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「イン・ザ・プール」

イン・ザ・プール を読了
2002年発行奥田英朗著作品

本棚にあり、手をつけていなかった作品
今となってはいつこの本を購入したのか何故この本を手に取ったのかさえ覚えていない
あまり厚さが無く、なかなか寝付けなかったのでこれくらいなら、と思い読み進めた

本作は実写映画化、舞台化、アニメ化までもされている
無知を晒すようで恥ずかしく申し訳ないが、自分はこの作品がそこまで有名だとは存じていなかった
ポジティブに捉えると、先入観がなく作品へと入り込めたのである

シリーズものの短編集の1作目であり、2作目の「空中ブランコ」は直木賞受賞作品であり、こちらは自分でも名前だけは存じている
「精神科医 伊良部シリーズ」とされており、風変わりな精神科医の元へ訪れる患者たちの目線で書かれている

病院もの、精神科、ということで気が引けるような部分があるかもしれないが、
本作品はさくさくと進み、病理の知識が無くてもさらっと読めてしまう
短編集だからだろうか、主要人物の伊良部の雰囲気がそうさせるのだろうか、軽快で取っ付きにくさは全く感じられなかった

伊良部の元へ訪れる人たちは何かしらの精神病を患っているのだが、その病への入口はどこにでもあるような、どこか自分にもその可能性があるのではないだろうかと思わせる
症状や発症する箇所は違えど、登場人物たちの行き過ぎた病は、誰にでもあるような人間の深層心理を捉えていて肝が冷える
その部分の重厚感を伊良部という人物の醸し出す軽薄さが打ち消しているようで上手くバランスが取れていると思う

全体的に重々しい雰囲気はなく、心身症の怖さを側面に持ちつつも、面白可笑しく楽しめる作品だ


こいつは利口か、馬鹿か?
名医か、ヤブ医者か?

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