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【己は既にして】 詩。

寝起きで
しかも己は既にして
傷ついてゐた
どうすればせめて
夢を美しくできるか
このまゝでは
さほど遠くない夜に
睡眠恐怖に陥るだらう

猫が一匹逃げた
人間を忌み嫌つてゐるのだ
己つらつらと思ふに
家庭内の和合に役立たないペットなど
路頭へ帰ればいゝ
そこが彼カのものゝ
人影見れば逃げる者の
本当の棲み家なのだ

何あつたか知らぬが
前肢かたつぽが
不自由な猫
無理無理で可愛がつたつて
愛情が伝はらなければ、
彼のものが
拒否するのであれば、
ペット失格なのだ

あの毛の繁きところが
癒しを誘ふと云ふが
触れば牙を剥く者に
家庭内のアイドルが務まるものか
(それは運命に似てゐる、同情≠愛玩)

寝起きで
しかも己は既にして
傷ついてゐた
泣きたい
泣けぬ
泣きたい気持ちが

空轉してゐる。

〈輾と轉の狭間に生きて洟すゝる くにを〉

©都築郷士

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