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長期運営ゲームを後世に託した話
約10年ほど、とあるスマホゲームを開発運営の指揮を取り、ゲームデザインを担ってきましたがこの度、今年の2月から後任に引き継ぎました。
厳密にはプロフィールにも書いている通り、去年2023年の2月からすでに社員の立場を離れ一線を退いていたのですが、ゲームデザインのサポートなど判断のところで業務を引き継ぎつつ、そこから約1年越し、この1月末に正式に意思決定を後任に譲り手を離れました。
まだ、それほど実感はないですが、ふと立ち止まり、いちプレイヤーとして体験する側に回りだすことでまた見えてくることもあるのでしょう。
希少な経験と記録
私はとにかく忘れっぽいので‥この区切りのタイミングで振り返りを書き記しておこうかと書き始めました。
長い歳月をかけて同一のプロダクトに関わり続けたという稀有な経験と個人的なキャリアの一区切りの記録が何か誰かのお役に立てればと。
スマホタイトルって、リリースがピークで少しずつ下降していくものだと思っていたんです。
実際そう思いますよね、1つのゲーム10年以上続けているって方はほとんどいないと思うのですが、気に入って好きで遊んでくださっているユーザーさんがすごく長く遊んでくれていたり、実情は離脱があって新しいお客さんがきてくださって、また復帰してくださることもありますが、基本的には遊び終わって卒業していくものだと思うんです。
なので、基本的にはユーザーが増えていくことのほうが難しいのですが
本当にありがたいことにタイトル自体は成長を続けて現在も多くの方に遊んでいただいています。
本当はもっと早くに後世に託していくべきだったのですが、走り続けながらのチームとプロダクトの成長を両輪で担っていくのは難易度が高く。
そろそろというタイミングと自身のキャリア継続10年超えという大台も経過したことで組織自体の成長や自らの新しいチャレンジのために次に向かおうと離れることを決めた。という経緯です。
長期存続に貢献出来たと感じる要因
ソーシャルゲームにはしないと決めた
いわゆる「ソシャゲ」のソーシャルを社会性=人との関わりと定義されるならば、ゲームを通じて競争し合ったり、相互作用やコミュニケーションを絡めたゲーム性を指すとして
ユーザーからの声も会社からもそういったゲーム性を求められたこともあったのですが曲げずにソロゲームを貫き通しました。
そもそも、10年以上続くゲームであるが故に作りが古い、後乗せで、もともとなかったものを追加開発していくリスクという意味でも我々の作っているゲームとはそぐわないと考え
軸を明確したことで他ゲームとの差別化が出来たのではないかと結果的には感じています。
ガチャという功罪との戦い
スマホゲームでほぼ前提となっているガチャを絡めたゲームシステムです。
そのマネタイズ装置の強さに対し
・いかに我々がその対価として楽しさを提供出来るか
・いかにガチャ必然のゲームデザインになってしまわないか
は、強く意識した点でした。
常にゲームバランスを保ちつつ、ユーザーにガチャを強いるゲームデザインにならないようにすることは、ガチャという射幸性の強さゆえの圧力がどこかでユーザーの疲弊や虚無感に繋がったとき、ゲームを去ってしまうだろうなと考えていました。
継続的に長く遊んでもらいながら、納得して対価を支払ってもらえること
どれだけ実現出来たかどうかはわかりませんが「お金を払ってあげたい」「お布施したい」と思ってもらえるようなサービスを提供し対価をいただこう、その主義を貫き通すことで、結果として長く継続してもらうことが実現出来ていれば本望だと考えていました。
持続可能性を信じ続け実現する胆力
なぜこんな古くシンプルなゲームが未だにプレイされ続けているのか。
一つ言えることは真摯にゲームに向き合ってきたこと。
どこにでもありそうな話ですが、キレイゴトではなく数字を観測はすれど目標を明確に掲げて追いかけたことはありませんでした。
今月の売上はどうとか今期はどうとか、ゲームとは関係のない会社の都合で勝手に決めたモノサシの期間に成果を定めるのは最優先ではないと考えていたからです。(会社としてモノサシが重要であることは前提で)
