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【感想文より感動文を】「おすすめの短歌の本を教えて」と言われたらどう答えますか?

刈馬健太さん撮影

■感動/感激/感銘/感心文

語句説明:
感動/感激/感銘/感心:ある物事に触れて、深く心を動かされること。

■本ッ当に好きな短歌の本

田中ましろ さん編

ヤクルトの古田のメガネすごくヘン もっといいのを買えばいいのに/すず
インドにはいろんなことがあるもんでたまごの黄身も白くてびっくり/鶯まなみ
ふと思う 日の丸の赤をきいろに そんなバカな/ターザン山本
あなたはいわしの骨よとびきりの 弱くしなって刺さると抜けない/ねむねむ
そやからなそこをおさえなあかんねんおさえへんからプリッといくねん/えやろすみす
扉(ドア)の向うにぎつしりと明日 扉(ドア)のこちらにぎつしりと今日、Good night, my door(!ドアよ・おやすみ!)/岡井隆
『短歌はじめました。 百万人の短歌入門』(角川ソフィア文庫)

噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし
もう二度とこんなに多くのダンボールを切ることはない最後の文化祭
一面のはすの葉揺らす夏のかぜ陽炎みたいな世界にひとり
デラウエアひとり食むとき水滴がひたりひたりと夜の腕つたう
/小島なお『乱反射』

宇野なずき さん編

懐で暖めていたグミがない信長様に蹴られてしまう
カーペット味と表現したいけどカーペット食べたことがばれる
鮭の死を米で包んでまたさらに海苔で包んだあれが食べたい
雑踏の中でゆっくりしゃがみこみほどけた蝶を生き返らせる
天井の染みに名前を付けている右から順にジョン・トラ・ボルタ
あ 殺してやろうと思い指先で押した ガラスの外側にいた
/木下龍也『つむじ風、ここにあります』

鈴木ジェロニモ さん編

防を上りつめたらでかい川が予言のように広がっていた
新幹線の田んぼの中の看板は実際行けば大きいだろう
車椅子をばこんと開く そういえばこんな気持ちがあったと思う
地下鉄の駅を上がってすぐにあるマクドナルドの日の当たる席
水洗いされたばかりの灰皿に水が残っていてそれで消す
スイミングスクール通わされていた夏の道路の明るさのこと
ペッパー君が聴き取りやすいように話す そういうときの優しさがある
/鈴木ちはね『予言』

上坂あゆ美 さん編

火葬炉の釦は硬し性交の後に生まるる我等を思う
雨上がる竹藪のなかエロ本のごと汚れたる聖書ありけり
私の姉はAV女優だそれも売れっ子だ だからあのカレーの辛さはMAXにする
指先を氷のように尖らせて 精液をそのまま火にくべて
神は糞を拭かない公衆トイレから喘ぐように歌わるる讃美歌
神さま、夢はもう見ませんから、重たくて分厚いまぶたを四つください
神様によく似たひとをぶん殴る おい!おれの人生返せよ!
手を振ればお別れだからめっちゃ振る 死ぬほど好きだから死なねえよ
おれがおまえを抱く おまえはおれを抱く これぞ一石二鳥
生きているだけで三万五千ポイント!!!!!!!!!笑うと倍!!!!!!!!!!
/石井僚一『死ぬほど好きだから死なねーよ』

柴田葵 さん編

万智ちゃんを先生と呼ぶ子らがいて神奈川県立橋本高校
砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
大きければいよいよ豊かなる気分東急ハンズの買物袋
それならば五年待とうと君でない男に言わせている喫茶店
/俵万智『サラダ記念日』

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ
声がでないおまえのためにミニチュアの救急車が運ぶ浅田飴
/穂村弘『ラインマーカーズ』

西村曜 さん編

ジャム売りや飴売りが来てひきこもる家にもそれなりの春っぽさ
ふゆかげのちからよわさよ持久走最下位という事実のなかの
「負けたくはないやろ」と言うひとばかりいて負けたさをうまく言えない
三十歳職歴なしと告げたとき面接官のはるかな吐息
しんりん、と木々をまとめてゆくような冷たさにいくたびも頰は
対岸に林檎は赤く流れ着きそろそろはじまってもいいだろう?
/虫武一俊『羽虫群』

toron* さん編

わが撃ちし鳥は拾わで帰るなりもはや飛ばざるものは妬まぬ
/寺山修司
人間は、中途半端な死体として生まれてきて、一生かかって完全な死体になるんだ
/寺山修司『両手いっぱいの言葉』


