プロダクトもないのに展示会に出展したら、プロダクトできちゃった話 〜受発注バスターズ誕生秘話〜
1. 『受発注バスターズ』について
『受発注バスターズ』は、製造業・卸売業向けの受発注特化のAI-OCRです。
お客様の癖や独自ルールなど、ベテランの頭の中にある情報をAIに蓄積し、
「いつでも」「誰でも」を業務で実現可能にします。
脳からAIへ
製造業・卸売業における、受注登録時に発生する入力作業はお客様ごとに注文書のフォーマットがバラバラであるがゆえになかなか自動化が進みません。
またそれぞれにお客様ごとの癖や独自ルールが存在することで、ベテランの方たちに依存した業務になっており採用難も含めて大きな社会課題となっています。
代表自らが数ヶ月間、現場に入り込み実際に作業をされている方たちの声から出来上がったのが、『受発注バスターズ』です。
2. 第2プロダクトとしてリリース
創業時からの事業として「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」の開発・販売をしていました。
RPAとは、PC内の作業を代理で行ってくれるロボットです。
毎回、同じ操作をするような定型業務をロボットに覚えさせることで、様々な企業の業務自動化を支援していました。
その中でも特に効果が出やすい定型業務の中に、「受発注業務」がありました。
「受発注業務」とは、主に製造業や卸売業において発生する注文書や発注書のシステムへの手入力業務です。
下記の図でもわかる通り、3つの因子がすべて高い業務になり自動化できると絶大な効果を実現できる業務です。
しかし『受発注業務』は、今現在でもFAXや紙でのやりとりがほとんどです。
PC外に存在している紙やコピペできないPDFによって、なかなか自動化できない状況が起こっていました。
「FAXなんてまだ使ってるところがあるの?」
「どんどんFAXなんて減っていくでしょ」
というような声がありますが、実はクラウドFAXなどの普及により、
FAX市場は伸び続けています。
皆さんがイメージしている複合機から出てくる紙だけでなく、クラウド経由で送られてくる文書やメールに添付されたPDFなども自動化においては高い障壁となっているのが事実です。
そのような課題感から、生まれたのが『受発注バスターズ』です。
3. 現場で実際に作業してみて、発見した15個の課題
代表の川人は約1ヶ月間、RPAのユーザーであった製造業のお客様先の工場や営業所へ実際に赴き、日々の業務を間近で観察する機会を得ました。
この経験を通じて、様々な「課題」、つまり改善が必要な悩みをあらゆる角度から見つけてきました。
受発注業務に限らず、全部で15個の課題を特定しました。
そしてそのうちの1つが、『受発注バスターズ』というサービスの開発につながったのです。
現場での観察は、単に業務の流れを理解するだけでなく、作業員の方々の一つ一つの動作を細かく分析することでした。例えば、
作業員の目線はどこに向いているのか
マウスをどのようにクリックしているのか
キーボード入力のタイミングはどうなっているのか
使用しているディスプレイの数や配置はどうなっているのか
このような細部にまで注目することで、業務の実態がより鮮明に見えてきました。
単なる表面的な理解ではなく、高い解像度で現場を捉えることができたのです。
これらの観察を通じて、どのような機能や考え方が必要なのかが明確になりました。
その結果として生まれたのが、受発注における入力作業をゼロにするサービス『受発注バスターズ』です。
しかし、これはあくまでも15個の課題のうちの1つにすぎません。
現場には他にも多くの「課題」が存在しています。
在庫管理の不十分さ
積荷の配置や配送の非効率性
急な注文変更への対応の難しさ
作業員のスキル伝承の課題
既存営業の感覚に頼った活動
これらの課題も、『受発注バスターズ』と同じように、現場の細かな観察から生まれた洞察です。
現場に寄り添い、実際の業務を詳細に観察することの重要性を、身をもって体験しました。
4. プロダクトがないのに、展示会出展
プロダクトが存在しない中で展示会に出展するという、一見すると無謀とも思える挑戦をしました。
※「受発注バスターズ」は、まだまだ構想段階でした。
多くの人は「プロダクトもないのに展示会に出るなんて、めちゃくちゃだ」と思うかもしれません。
しかし、この決断は私たちにとって非常に重要な意味を持っていました。
なぜなら、これによって市場のニーズを直接確認できる絶好のチャンスとなったからです。
展示会への参加には、もう一つ重要な目的がありました。
それは、当時の営業マネージャーに「受発注バスターズ」の可能性を実感してもらうことでした。
代表の川人だけが感じていた可能性を、社内のキーパーソンにも共有したかったのです。
結果として、この展示会参加が「受発注バスターズ」にとっての大きな転機となりました。
社内の認識変化: 営業マネージャーを含む社内メンバーが、「受発注バスターズ」に対する高いニーズを直接体感しました。
市場ニーズの確認: 展示会で出会った多くの方々から、「そんなものがあるなら早く欲しい」という声を直接聞くことができました。これは、私たちのアイデアが市場のニーズに合致していることの明確な証拠となりました。
開発モチベーションの向上: 来場者の反応を目の当たりにし、チーム全体で「これは本当に創らなければならない」という強い使命感を持つことができました。
私たちは「受発注バスターズ」の開発にさらにスピードアップさせることとなりました。
2022年秋に展示会の参加し、2023年1月には「受発注バスターズ」が正式にリリースされました。
構想から約半年という短期間でのリリースは、展示会での経験がなければ実現できなかったかもしれません。
この経験から、私たちは「アイデアの段階でも、それを直接問うことの重要性」を学びました。
時に大胆な行動が、プロジェクトを大きく前進させる原動力となることを、身をもって体験したのです。
5. これからの事業展開
「受発注バスターズ」の成功を足がかりに、私たちは今後さらなる事業展開を計画しています。
その核となるのが、受発注バスターズを通じて蓄積される膨大な注文データです。
受発注バスターズで得られる注文データは、市場トレンド、需要予測、取引パターンなど、ビジネスにとって貴重な情報が詰まっています。
私たちは、このデータを活用した新たなサービスを次々と生み出していく予定です。
直近の注力分野として、セールステック領域の新サービスの開発を進めています。
受発注データと営業活動データを連携させ、より効果的な営業戦略の立案や顧客管理を可能にします。
私たちの最終目標は、
自社のサービスを通じて製造業・卸売業を中心とした業界の産業構造を変えていくことです。
つまり、「働き方」そのものを変えていきます。
私たちは常に最新のテクノロジーと市場ニーズを注視し、革新的なソリューションの開発に取り組んでいきます。
「受発注バスターズ」で培った経験と信頼を基盤に、製造業・卸売業の未来を切り開いていきます。
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