【個性的な作曲家がいっぱい】ギャンブル好きな作曲家
ギャンブルというと、身近なところでは、競馬や競輪、競艇、宝くじ等が主なところ。
どちらかと言えば、庶民の遊びといったイメージがあります。
外国でも、トランプやビリアートの他にも、色々な賭けごとがあります、それにしても、お堅い作品を書くクラシックの作曲家とギャンブルとは、私たちのイメージとして結びつき難いのではないでしょうか。
ところが、彼らも、同じ人間です。
実際に、ギャンブルが大好きでした。
音楽に負けないくらい、のめり込んでしまったという人も、いなくはないのです。
その代表ともいうべき一人は、ヴァイオリンの鬼才として歴史に名高い、パガニーニです。
独学に近い練習によって、身につけた超人的技巧により、一代からプロのヴァイオリュストとして、名声を博した彼は、17歳の頃に、既に、大人顔負けの高収入を得ていたといいます。
しかし、不相応の大金は、パガニーニに、美食、酒、女、ギャンブルの味を覚えさせたようです。
例えば、ギャンブルに関しては、こんな話が残されています。
あるとき、演奏会の直前にやったギャンブルに負けた彼は、愛用していたヴァイオリンを取られて、ステージに立てなくなってしまった。
しかし、その才能に惚れ込んでいた一人の蒐集家が、
「キャノン」
と呼ばれる名器を、彼に贈ってくれたお蔭で、危うくセーフ。
ところが、その後、またまた負けて、この名器も取られそうになった。
しかし、
「よ~し、最後にもう一番」
とやった勝負に勝って、危うく取られずにすんだ、というのです。
他にも、死の3年前には、パリにカジノをつくるという話に乗せられて、出資金をだましとられ、法律上の責任者として責められたあげく、パリを逃げ出して、各地を転々とした、という話も残されています。
まあ、よほどギャンブル好きだったのでしょうねぇ。
パガニ一二程ではありませんが、やはり、ギャンブル好きだったのは、チャイコフスキー、リヒャルトーシュトラウス、ヴェルディらです。
ともに健康的な遊びの域におさまっていたようで、いずれも、トランプ。
「スカート」というゲームが好きだったR・シュトラウスは、歌劇「インテルメッツォ」 (1923年作曲。自らの家庭のようすを描いた作品)の中に、これに興じる場面を挿入し、チャイコフスキーも、カードをめぐるドラマティックな歌劇「スペードの女王」を書いていましたね。
真相は不明ですが、やはり好きだったのではないかといわれるのは、モーツァルトです。
というのは、よくいわれるウィーン時代晩年の彼の困窮ぶりが何からくるのか。
夫婦そろっての浪費癖によるものの他、もしかしたら、モーツァルトが、カジノに出入りして負け続けたことも、大いに関係している、と主張する研究家がいるからです。
彼によれば、モーツァルトの当時の収入は、減っていたとはいえ、決して低いものではなく、むしろ支出に問題があった。
それこそ、ギャンブルによるものに違いないというのです。
当時のヨーロッパでは、各種のギャンブルが、日常的な娯楽となっていたから、この推測は、当っていたかもしれず、モーツァルト以外にも、それを楽しんでいた作曲家は、多分、いるに違いないのかなと、そんな風に感じます。