN C8)
    イヤーピース変更(FiiO FW5用純正)

【外観】
軽量金属製のハウジングは無機質で無骨。ざらりとした質感はややチープさが否めないところ。

【装用感】
見た目よりはるかに軽量で、違和感はない。デフォルトのイヤーピースは肌触りが今一つ。

【コメント】
傾向としては典型的なドンシャリ。高音のシャリ感が強く耳に刺さる感じは強めだが、分解能は高く多トラックも苦にせずしっかりと鳴らしてくれる。
軽快なボーカルと爽やかなギターサウンドへの適性が高く、多ドライバ機の入門としては好適。ただ、付属のケーブルは今一つの品質なので、リケーブルを検討した方が良い。
どこかで見たようなデザインが若干の不安を煽るが、この価格帯でこの機能性を確保しているなら黙過すべきか。

【相性の良い曲】
ultra soul
Shape of You
迷星叫


FiiO FD11

※販売終了製品

概算価格:7,000円
接続:有線
ドライバ:1DD(10mm)
公称周波数:20Hz~40kHz
インピーダンス:24Ω
感度:111dB
(DACゲイン:40)

【外観】
巻貝のような曲線を描く亜鉛合金製の筐体に、メッキの輝きが美しく重厚感を感じる。

【装用感】
耳への収まりが良く、重量は気にならない。ケーブルの耳掛け部が編み込み線なのが多少気になるか。

【コメント】
透明度の高いボーカルとギターに、芯に響くバスドラムが鮮やかなコントラストを描くサウンド。複雑なロックサウンドでは若干ガチャつく局面があるが、全般には統合を損なわないレベル。
静と動の反応が鋭く、心地いい音のキレを感じることができる。高音に天井を感じる部分が無くはないが、全方位にこれといった弱点のない万能機
ズッシリと重い全金属のシルバーカラーの筐体は巻貝ライクなデザインで、ここについては好みが分かれるかもしれない。

【相性の良い曲】
unravel
Killer neuron
Ouvertüre(FULL Ver)


FiiO JH3

※販売終了製品

概算価格:9,000円
接続:有線
ドライバ:1DD(13.6mm)+2BA
公称周波数:10Hz~40kHz
インピーダンス:28Ω
感度:106dB
(DACゲイン:45)

【外観】
フェースには意匠を凝らしてあるが、全体的にはプラスチッキーな印象。価格に見合っているかは微妙なところ。

【装用感】
軽量かつ耳にフィットするデザインで良好な装用感。ただ軽量ゆえに浮き上がりやすい特性がある。

【コメント】
全音域一貫してクールかつサッパリ系で、聴きやすさを感じる。音が丸まったような印象で低音の威力には欠けるが、ギターサウンドはキレ味があり、全体の統制が取れている。
凝縮感と響き渡る広さを両立したバランス感覚で、多様な楽曲に対応してくれる。極端な元気さや派手さを求めるのは不安だが、淑やかで落ち着いた優等生的な特性。
惜しい部分があるとすればデザイン面なのだが、1DD+2BAという構成に力を注いだ結果とも取れる。

【相性の良い曲】
切札
約束
奇跡


水月雨(MOONDROP) Starfield

※販売終了製品

概算価格:12,600円
接続:有線
ドライバ:1DD(10mm)
公称周波数:10Hz~36kHz
インピーダンス:36Ω
感度:122dB
(DACゲイン:50)

【外観】
美しく深みのあるブルーが印象的な筐体。金属の重厚感も併せ持ち、所有欲を満たしてくれる。

【装用感】
やや耳に乗る重量の大きさを感じる装用感。カドが無いデザインでフィット感自体は良い。

【コメント】
柔らかくしっとりした聴き心地が特色の機体。良くも悪くも耳当たりがふわふわした傾向で、突き抜けるような爽快さはないが、広い音場を感じさせる残響がある。
全般に繊細なタッチで、中高音にピンと通ったしなやかさを感じる。ドンシャリに慣れた耳だと若干物足りなさを感じるものの、他の機種と明確に違う性格付けが光る。
筐体の美しさに目を惹かれるところではあるが、1万円オーバーの機体として機能性との釣り合いがどうかといったところ。

