幼稚園入試までの約半年間
補聴開始したその日、音の反応の記録と声かけの台本を確認してもらいました。
台本には一文ごとに赤が入り、現時点で自分が思いつく内容程度では、とても足りないのだと、まざまざと思い知らされました。
そこからは毎週異なるテーマの台本を提出し、赤を入れてもらうのを繰り返し、少しずつですが赤入れの箇所が減り、声かけに含める言葉を増やすことができるようになっていきました。
息子の言葉は、補聴器してしばらくはすでにわかっている言葉しか言えませんでしたが、3週間ずつ補聴器のセッティングを変え、45dbから35〜40dbになり、そこから息子の反応は劇的に変わり、模倣が増えてきました。
■幼稚園の入園試験(面接)に向けて
少しずつですが、息子に言葉が入っていっているように見えていました。しかし、この時には幼稚園の入園試験まで、もうあと4ヶ月半しかありませんでした。まだ息子は自分の名前も年齢も言えませんでした。二語文も当然まだです。
直近の目標は、幼稚園に合格すること。
そのためには園の先生に言われていた「自分のことを聞かれたら話せるように」しなくてはなりません。名前、年齢、好きな遊び、好きな食べ物、あたりはクリアしてほしいと言われました。
この園に受からなければ、息子は幼稚園浪人が確定です。幼稚園激戦区で2年保育の枠がほぼないエリア、それにすでにいくつもの園に受け入れできないと言われています。下手すれば小学校に入るまでどこにも入れないかもしれません。
まずは一般的な2歳児が3歳になるまでに覚える単語を全て入れるように言われました。単語リストをもとに、声をかけます。まずは名詞が入らないと、それに続く言葉も入らないと言われ、名詞に力を入れることにしました。こちらが言えば模倣することはあっても、自発はなかなかありません。乗り物や動物など、何か特別好きな物がある子ではなかったので、何を見せても反応が薄く、すぐに他へ目移りしてしまいます。注目させたくてもしてくれないのです。興味を持たせることがそもそも難しく、初手で躓く毎日でした。
毎日、植物園、動物園、水族館、消防署、電車が見られる公園などへ行き、話しかけました。思いつく限りできる体験も全てさせました。水遊び、収穫体験、潮干狩り、ハイキング、などなど、とにかく出かけて実際に触らせました。そして、少しずつ言葉が増え、初めて補聴してから3ヶ月半で二語文が出るようになりました。
二語文が出てからは、自発する言葉が急速に増え出しました。またそれまで3〜4文字の短い単語しか言えなかったのが、10〜12文字ほどの単語まで拾って模倣し、数回模倣した後にすぐに自発できるようになったり、目覚ましく伸び始めました。
入試までには、生活面も鍛えなくてはなりませんでした。トイトレは完了させなくてはなりませんでしたし、着替え、お箸の練習も進めました。言語以外は他の子と同等に出来ていなくてはなりません。言葉での指示が思うように通らないので、やきもきする日々でした。
仕事を完全にやめて、家事も手を抜き、育児に全力を注いで過ごしましたが、幼稚園の入園試験までに、どうしても名前をフルネームで言うことができるようにはなりませんでした。
お名前は?
→(「下の名前)です」と答え、苗字が言えない
何歳ですか?いくつですか?
→3歳とわかっているが、相手によっては指で3を作って見せ、何も言わなくなる
好きな遊び
→「お砂場です」
好きな食べ物
→「クッキーです」
以上の状態で入試に挑むことになりました。
入園面接の日は土砂降りでした。
朝から息子が出たがらず、なんとか盛り上げて到着し、待合室へ。おもちゃで機嫌よくなったものの、自分達の番になった時に移動したがらず大泣きし、なんとか面接するお部屋へ連れて行くも、着席することなく一目散に待合室へ向かって大脱走。父母息子の3人で受ける親子面接のはずが、私だけ受ける形でスタート。現状や進捗、療育の頻度などを聞かれました。待合室で先生方に説得され、後半には父と2人で戻ってきてくれて、なんとか息子も受け答えをし、時間ギリギリで終了しました。
■幼稚園合格と次のステップ
このような面接でしたが、合格をいただけました。あのようなイレギュラー対応をさせてしまったのに、ご縁をいただけて本当に良かったです。正直、もう無理かも、でも合格できなかったら辛すぎる、と通知をいただくまでストレスで吐きそうでした。
合格通知を受け取った後、先生に呼び止められ、入園までには自分の要求を伝えられるようにしてくださいと言われました。
最初の目標(幼稚園合格)は達成できましたが、またすぐに次の目標ができました。入園までにやることはさらに山積みでした。
言葉は増えてきていましたが、滑舌が悪すぎて、ほぼ母音だけで発音している言葉も多く、何を指してるのかわからないことも増えてきていました。そのため、私に通じないと苛立ち、癇癪を起こすこともしばしば。
そして、だんだんと、言葉が増えてきたからといって順調というわけではないと思い知らされたのですが、それはまた別の記事でまとめようと思います。
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