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[MAZDA ユーノス・ロードスター[MX-5](NA)]について

マツダの販売チャンネル・ユーノス店より、1989~1998年間に販売(NA型)された二人乗りのオープンカー。
駆動方式をFRとした二人乗りのオープンボディであり、当時衰退しつつあったライトウェイトスポーツカーを現代にまで復古させた、マツダを代表する車種のひとつとなっている。

モデルチェンジまで2度のMCを受けており、1度目(NA8C型)では主にEG(1600→1800cc)やブレーキローターの大径化、LSDの変更(トルセン式)などの改良、2度目では更にECU・フライホイールの改良など、新しいEGに対するレスポンスの改善が主におこなわれている。


 内外装問わずデザインには、日本文化のモチーフが数多く取り入れられている。外装のデザインでは、正面は能面の「小面」(こおもて ≒ 若い少女の面)、サイドボディのラインは、能面の「若女」(わかおんな ≒ 若い女性の面)のシルエットを取り入れられており、車体の曲面は光の映り込みまで計算されている。全体的に曲線で作りこまれているシルエットは、北米市場を意識していたことが伺える。

東京国立博物館 - ColBase: 国立博物館所蔵品統合検索システム: online database: entry tnm/C-1552, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=97651204による
Francigf at en.wikipedia - This photo is taken and uploaded by the author., CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4316524による

 リアのランプには、ストップランプ部に江戸時代の後藤分銅がモチーフとして取り入れられている。

As6022014, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=112951260による

開発陣のお気に入りの部分として有名で、ニューヨークのMoMA・近代美術館にデザインの代表として展示されてる。

 アウタードアハンドルは、茶室の「くぐり戸(にじり口)」をモチーフとした専用部品が使用されており、内装のモチーフへとつながっている。

663highland - 投稿者自身による作品, CC 表示 2.5, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4540989による

 初代ロードスターのシンボリック的なアイテムとして、リトラクタブル(ポップアップ)ライトがあげられる。

まるでカエルのようなライト形状が特徴的で開発時にこだわったとこ(開発時は四角)である。ウィンカーの細長にもこだわっており、リトラにすることでこの形状にしている。


 オープンであることに拘ったロードスターは、幌の排水にもこだわっていて、通常のハードトップと同じ降雨試験をおこなっていたことは有名である。クローズしたときにシルエットに影響がでないように、敢て突っ張ったような材質がえらばれている。オープン時にはボディライン下に収納できるのもデザイン上で拘った部分とされている。
NA型のみ、リアのスクリーンはガラス製ではないが、ファスナーにより脱着が出来るようになっている。


B6-ZE [RS]

 初期のEGは、新開発とされた1.6L DOHC直列四気筒 6-ZE型となる。このEGは、当時のファミリアのGTグレードに搭載されていたB6型を改良・縦置にして搭載されてる。
 ファミリアからの変更点は、圧縮比の低下、ノックセンサ・VICSの不採用となり、最高出力は120ps/6500rpmとなっている。高回転志向の特性となっている。

エキマニはステンレス製で、アルミ製の専用カムカバーが仕立られている。

 MC後にエンジンを1.8LのBP-ZE型に換装している。BP-ZE型は、BG8S型ファミリアのBP型を基に改良している。


  足廻りは、マツダとして初となる4輪ダブルウィッシュボーン式が採用されており、ジオメトリーや特性は主にコーナリング性能が主体となっている。パワーが主体ではないライトウェイトスポーツにおいて、「人馬一体」を体現する為に、ハンドリングは回頭性が重視されている。
 サスペンション剛性やブッシュ特性(コーナー時にトーインになるよう)を調整し、ハンドリングのクイックさやタイヤからインフォメーション(路面状況の応答)を得られるような味付けとなっており、低い速度域(つまりは普段乗り)でも回頭性の恩恵を受けられるようになっていた。

 この「きびきび走る」味付けは、高速領域でのハンドリングで一部で問題(俗に曲がりすぎる)になったこともあり、その後のNB型以降では、高速領域でのコントロール特性を考慮した味付けに変更されていくこととなった。