【相性の良い曲】
再生
切札
地球最後の告白を


GEEK WOLD GK20

概算価格:13,500円
接続:有線
ドライバ:2DD(8mm*2)+3BA+2PZT(※ピエゾ素子)
公称周波数:20Hz~40kHz
インピーダンス:10Ω
感度:105dB
(DACゲイン:48)
その他:4.4mm→3.5mmプラグ変換(JSHiFi ZHX)

【外観】
キラキラと輝く鉱石のような水色のフェースを含め、全体が艶のあるデザインをしている。

【装用感】
厚みの割に閉塞感はないが、ケーブルの重みを感じる。また、ケーブル基部が耳に干渉しやすいのが注意点。

【コメント】
ズシンと迫力のある太い低音が非常に印象的な機体。中音域が多少埋もれる感はあるが、7基のドライバを搭載しているとは思えない、しっかりと纏まりのあるサウンドを実現している。
それぞれのドライバが職域を全うしていて、音が混雑するような感触は全くない。全音域の迫力が強い分聴き疲れはあるかもしれないが、音を楽しむことに集中できる一品。
今回4.4mmバランス接続から3.5mmに変換するアダプタを噛ませているが、取り回し上素直にリケーブルした方が良いかもしれない。

【相性の良い曲】
クロライドに没む
放送室
Pretender


JVC XX HA-XC91T

概算価格:17,300円
接続:無線(AAC,SBC,aptX,aptX Adaptive)
連続再生時間:本体11h+ケース11h
ANC:有
ドライバ:1DD(12mm)
公称周波数:20Hz~20kHz
インピーダンス:記載なし
感度:記載なし
(DAPゲイン:-10click)
その他:バスモードオフ

【外観】
非情に大柄で存在感のあるデザイン。洗練はされていないが、とにかく無骨・実用一辺倒といった趣き。

【装用感】
機体サイズに見合った重みは感じるが、装用の安定性は高く多少頭を振った程度ではズレない。

【コメント】
非常にわかりやすい、低域が重視されるメタル等で実力を発揮する低域特化型のサウンド。こもった感じで全体に明瞭度が低いのが比較的気になるポイントだが、鳴っている音自体は非常に力強い。
曲全体に音が散りばめられたタイプの曲とは相性が良く、十分に楽しくリスニングできる。バスモードは確かに低音を強めるが、全体の歯切れが悪くなるので今一つお勧めしづらい。
無線イヤホンとしてはかなりの巨体なのだが、その分物理的な操作性には優れるのでその部分は相殺といった感がある。

【相性の良い曲】
エイトビート・バーサーカー
Scars
声なき魚 - 新川崎(仮)


audio-technica ATH-EW9

概算価格:19,000円
接続:有線
ドライバ:1DD(28mm)
公称周波数:14Hz~24kHz
インピーダンス:29Ω
感度:105dB
(DACゲイン:48)
その他:耳掛け型オンイヤーヘッドホン
    延長ケーブル接続(audio-technica AT645L/1.0)

【外観】
木目と深みのある赤色の塗色がラグジュアリー感を醸し出す、装用品として純粋に美しいと感じるデザイン。

【装用感】
重さは感じず、ゴム製フックでガードされているが、金属部が耳に接触する場合がある。

【コメント】
中域、特にボーカルの質に特化した特性を持つ機体。全体的にジャリジャリした質感と迫力の不足が目立つが、音場広く響く感覚とボーカルの明瞭さは必要十分を満たしている。
音がパンと弾けるような独特のサウンドで、逆ドンシャリに近い傾向の音の出方をする。稀少になった耳掛け式のヘッドホン、それもウッドハウジング機として、十分な実力があるのは確か。
方向性としてはボイスチャットや動画視聴に向いているように感じる。ケーブル長が0.6mと短いため、0.5~1.0mの延長ケーブル(純正付属品でも可)を用意すると良い。

【相性の良い曲】
Shape of You
Lemon
迷星叫


ONKYO CP-TWS01B LYCORIS

※販売終了製品

概算価格:20,000円
接続:無線(AAC,SBC,aptX,aptX Adaptive)
連続再生時間:本体7h+ケース42h
ドライバ:1DD(6mm)
公称周波数:20Hz~20kHz
インピーダンス:16Ω
感度:92±3dB
(DAPゲイン:-9click)
その他:リコリス・リコイルコラボモデル