片思いも恋愛のひとつのかたちです。
相手は想像力です。
/寺山修司『寺山修司少女詩集』

今だからこそ告白できるがぼくは本当は自分の生前を知っているのだ。だが、ことばなんかに教えてやることはできない
/寺山修司『地獄篇』


きみのいる刑務所とわがアパートを地中でつなぐ古きガス管
人生はただ一問の質問にすぎぬと書けば二月のかもめ
吸ひさしの煙草で北を指すときの北暗ければ望郷ならず
無名にて死なば星らにまぎれんか輝く空の生贄として
/寺山修司『寺山修司青春歌集』

多賀盛剛 さん編

❛ Oyasuminasai ❜ no aisatsu,
❛ Ohayô ❜ no aisatsu no,―
  Kono futari no Ichinichi.
/土岐哀果『NAKIWARAI』

僕が今求めてゐるもの、それはただひとつ、僕のリズムをリズムとするものを
/土岐善麿『新歌集作品1』

ゆったりした
せかせかした
おもい、かるい
さまざまの
街の足音をきいてゐて
湧く思いがある。
/渡辺順三『烈風の街』

鈴木晴香 さん編

雪は人をおとずれる 人が河沿いの美術館をおとずれるのに似て
雪の音につつまれる夜のローソンでスプーンのことを二回訊かれる
六面を紙につつまれ冬の部屋に届くバターのほのあかるさよ
この世からつめたい水を逃がすこと父のため桃を洗った水を
パジャマのボタンを留めるいつかこうして天国の硬貨を拾う
今宵あなたの夢を抜けだす羚羊(れいよう)の群れ その脚の美(は)しき偶数
雪は人をおとずれる 人が河沿いの美術館をおとずれるのに似て
/服部真里子『遠くの敵や硝子を』

ショージサキ さん編

五年後に仕返しされて殺される覚悟があればいじめてもよい
思い出をつくっておこう 寝たきりの老後に夢をみられるように
/枡野浩一『ドレミふぁんくしょんドロップ』

今すぐにキャラメルコーン買ってきて そうじゃなければ妻と別れて
佐藤真由美
ゴミの日のゴミのとこにいるノラ猫はゴミじゃないと思うバスの中から
脇川飛鳥
営業を終えた車中でスネ夫から自分に戻るために聴く歌
柳澤真実
/枡野浩一『かんたん短歌の作り方』

岡本真帆 さん編

風に、ついてこいって言う。ちゃんとついてきた風にも、もう一度言う。
からだをもっていることが特別なんじゃないかって、風と、風のなかを歩く
風と陽は部屋に入らずやってきて出てもいかずにいなくなるんだ
ルビーの耳飾り 空気が見に来てくれて 時々ルビーと空気が動く
お土産を貰って少し置いてから食べた 置いていた場所がさみしそう
ちょっと無理させて曲がった川沿いの道は、太陽 遅れて見えた
おいしい、の手話を覚えた 噛みながら何度もできる みていてほしい
純粋に、みつけられたい ブローチをつけて貰うとき 胸を張る
季節のものを食べていれば大丈夫だよ。それは涼しい味がするから。
お花見をしたあとくれた双眼鏡は小さくて首からさげられて優れもの
夜をめぐるモノレールいつみてもピークいまこそがピーク進んでいくよ
/谷川由里子『サワーマッシュ』

武田ひか さん編

紫陽花の奥へ奥へとさしこんだ手はふれるだれかの晩年の手に
夕闇の箍(たが)がはずれてきれいだな顔面溶けてあなたにもなれる
いつか躑躅(つつじ)が夜空を覆う いつかわたしはあなたの指を本当に食べる
/大森静佳『ヘクタール』

志賀玲太 さん編

どこででも生きてはゆける地域のゴミ袋を買えば愛してるスペシャル
もういいよわたしが初音ミクでした睫毛で雪が水滴になる
ぼくはきみの伝説になる 飛べるからそれをつばさと呼んで悪いか
/初谷むい『花は泡、そこにいたって会いたいよ』
それはたとえば、百年育てて咲く花を信じられるかみたいな話?
会ったことのない人を好きになったり それがすてきな切符になったり
再会のためのパスワード nandodemo 今世も来世も今日のつづきよ
/初谷むい『わたしの嫌いな桃源郷』

