【霞始靆随感禄】ふれあい、実験し、想像しながら、"彼ら"の世界に分け入っていく
「動物たちは何をしゃべっているのか?」山極寿一/鈴木俊貴(著)
京都大学前総長で霊長類学の権威と、シジュウカラの言葉を解明した動物言語学者による、まさにタイトルをテーマにした対談です。
①動物は、一般に思われているよりも言語を使ったコミュニケーション方法を多く用いている。
②シジュウカラは見つけた天敵によって鳴き声を変え、さらに天敵の姿をイメージすることができる。
それだけでなく、鳴き声が語順と文法を持っていることが実験でわかっている。
③ゴリラもまた高度な言語能力を持つ。
鳴き声とジェスチャーを組み合わせて文脈を読めるだけでなく、相手の考えていることを想定する心の理論がある。
発話は限られているが、手話を教えれば過去の出来事を語るようなことまで表現できる。
④人間は高い言語運用能力を持つが、それによって言語以外の感じ方を忘れつつあるのかもしれない。
ゴリラが教わった手話を使い、昔人間に捕らえられた時の様子を語り始めたり、シジュウカラの話す言葉には、単語や文法が存在していたりと、動物が持つ驚くべき能力が数多く明かされています。
また、犬は類人猿よりも認知レベルが人間に近く、白目で意図を他の個体に知らせるよう進化したそうです。
言葉が発達する前からの人間が、集団として縁を作る手段は、
「身体を共鳴させる」
ことで、具体的には、火を囲みながら一緒に食事をして歌い踊ったのだろうと述べられています。
音声・身振り抜きの言葉のやりとりには、誤解が生じるリスクが、常にあることを、改めて認識でき、
「人間と動物という二項対立から離れて、もっと俯瞰的な視野から言葉や人間の能力とは何なのかを理解する必要がある」
との指摘は重要です。
言葉は、諸刃の剣です。
依存しすぎると、世界を、あるがままに見ることから遠ざかり、言語化できない感情や、身体性を失ってしまうのではないでしょうか。
言葉に依存する社会になったことで、ヒトは、非言語情報を認識できなくなる(食や性?)かもしれません。
他の動物たちの言語のあり方を研究することは、私たちの言語との付き合い方を見つめ直す良い機会になるのではないかと考えられます。