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僕の脳だけはまだ顎がでていると思っている

おはようございます、チューバ奏者、指揮者、金管バンド専門家の河野一之です。

もくじ

確かあれは小学生ぐらいの時、徐々に僕の下顎は上顎よりも発達していき、受け口と呼ばれるアントニオ猪木さんのような下顎が出っ張り噛み合わせも全て逆になるような形になった。

その後チューバに出会い6年間、楽器の基礎的な部分を学ぶ時期に僕は下顎が出たまま演奏をしていた。そして高校三年生、音大に入学する直前に反対咬合を治す外科手術を受け、下顎の骨の一部を切除し、多くの人たちと同じように上顎が下顎よりも前に来るようにしてもらった。

気づき

つまり現在21年間楽器を吹いているけれども、その間の初めの6年間は反対咬合(下顎が出た状態)のまま、そしてその後の15年間は手術後の顎で演奏をし続けている。

そんな中先日練習中に新しいことに気づいた。

疲れてきたりした時に身体というのは昔の癖や演奏には良くない楽な姿勢になろうとする。その際に顔を下顎を中心に前に傾けて(上を向くように)演奏をしようとしていたのだ。

するとどうなるか

1、顔を傾けてマウスピースに唇を触れさせているので、その傾きによりマウスピース内で唇が押しつぶされ振動しなくなったり、振動をしても美しい音色が出ない。

2、マウスピースのシャンク内にできるだけまっすぐ息が流れたほうが楽器への息の通りは良く、よりマウスピース内で唇が作った振動が楽器へ共鳴させやすいのだけれども、顔を傾けて吹いてしまうのでその傾いたままの口から出る息の方向が上めになり高音域が鳴らなくなるのである。

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研究

チューバを始めてから低音域で困ったことが全くなく、より大きい音をとかより美しい音をというのは永遠に練習し続けるもので、それ以外の

低い音域がそもそもでない
リップスラーなどで下がれない

という低めの音域によくある困りごとになったことがない。これは恐らく自分自身の頭の中に高音域よりも低音域の方がイメージしやすいというのとともに、顎が出ていたため量が多く、速度の遅い空気を出しやすかったことが理由ではないかと思う。

以前英国の師であるNigel Seamanが見せてくれたDenis Wick著の本があった、確かマウスピースの中で息がどのように動いているかに関するページだったと思う。(その本の名前を失念したので、現在師に伺い中)

今だに覚えているのだけれども、その本曰く

・高い音は息が下(め)
・低い音は息が上(め)

に演奏されるという風に書いてあった。

今ぜひ実験してみてほしいのだけれども、息を上めに(前髪を揺らすように)吹き出すのと、下に向かって吹き出すのでは加えられる圧力、つまり速さが異なっているはずだ。

上に出すのでは息の量も増えてしまうし、そんなに圧力をかけることができない=低い音を鳴らせやすい息となる。

逆に下に出すのでは口の中を狭くすることもやり易く高い圧力=早い速度で息を出すことができる。(上に息を出すのに比べて)。そのためより細かく早く唇を振動させることができる=高いを音を鳴らせやすい息となる。

また顎の骨を切ったと知ってはいるけれども脳は今だに顎が出ていた状態の奏法を覚えている。なので今現在の顎が出ていない状態で顎が出ていた状態の奏法をするには、顔を前に傾け(上を見るような)下顎を突き出した状態のような奏法を取るのだ。なので疲れてくるとそのような奏法を行い、結果的に思い通りの演奏がしにくくなる。

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顔を引き、下げる

この事から僕の脳の誤差や勘違いを正す作業が必要だ。

現時点ではマウスピースのシャンクよりも大分上めに顔のセッティングがある、さらに顎も突き出して演奏する癖も疲労時は出てくる。

そのためこれまでしていたことの逆をするようにしている。

・顎を引きマウスピースのリムに対して平行に唇が接するようにする。
息がまっすぐマウスピースから楽器に通るようなセッティングにする。
・マウスピースだけで演奏を行っている時に今の顎に合った演奏をしているのでその感覚を楽器に装着した時にも同様にするようにする。

この3点である。これにより低音域、高音域関係なく身体の自由度が高まりより楽に全ての演奏を行えるはずだと踏んでいる。

実際にこれらが意識し切れた練習では2時間の練習終わりにも永遠にどの音域でも疲労による質の低下はみられなかったし、身体的な疲労もかなり軽減された。

これは”その癖”が出た時には狭い入り口に無理やり息を流し込み演奏していたのと同じことが起きていた。なので疲れて当たり前なのである。

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まとめ

今現在も実験中であればこの癖の上に新しい癖を上書きできればさらなる飛躍が期待できる。

癖というのは一度付くと消し去ることができないがその上から上書きをしコントロールすることはできる。

その上書きのために何度もなんども繰り返し練習をし運動神経を経由して脳に上書きを行う。

しかし、この癖はチューバを始めた頃のただ演奏が楽しいという自分が作り出したものなので愛着がないといえば嘘になるが今の僕には残念ながら必要ないものなのでひっそりと上書きを行いたい。

話を戻すが、自分の演奏を上達させるためのヒントは2つあり

1、一流のいい演奏をとにかく聞いたり、見る。見るのが一番良い
2、自分もできるはずだと考え、挑戦する。その際に余計なことをしている部分を変えたり排除する。(本当はすでにできるのに設定で練習をする。)

この2つだ。僕は音大に入った頃からずーっとなんでできないんだろう、できるはずなのに、なぜだ!と考えている。今もそう、もっと良い方法、もっと楽な方法、もっと簡単なはずなのにと練習している。

このすでに本当はできるのにという思考の元自分を観察すれば憧れの奏者と自分の違いに気づき余計なものや変化が必要なものが見えてくるはずだ。

幸運を祈る、そして僕は今日も練習をする。

Thank you

Kazz


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