【クラシック音楽の楽しみ方のいろいろ】好きな楽器の名曲を追いかける
今回は、
「好きな楽器の名曲を追いかける」
という楽しみ方。
どんな名曲も、考えてみると、何らかの楽器によって演奏されるもの。
そのことに気がつくと、独奏にしろ、合奏にしろ、音色や、技術が気になってくるものです。
かくいう私も、実は、ピアノに目がなく、好きな曲が見つかると、弾けもしないのに、楽譜を眺めてみたり。
文献を調べてみたり。
そんなことを繰り返したり、上手な人に、ひたすら憧れる。
あるいは、独自の愛好テープを作る。
といったことを、飽きもせずに、やっているのですが、こういう、楽器への憧れは、多かれ、少なかれ、誰にも、あるのではないでしょうか。
音楽を聴く場合にも、この楽器を中心に、名曲を選ぶ・作曲家を選ぶ、というのが、ここでの楽しみ方で、ひょっとすると、一番、入りやすい素直な方法だといえるかもしれなませんね(^^♪
この場合も、また、いくつかの発展のさせ方があるかと思うけれど、最もポピュラーなのは、気に入った楽器を主役にした、代表的な名曲を聴くことです。
といっても、これには、協奏曲や、室内楽曲のようなものから、交響曲、管弦楽曲の一部、独奏用の小品まで、さまざまなものがあります。
通常、やる人が多いのは、独奏曲としての小品から聴き始めて、協奏曲や室内楽曲等へと広げていく方法で、特に、ピアノや、ヴァイオリン、ギター等の場合は、該当曲が多いせいもあって、この方法は有効だと思います。
それに対し、オーボエとか、ホルン、クラリネットのような楽器は、小品が少なく、室内楽や、管弦楽で使われることが多いのが特徴的です。
こういう場合は、重奏や、アンサンブルの中で、いかに効果を発揮するかという、別の興味があり、特に、多種の楽器が混じりあう管弦楽においては、部分的に アクセントを利かせた独奏楽器の使い方、スパイス的効果に魅せられる人も多いのではないでしょうか。
例えば、サンーサーンスの
交響曲第3番「オルガン付き」第2楽章(第1部)
で、突然に響きわたるオルガンの音だとか、シューベルト
交響曲第8番「未完成」第1楽章
の冒頭で、地底から湧くかのごとく唸り出すチェロと、コントラバスの音。
リストの
ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 第3楽章
で、鈴のような可憐な音を響かせるトライアングル。
ガーシュインの
「ラプソディ・イン・ブルー」
「ラプソディ・イン・ブルー(ピアノと吹奏楽編)」
の冒頭で、消防車のサイレンのような音を出すクラリネット等の例を挙げてみるとわかると思うのですが、効果的というだけでなく、それが、無かったら、現在あるような世界的な人気も、決して、得られなかったのではなかろうかと、そう感じられます。
以上のような点に魅せられるオーソドックスな楽しみがあるかと思うと、一方には、近年人気の
「古楽器」
に魅せられる、レトロ趣味の人たちも少なくありません。
例えば、フランスープリュッヘン指揮の
18世紀オーケストラ
とか、二コラスーアーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、
クリストファー・ホグウッド指揮
エンシェント室内管弦楽団、
コレギウム・アウレウム合奏団
といった団体による演奏等が、それです。
彼らは、バロックや、古典派時代の作品を、当時、そのままの楽器を使い、当時と同じ編成によって、再現しようという、考えてみれば、当り前のスタイルを売り物にしています。
それというのも、一九世紀以降、大抵の楽器は、改良が重ねられて、当時とは、音色も操作も、まるで違うものになってしまっています(^^;
そればかりでなく、オーケストラの編成もまた肥大化して、当時の二倍くらいになってしまっていますから(^^;
音量も、響きも、圧倒的に拡大華麗にはなったけれど、しかし、そういう形が、果して、本当の姿なのかどうか。
もう一度、当時の形に戻って考えてみたらと間う、レトロ趣味というよりは、近代スタイルへの問題提起といった方がよい古楽器演奏の復活。
聴いてみると、これが、何とも、素朴で、味わい深い響きと雰囲気をもっているんですよ。
更に、また、こんな曲を集めて楽しんでいる人もいるらしいです。
それは、どんな楽器にもいたであろう、演奏の名手たち。
音楽史に名高い名演奏家が書いた作品を聴くのです。
ラフマニノフ、クライスラー、パデレフスキらは、本人の演奏も残されていて興味深く、彼ら、名人達が得意の楽器を、どのようにとらえていたか。
残された作品から、探ろうとするこの聴き方は、いかにもユニークで、面白そうですよね。
もう一つ、さらに、風変わりなところでは、
「珍楽器・失われた楽器の名曲を聴く」
という楽しみ方もあります。
例えば、水を入れたグラスを並べて、その縁を濡れた指先でこする
「グラスハーモニカのための曲(モーツァルトの「アダージョ長調K.356)
とか、
3種類のスピーカーを使い、独特・多彩な音を出す電子鍵盤楽器「オンド・マルトノ」。
これを使ったメシアンの「トゥランガリラ交響曲」。
リード式オルガンの一種「モニウム」 を使った、ベルリオーズとサンーサーンスの「三つの小品」。
あるいは、かつて、存在したといわれる「アルペジョーネ」「リラーオルガユザータ」「パン「ルモニコン」といった楽器のために書かれた作品、シューベルトの
「アルペジョーネ・ソナタ」、
ハイドンの
「リラ協奏曲」
ベートーヴェンの
「ウェリントンの勝利」
等が、それ。
これも、また、聴いてみると、実に楽しいですよ(^^♪
【参考図書】
「楽器の科学 図解でわかる楽器のしくみと音のだし方」(サイエンス・アイ新書)柳田益造(編)
「楽器の科学 美しい音色を生み出す「構造」と「しくみ」」(ブルーバックス)フランソワ・デュボワ(著)木村彩(訳)
「音律と音階の科学 新装版 ドレミ…はどのように生まれたか」(ブルーバックス)小方厚(著)
「世界の音 楽器の歴史と文化」(講談社学術文庫)郡司すみ(著)
「楽器の物理学N.H.フレッチャー/T.D.ロッシング(著)岸憲史(訳)