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「慈善事業じゃないんだから」

高校2年生だった秋から冬の一時期、遊園地でポップコーンを売るバイトをしていた。その遊園地は自宅から歩いて30分ぐらいの所にある、まあまあ田舎な遊園地だった。

園内にある軽食を売るお店に雇われ、その店が持つポップコーン機を使った。お店には店長1人と長いバイト2人ぐらいが入り、私はポップコーンを売る係で、店に入るとポップコーン機をガラガラ指定の場所に移動してマニュアル通りに作った。

ポンポン弾けて出来たポップコーンを、底が台形の長い入れ物に詰めて口を縛り、いくつか前に置いた。すぐ売れる時もあるし、なかなか売れない時もあった。また、新しいものを作っている最中に「買いたい」といわれ、そうすると古いのではなく、出来たてを渡してしまうこともあった。

フワフワに入れるやり方や量の目安を最初に教わったが、お客さんを前にキツキツに詰めたり、量も少し多くなってしまったようだ。ある時、店長に言われた。

「量が多いよ。慈善事業じゃないんだからさあ、入れすぎないで」

ジゼンジギョウ?

一瞬言葉の意味がわからなかったが、要は入れすぎ、量を減らせ。お客さんのために良いことしてる風だけど、商売だからそれはダメだ。

店長がいっていることをそう解釈した。

でもおそらく、それほど量を減らせなかったんだと思う。それについ「出来たてどうですか」と聞いて新しい物を渡してしまったり。

そういった私の様子を見て店長は判断したのだろう。ある時1個年下の女の子が新しく入った。それから1ヶ月ぐらいしたある日、いつものようにポップコーンを売る私の横に立ちいわれた。

人がたくさんいて間に合っている、1人やめてもらおうと思う。そんな内容だった。

私に辞めてもらいたいんだ。鈍感な私でもすぐにわかった。

「クビですか」

「まあ、そういうことだね」

最後の会話はこんな感じだった。

特にショックでもなかった。もう寒い中ずーっと立ってなくてもいいんだ、来週からは来なくていいんだ、家にいられる。ただ新しく入った女の子とは一緒に売ったり、休憩時間に話をしたりといい感じだったので、それは寂しかった。

店長からみた私は、求められるやり方で仕事をしない、ただの慈善事業者だったんだ。

もし今またポップコーン機の前に立ち、売るとしたら。

まず量については、どこまでがOKでどこからがoutか最初にもっと正確に確認し、やり方を守るだろう。

ポップコーンは、やはりアツアツ出来たてをあげたい。そうなるよう最大限工夫する。 

私は求められるやり方で、仕事をできるはずだ。

じゃあ、1週間前に作ったポップコーンを売れといわれたら?

信じられないことだが、その店では1週間前に作り、売れ残ったポップコーンを普通に売っていた。

どうするかな。ドスのきいた声で抗議してしまうかも。それでも売れといわれたら、保健所に実名で電話するだろう。

それぐらい当然ですよね!?



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バジル
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