古典物理学

物理学の目指すことはいったい何であろうか。まずはこれから物理を学んでいくことの意義を話しておきたい。

我々の生きている時間軸には「過去」「現在」「未来」の3種類の時間しかない。そしてこの中で,我々が最も知りたい興味の対象となるのは「未来」であろう。未来予測ができれば,どんなに幸せだろうか。つまるところ,我々が物理学を用いて行いたいことは「未来予測」なのである。この講座では,その方法論についてきわめて初歩的なところから議論を展開していくつもりである。

これから描く世界のモデルについて説明する。とりあえずは理想化した世界について記述する方法を探ってみないと,現実世界での予測は難しい。そこで,議論のしやすい簡単な世界のモデルを考えるのである。このモデルでは,自然現象は「3次元の一様・等方な空間の中で,一様な時の流れがあり,その中での極めて多数の点粒子の運動の結果として観測されるもの」として捉えられる。そしてこれらの粒子の運動は,粒子同士の相互作用によって変化すると考えられる。そこで我々は「現在」とその次の瞬間の「未来」をつなぐような関係性が見出せれば,このモデルの中で未来予測ができるということになる。

ではこの関係性はどのような形で定まっているのだろうか。ここで,古典力学においては,この関係は空間的ならびに時間的にも局所的に定められると考えることにする。またとりあえずのところ,

無限の彼方の過去の相互作用の影響は,現在の粒子には及ばないものとする。いろいろと前提を置いたが,このような世界の中での粒子の運動,ならびにマクロな系の運動を記述することを目標とするのが古典物理学である。

いろいろと難しそうなことを書いているが要は「一つ一つの粒子の運動を完全に追えば,全体としての運動が記述できるだろう」という発想でこれから議論していこうという話である。あまり深く考えずに次へ進もう。

もう少しだけ仮定を導入しておきたい。というのもこれではまだ物理で最初に扱う世界としては少し複雑だからである。

そこで以下の仮定を導入する。

空間の一様性

空間内の任意の移動に対し,空間自体に何の違いも生じないという普遍性のこと。つまり空間に変な歪みや非対称性がないということ。すなわち,一般の部屋では当然一様性は崩れている。

空間の等方性

空間における任意の回転に対して,空間自体に何の違いも生じないという普遍性のこと。すなわち,一般の部屋では当然等方性は崩れている。

時間の一様性

場所の移動に対し,時の流れ方に違いが生じないという普遍性。時間が経つのが早くなったり遅くなったりすることはないということ。

Euclid空間

我々の宇宙は3次元の一様・等方空間と考えられるが,ここで問題となるのはその空間がEuclid空間か非Euclid空間かどちらなのかということである。Euclid空間とは,ごく直感的にいうなら「まっすぐな何の変哲もない空間」のことである。どういうことか確認してみよう。

ここで,我々は3次元空間を外から眺めることはできないので,一度2次元空間で考えてみることにする。

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