【外観】
小粒で普通のイヤホンといった外観だが、コラボモデルということでフェースに描かれた意匠が存在感を放つ。

【装用感】
軽量だが本体が浮いた感じがあり、イヤーピースで支えるようなかたちのため、閉塞感が強め。

【コメント】
とがった所のない、精彩のあるまろやかな特性。全般に迫力が不足していて没入感には欠けるが、流して聴く分には必要十分なサウンドで鳴ってくれる
中高域のバランス感が特色と言え、ボーカルとバックの分離も良好。
コラボモデルである分コストパフォーマンスに劣る部分はあるが、どの楽曲でも想定より良好なサウンド。
どこを取っても『意外に』高機能というタイプで、2万円出すのであればより上位の機体が調達できるというのは留意したい。

【相性の良い曲】
電波感傷
はつ恋
Lemon


FiiO FW5

※販売終了製品

概算価格:21,200円
接続:無線(AAC,SBC,aptX,aptX Adaptive,LHDC)
連続再生時間:本体7h+ケース14h
ドライバ:1DD(10mm)+2BA
公称周波数:20Hz~20kHz
インピーダンス:32Ω±20%
感度:106dB
(DAPゲイン:-10click)
その他:イヤーピース変更(FiiO HS18 ※本体付属品)

【外観】
フェースの貝殻を模したようなデザインは好感触だが、複雑な形状なので手入れは欠かせない。

【装用感】
基本的には良好な装用感で閉塞感も無いが、下部の突起が若干耳に当たる感覚がある。

【コメント】
好音響のライブ会場のような、躍動感と広がりのあるサウンド。セミオープン型ゆえに低域は直線的で迫力は抑え目だが、中域以上、特に高域はギリギリ一杯まで伸びていく印象。
表現力が極めて緻密で、どんなジャンルの曲でも深く浸ることができる。万人受けするかは絶妙な位置取りだが、音質特化の文言に偽りなしといった感がある。
この価格帯でANCが搭載されていないのはマイナス要素だが、音質に振り切った分削ぎ落した部分も多いと考えたい。

【相性の良い曲】
声なき魚 - 新川崎(仮)
PRESERVED VAMPIRE
Scars


JBL Soundgear Sense

概算価格:22,000円
接続:無線(AAC,SBC,[LC3対応予定])
連続再生時間:本体6h+ケース18h
ドライバ:1DD(16.2mm)
公称周波数:20Hz~20kHz
インピーダンス:32Ω
感度:112dB
(DAPゲイン:-6click)
その他:オープンイヤー型

【外観】
プラスチックの質感がややチープに感じるものの、JBLのロゴを前面に押し出したデザインは評価に値する。

【装用感】
イヤーフックで二軸の角度調整ができ、なおかつ大きさの割に軽量のため、非常に軽快。

【コメント】
JBLらしさ全開のズシッと重い質感のベースと、オープン型の特性を生かした抜けの良い高音が好印象。半面中音が凹み気味で、ドラムスのキック感も薄いが、悪い評価を下すレベルではない。
多段可動式のイヤーフックで適切な位置で鳴らすことができるのも嬉しいポイント。オープン型としての外音聞き取り力をしっかり有しつつ、全音域で合格点以上の質と量を確保している。
取り扱い上の不満点があるとすれば、イヤーフックを最初の位置に戻してからケースに挿入する必要がある点ぐらいだろうか。

【相性の良い曲】
ハルトキ~Spring Moment~
紅蓮華
飛天


Sennheiser CX Plus True Wireless

概算価格:24,500円
接続:無線(AAC,SBC,aptX,aptX Adaptive)
連続再生時間:本体6h+ケース18h
ドライバ:1DD(7mm)
公称周波数:5Hz~21kHz
インピーダンス:16Ω
感度:114dB
(DAPゲイン:-5click)

【外観】
タッチ操作する面にもなるフェースのツヤと、本体のマットな質感がよくマッチした、上質なデザイン。

【装用感】
耳によくフィットし、軽快そのもの。接触も閉塞も感じさせない優良な装用感。

【コメント】
温かみを感じるマイルドな質感が特徴。うっすら全体が霞んだ印象はあるが、不快感は無く、むしろ大迫力のサウンドを聴き疲れなくすんなり受け入れられる美点と言える。
ドラムスのキック感が素晴らしく、ボーカルや上ものを邪魔することもない。美しい音色に加え、自然な効きのANCや低遅延性など、周辺機能の充実も嬉しいポイント。
一見万能なこの機体の弱点は『充電系』。長く充電状態で放置すると勝手に放電する悪癖があるので、毎日愛用してあげた方が良い。