数年後でもしっかり遊べる、面白さの期待値を裏切らないオモテナシの心を持ってありとあらゆる手段で楽しさを提供し続けること。
長期を見据えて風化しない面白さをゲーム設計を積み上げていくことを愚直に続けたこと。
それが、超長期愛されるゲームになることを優先し目先の数字に踊らされなかったことは正しかったと結果が証明してくれた気はしています。
後知恵バイアス…と言われれば、そうかもしれません。
ただ、少なくとも我々のゲームが持つ強みや弱みを考え抜いて行った戦略は成功に近づくことが出来たと信じてます。
神は細部に宿る
使い古された言葉ですが
とくに運用型ゲームにおいて、細部へのこだわりは重要。
チリツモの力は偉大です。積み上げていくゲームとして細部まで行き届いたサービス精神はどんどん力になっていきます。
細かいネタやこだわりに気づいてくださるユーザーさんは必ずいて
そういった声を拾うことが出来ると嬉しいですし、そのユーザーさんは自分に向けられた楽しさだと感じてくださることできっとゲームを気に入っていただけると思うんです。
そういった部分は開発者としてもどうやって楽しませようと考えるのがすごくやり甲斐もありますし、直接ゲームのシステムとも関係なくとも、ときにアイデアが枯渇して苦しいときでも、サービス精神お節介は妥協せずこだわり続けたのは自信をもって誇れるところかもしれません。
長期運営ゲームの悩み
コンシューマのAAAタイトルなんかは数年かけて同じタイトルを開発することも珍しくないですが10年以上というのはそこと比較してもなかなかの長期間ですよね。
ゲームの成長と組織の成長の両立の難しさ
同じタイトルに関わり続けることは個人のキャリアや成長の観点、組織のあり方としても良い状態とはいえません。
ですが、コアメンバーとなるタイトルを形作る方々の代わりを育てていくことと、走り続けないといけない運用タイトルとの間で、多くの運営ゲームでも同様の悩みを抱えていることだと思います。
抗うことの出来ないインフレ
スマホゲームのタイトルとして長く運用されているということはインフレとの戦いでもあります。※一部パズルゲームなどは除く
スマホゲームは終わりを作ることが出来ないためプレイヤーが成長するためには必ず強さのインフレが避けられません。
かといってインフレしないゲームは飽きがやってきます。
そのバランス感は、ゲームにとって心臓ともいえる部分であり、適切な落とし所を慎重に慎重に、時に大胆にやってきたことが長期の耐久性を維持できた結果に繋がったと感じていますが
消耗戦(インフレの先にはゲームが壊れる未来がくる)であることは確かで非常に骨の折れる難易度の高い作業です。
前述している、ガチャに対する姿勢は過度なインフレを招かずに済んだ一つの要因として短期的な売上よりも継続を優先させたことがよい選択だったかなとは感じています。
約10年を振り返って
タイトルには本当に感謝.。多くのことを学び成長出来た
ユーザーの声の近さがモチベーションを支えてくれる
働き過ぎたのは少し後悔(強制じゃなく自発的に)
運営タイトルはマラソン、400m走のように走り続けられない
運営型ゲームはゼネラリスト人材勝負。育てるのは超難関
運営型ゲームはイシューの精度の高さと積み重ねが物を言う
ユーザーの声を聞き、ドリルの穴理論を適用せよ
神は細部に宿る。オモテナシの精神が明暗を分ける
成長は環境と習慣と好奇心が作るもの
定点KPI観測と定性データ観測の脳内ビッグデータ解析が重要
常識という偏見のコレクションを捨てよう
振り返りの箇条書きはまとまりのない感じになりましたが、、頭に浮かんだことをリストアップしてみました!
これからの新しいチャレンジ
ということで
これから新しいチャレンジをしていきたいと考えていますが
約10年、タイトルのことを四六時中考えていたこともあり
しばらくはいろんなものをインプットやアウトプットをする時間を取って今後のことを考えたいと思っています。
もし、記事読んでいただいて
ご興味もっていただいたり、何かお仕事の話などありましたら
気兼ねなくお声がけくだされば幸いです。
2024年2月22日
2の多い日