虫武一俊 さん編

シャッターを切らないほうの手で受ける白亜紀からの二塁牽制
表面に〈さとなか歯科〉と刻まれて水星軌道を漂うやかん
このケーキ、ベルリンの壁入ってる?(うんスポンジにすこし)にし?(うん)
/笹井宏之『ひとさらい』


ほほえみが頬を壊してゆくことを秋半ばしろく繊き雨降る
さびしさに死ぬことなくて春の夜のぶらんこを漕ぐおとなの軀
/内山晶太『窓、その他』

藤宮若菜 さん編

灰色がこの世でいちばんうつくしくなる瞬間にぼくは泣いてる
ひとよりもがんばらなくてはならなくてそれなら鳥になったらいいよ
永遠がないのではない永遠の手前にいつもY字路がある
/福島遥『空中で平泳ぎ』

もうこれはわたしのためのひかりではないということだけはわかった
とりあえず冷凍ご飯あたためて嫌になるまで一緒にいよう
/福島遥『この夏の話』

バスで十五分だけれど明日からたぶんどこよりも遠い街
ずれたなら二周遅れでもう一度合わせにいくよ 愛の話よ
選ぶってすごいことだねいつの間にみんなここからいなくなったね
好きすぎてこれ以上読めない小説みたいだどうかずっと生きてて
/雲居ハルカ『壊れていてもかまわない』

谷じゃこ さん編

ポ領マカオのガイドさん言う「顔見ればスリと分かるが言うと殺される」
三十億補強の巨人負けるべし金の力で勝てると思うな
/奥村晃作『男の眼』

〆鯖のひかり純米酒のひかりわが暗がりをひととき灯す
職場から酒場へ向かふ 西部劇のころがる草のやうな気持ちで
/田村元『昼の月』

オレは蜂に刺されたことなくこれからも刺される気しないふつうにしてて
/奥村晃作『ピシリと決まる』

榊原紘 さん編

今日の在り方にいつはりはなし魚買ひて濡れたるつりをわれは掌(て)に受く
黍畑に押しひろがりてゆく雲の重量感を頭(づ)に感じ居り
/真鍋美恵子『白線』

月のひかり明るき街に暴力の過ぎたるごとき鮮しさあり
桃むく手美しければこの人も或はわれを裏切りゆかん
/真鍋美恵子『玻璃』

出典:短歌のすみっこを伝えるWebマガジン「TANKANESS」より

■”暇、を楽しみたい人の本屋”「葉ね文庫」

■大阪・中崎町『葉ね文庫』さん選「ヘアサロンで読んでほしい5冊」

■【働く30代を癒す“現代短歌”のすすめ】手もとに置きたくなる!おすすめの歌集8選

■《帆を揚げる 会いたい人に会いに行くそれはほとんど生きる決意だ》

「太陽帆船」中村森(著)

ヴァトーの絵画「シテール島の巡礼」に着想を得て。

ドビュッシーが作曲した「喜びの島」が脳内に響き始めると。

きらきらした光の粒子が降り注ぐ。

■石川啄木の「三行書き」

それまでの短歌の世界では、1首を、1行でおさめるのが普通で、1行で字空けをせずに書かれるのが一般的でしたが、啄木は、自らの短歌を、あえてリズムのよい箇所で改行をして、3行に分ける「三行書き」を採用しています。

三行となったのは、

「一握の砂」

「一握の砂・悲しき玩具―石川啄木歌集―」(新潮文庫)石川啄木(著)

をまとめるときからで、以前の初期の習作は、一行書きの短歌を採用しており、歌人としての円熟に従って、この形式を意識的に選択したのではないかと推察されます。

この表記方法は、新しい短歌の書き方であり、啄木に特徴的なものです。

①改行の箇所はいつも決まっているわけではなく歌の内容によって決定

②句読点とエクスクラメーションマーク(!)の採用

③口語体を使用

④「一握の砂」は回想の短歌が主

⑤日常の生活に主題がある歌(生活派)

⑦「へなぶり」の歌

⑧風景詠はない啄木の歌

<参考資料>

<参考図書>
「新編 啄木歌集」(岩波文庫)石川啄木(著)久保田正(文編)

「啄木・ロ-マ字日記」(岩波文庫)石川啄木(著)桑原武夫(訳)

「秀歌十二月」(講談社学術文庫)前川佐美雄(著)

「啄木の遺志を継いだ土岐哀果 -幻の文芸誌『樹木と果実』から初の『啄木全集』まで』」長浜功(著)

■短歌そのものの表記について

■参考記事


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