「スターにはなれませんでしたが」サトミツさん著 / 本感想

佐藤満春さん(以下サトミツさん)が書かれた「スターにはなれませんでしたが」を読んだ。

サトミツさんのファンというわけではないが、働き方を模索している最近、オードリーさん経由でサトミツさんを知り、お笑い芸人や構成作家、その他トイレやサッカー関係など色々な仕事をしていることに興味を持ち「働き方について新しい気づきが得れれば」という想いで本書を手に取った。


面白かった。
雷が落ちるほどの衝撃はなかったが淡々と面白かった。

まず、本書とは関係ないがサトミツさんの働き方がすでに面白い。
お笑い芸人スタートのため、それが派生して構成作家の仕事をするというのは、芸能関係でない私にもなんとなく理解できる。

それが、ほかにもトイレやサッカー関係の仕事て。
いくら好きが高じて仕事になったとしても「トイレ」と「サッカー」という全くの無関係なものを仕事にしているのは「いやどんな働き方だよ!笑」と言いたくなる(それを真面目な見た目のサトミツさんがしているのが余計に面白い)。

本書の感想だが、サトミツさんの生き方を通して「やはり人生は運要素が強い」という気づきを得られた一方で、それでも自分の人生に活かせるような「再現性のある行動」もいくつか発見できた。

こういう本の感想系はどこまでネタバレをしていいかわからないが、「自分に活かせそう」と感じた気づきは大きく分けて2つ。


1つ目。
「曖昧な感情」を大事にしていい、ということ。

本書のいたるところで「明確でない・客観的でない」けどそれを大事に行動している場面がある。

例えば、若林さんとサトミツさんの対談パート。
若林さんはサトミツさんのこれまでの歩みについて、

サトミツがやっていることはどうしてもやりたいことっていう訳じゃなくても、好きなことではあったっていう。それをやることによって仕事がついてきた感じだよね。

『スターにはなれませんでしたが』佐藤満春

と発言している。

他人と比べて明らかに情熱があるもの・好きなものがなければいけない。それを仕事にするべき、とどこかで感じていた部分もあったが、明確な好き・情熱がなくてもいいし、その大小も関係ない。

「他にやりたいことがなかったから」「どうしてもやりたいわけじゃないけどまあ他と比べたら好きだから」でもいいから、自分の心の声を聞くことが大事なのだと感じた。

ほかにも、サトミツさんは作家の仕事をやり始めた時のことを、

作家の仕事は、僕にとって慣れないバラエティのひな壇に座っているよりも、ずっと「しっくりくる居場所」でした。

『スターにはなれませんでしたが』佐藤満春

と振り返っている。
作家の仕事自体、若林さんからの助言や自分なりに向き不向きを考えた上で始めた部分もあるのだが、それでも違和感や、なんとなくしっくりくる感覚を重視している発言だ。

冷静に考えると「なんか腑に落ちる、なんとなくしっくりくる」という感覚は、自分の適性や信念とどこかしらが合っているからこそ出てくる感情だろう。

そう考えると、「曖昧な感情」というのは自分の内面を知り居場所を見つける上で、思った以上に大切にすべき指針なのではないかと思った。

「曖昧なものとちゃんと向き合う」というなにか哲学的な気づきが得られた。


2つ目。
「持ってる武器を磨くしかない」。

サトミツさんは、お笑い芸人は好きではあったが、自分がバラエティの50人100人いるひな壇に座って自分を出していくことはできず、苦手だったと語っている。

その後、若林さんの助言や、「アメトーーク!」での立ち回りが評価されたことから、自分が「適尺で正しい情報を伝える」ことが得意だと知り、それが活かせるナレーションの仕事や専門家的な立ち位置での番組出演といった仕事を行なっている。

どんな仕事本にも書いているようなことではあるが、結局は自分の向き不向きと向き合い居場所を探していくことが重要なのだと感じた。

それと同時に重要な視点にも気づいた。
サラリーマンをしている以上、仕事は他人から振られて初めて仕事になるので、向いてる向いてないは他人のジャッジで決められるということ。

なので、自分がやってきた仕事を振り返った時には「こういうことが向いていたんだ」とわかるが、実際に仕事をしている今現在は(特に若手の頃なんかは)「これが自分に合っていそう」と、ある程度のあたりをつけて突き進むしかないということ。

だから、「他人からの言葉」や「これまでの仕事を振り返れるほどの仕事量」がないうちは、「武器に『なり得そう』」という曖昧さと向き合う覚悟も必要だなと感じた。


サトミツさんの本を読んだのはこれが初めてであるが、彼の本は、どこか庶民的でなんとなく楽しく生きられていない人に寄り添うような親しみやすさを感じられた。

仕事が終わったら必ず反省してしまう、するな言われても無理な話で必ず反省してしまうというのは、自分と似ていて親近感が湧いた。

サトミツさんのようないわゆるスターではなく、スポットライトは当たりづらいが、それでも楽しく、もがいて生きている人の話はどこかスッと読めてしまう。曖昧だがそう思っているということは自分もそういう人なのだろうと思う。


自分も、生きづらさを感じる人やどこか馴染めない「主役ではない誰か」を支える人間になりたいなと思った本書だった。

(これを書いてる今日(2023/11/24)サトミツさんがやってるラジオの公開収録?があったらしい。行けばよかったな、かなり後悔してる、あー失敗した、寝てた。)


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