 ハンドリング以外で運動性能に大きく寄与している特筆すべき機構が、Power Plant Frame(PPF)の採用である。
当時の新型RX-7(後のFD型)で考案され、ロードスターに先行導入されることとなるこの機構は、その後のRX-7(FD型),RX-8,ロードスター(NB,NC,ND型)とマツダのFRプラットフォームには必ず採用される技術となっている。

NA/NB型のPPF

トランスミッション後端とリヤデフをアルミニウム製のフレームで直結することで、アクセルのオンオフ時にデフの捩れるような動き(後輪の始動トルクに対する反発力により、デフの先端にタイヤの回転方向と逆の力が加わり持ち上がる ≒ 持ち上がりが収まるまで、上手にトルクを掛けられない)による伝達ロスを抑え、ダイレクトなスロットルレスポンスを実現している。

NC型のPPF

 カタログスペックで表すことはできない部分であるが、実際の操作における効果は大きく、アクセルに対するダイレクト感、俗に言う「エンジンのツキがいい」ことに大きく寄与している機構である。
 ロードスターのキーワードである、「人馬一体」感を深める重要な機構となっている。


 トランスミッションは5速MTと4速ATが用意されている。5速MTはショートストロークで短いシフトと相まって、心地よいシフトワークが楽しめた。
 初期のNA6C型のMTには、標準でビスカスカップリング式LSDが装着されている。MC後のNA8C以降にはトルセン式LSDが採用されている。

バッテリーは運転席側トランクに配置されることとなった。これは重量配分の関係から、助手席後方を予定していたが製造時のコストを鑑みての配置となっている。しかし、重量配分は乗車時に「前50:後50」になるようになっている。


Vスペシャル専用タン色

  内装のデザインも、日本文化「茶室」をモチーフとしており、インパネ廻りは水平基調でシンプルに纏められている。標準ではブラック一色となっているが、後に専用色の特別仕様車も発売されている。
 シートはセミバケット型で、一体感を出すためにあえて幅を狭くしたものが搭載されており、ヘッドレスト部にはスピーカーが組み込まれている。

ファブリックシートの柄は畳をイメージしている。



 1950年~1960年代にモーガン、MGなどの英国メーカーから生み出されたブリティッシュ・ライトウェイトスポーツカー(いろいろな定義はあるが、主に高価ではないオープン2シーター)は、北米市場を中心として世界中に花開いたが、その後の自動車技術の成熟により、スポーツカーの中心は高性能化、拡大化、高額化していく。
 そのようなブリティッシュ・ライトウェイトスポーツカーの開発・販売が途絶えそうな1980年代に、ユーノスロードスターの開発は始まる。当時のマーケットや既にオープンモデル(FC3)が存在していることから、社内では反対する意見もあったが、開発者の熱意や北米を中心としたリサーチにより、最終のプロトモデルより約1年半の期間で生産・販売されることとなった。
 開発に当たっては「人馬一体」をキーワードとし、ハンドリングやレスポンスを中心に据えて、重量軽減やコスト削減(部品の共通化や遮音性能の妥協、ビニール製の幌、混合車種を製造するラインでの組み立て等)をおこなうことで、「高価ではないが、運転が楽しめる手頃なサイズのオープン2シーター」を目指して販売を開始する。
 国内では、ユーノスチャンネルの専売モデルを担うこととなる。

 販売開始後の人気は凄く、実際に予想した台数を上回る勢いで販売され続け、モデルチェンジするまでの約7年間で約43万台(国内 約11万台)を販売した。

 既に失われたと思われていたマーケットを開拓することで、車種として合計100万台以上を販売しているこのクルマは、ブリティッシュ・ライトウェイトスポーツカーに対するニーズが存在していることを、再び世に知らしめることとなった。
 ユーノス・ロードスターの存在が与えた影響は大きく、後のスポーツカー市場に対する影響だけならず、運転の楽しさやスポーツカーの魅力を新しいユーザーに届けることに大きく貢献しており、開発秘話などの逸話が数多く語られていることからも、この車種がいかにユーザーに愛され続けているかを伺うことができるだろう。

 「平成」の元号の始まりにデビューしたこのクルマは、ブリティッシュ・ライトウェイトスポーツカーを好むユーザにとって、北米市場での名前のように、まさに『贈り物(Miata)』となった。
 メーカー・ユーザーを問わず「だれもが、しあわせになる」クルマであり、世界中で愛され続けているクルマといえるのではないだろうか。


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