【相性の良い曲】
放送室
ハルトキ~Spring Moment~
切札


Oladance OWS pro

※販売休止中

概算価格:32,000円
接続:無線(AAC,SBC,aptX,aptX Adaptive)
連続再生時間:本体6h+ケース18h
ドライバ:1DD(23x10mm)
公称周波数:10Hz~20kHz
インピーダンス:記載なし
感度:112dB
(DAPゲイン:-7click)
その他:オープンイヤー型

【外観】
イヤホン全体がイヤーフックの形をした、物珍しいデザイン。質感は高いが、スイッチのデザインに改善の余地がある。

【装用感】
柔軟性のある耳に沿ったデザインで圧迫は感じないが、形状の特性で眼鏡などと干渉する場合がある。

【コメント】
高音質のスピーカーに近い、広がりのある音響が特色。オープン型の宿命で低音が軽めに抜ける部分もあるが、中音のディテール表現に優れ、ギターやキーボードの彩色が際立っている。
サラっとした独特の質感になっており、好みは分かれるが流して聴くのに最適化されている。オープン型としての装用の軽快さを維持しつつ、異例ともいえる高音質を提供してくれる機体。
空気伝導でこの音質かと驚く半面、もう少しだけ耳孔に近い位置で鳴らしてくれれば全体の評価が一段上がったようにも思う。

【相性の良い曲】
はつ恋
地球最後の告白を
Pretender


SONY WF-1000XM5

概算価格:42,000円
接続:無線(AAC,SBC,LDAC,LC3)
連続再生時間:本体8~12h+ケース16~24h
ドライバ:1DD(8.4mm)
公称周波数:20Hz~40kHz
インピーダンス:32Ω
感度:102dB
(DAPゲイン:-8click)
その他:イヤーピース変更(AZLA SednaEarfit MAX)
    イヤホン側イコライザOFF

【外観】
小ぶりだが艶やかな質感が上質さを表現している。その分表面が滑りやすいため、取り落としには注意したい。

【装用感】
すっぽりと耳に収まる小型さで、好適な装用感。ただし小型ゆえに若干機体が浮いた感覚がある。

【コメント】
全域に行き渡った広い音場が技術の粋を感じさせる、ゼネラリスト的なサウンド。強烈に効く低音を鳴らしつつも、楽曲の細部や息遣いまで構築する繊細な表現力も併せ持っている。
強力なANCや調整可能なイコライザも備え、隅々まで隙の無い音響体験を提供してくれる。難点を挙げるなら価格で、コスパを慎重に考慮する必要はあるが、価値ある一品と言える。
小さな筐体にあらゆる機能を詰め込んだせいか、他の機体に比して若干Bluetoothの接続安定性が低く感じる局面があるのも注意事項。

【相性の良い曲】
Ouvertüre(FULL Ver)
飛天
Lemon


あとがき

乱文、長文にて失礼しました。いかがだったでしょうか。(あやふや)
いちおう素点平均の高い順に並べた早見表をここに掲示しておきます。

どの機体も明らかに用を為さないということはなく、ジャンルや使用シチュエーションによって各々の個性を発揮してくれることと思います。
まあ、用意した20+5曲をすべて試聴するのに1機種あたり1時間44分、全体で27時間44分かかるという効率の悪さや、そもそも16機種中5機種6機種が今現在(2024/5/22時点)販売していない(※FiiO FD11について販売終了製品として数え損ねていたため修正)というツッコミどころはさておいて、評価基準は可能な限り一貫させ、極端なバイアスが掛からない用に留意はしたつもりでいます。

なお、私はこのレビューを書いているのと同時に、これらとは別に2万円クラスのイヤホン2機種を調達しようと画策しています。繰り返しになりますが、決して、決してオーディオ沼に落ちたわけではないのですが。
それらの機体についてはまた後日レビューできればと思います。
 
長々とお付き合いありがとうございました。これにて失礼。

Missing/踪無影勿


(2024/5/26追記:2万円クラスのイヤホン2機種についてのレビュー)


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