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どんな気持ちで農薬を使っていますか?

農家が農薬を使うとき、どんな気持ちか。
ちょっと考えてみた。

国民よ、許せ!安定供給するためには危険を冒さねばならないのだ!

シュポシュポ ビシャー(背負い式噴霧器に空気を送ってから散布する音)

汗を拭い、散布が終わった畑を後にして、家の庭の家庭菜園の無農薬で育てたトマトをひと齧り。

という絵が浮かんでいる人は少なくないだろう。

「農家の人たちは、どんな気持ちで農薬を使っているのだろう。」

ちひろさんのnoteを引用させていただき、実際に農薬も使っている農家としての気持ちを言語化してみようと思う。

農薬を使う農家はどこか後ろめたい気持ちがあるのではないか?危険だと思うから自分の庭や食べる物には農薬は使わないのではないか?

農家がそのように誤解されていることもある。

では、Base Side Farmの率直な気持ちとしてはどうか?

苗や栽培品目の生存率を上げ、秀品率を上げ、人間の生存率も上げたい。

という気持ちである。

家庭菜園なら、例えばちひろさんのnoteの冒頭にもあるように虫に食べられてできませんでした。次に期待。で良いけれど、それが事業となると、できませんでした、では持続可能な農業でも、事業でもなくなってしまう。

だからと農薬や化学肥料をやればやるだけ虫の害が減って安定供給できるのかというと、そうでもない。

何事も適量というものがある。

苗の初期の段階や、栽培期間中の虫や、病気のリスクを軽減し、100粒蒔いたら70株くらいは収穫まで生き残って欲しい。その生き残った大切な命をより多くの人に届けて、誰かの命になって欲しいと思う事もある。

ちなみにBase Side Farmでは農薬を使う作物と使わない作物がある。自家用だから農薬を使わないわけではなく、そこまで手間暇とお金をかけなくても自分的に収量と品質に満足しているから使わない。
農薬を使った野菜も自家消費するし、B品以下のお店に出せない物なんかも普通に食べている。

ちょっと話題が(さっそく)それるが、環境問題で問題視されている自動車の排気ガス。物流を担う運転手に向かって「トラックをどんな気持ちで運転していますか?」と問うのと似た質問と思った。

「農家の方たちは、夜8時になると家族総出で懐中電灯を持って虫退治に出るらしい。頭が上がらない。
わたしは夜7時半に寝てしまうので、それができない」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

無農薬に拘る農家の一部の方は夜に虫退治をしていると思う。しかし、現状は無農薬農家でも、そこまでの対策をしない農家もいる。バンカープランツや、物理的囮、掘り出して捕殺等、地道な対策をする農家もいる。
我が家もやらない。

ヨトウムシがいる畑とわかっていたら、作物に適用のある農薬を適量に使用すれば、栄養価も、安全性も変わることなくちひろさんと同じように夜7時半に寝ることもできる。

ヨトウムシの被害がなさそうな畑には使わないこともあれば、失敗したくない品目は予防的に使う事もある。

農家だから苦労をしないといけない、わけではない。
時に人の手で編み出された技術に頼って、人らしい生活をしても良いと思う。

ここで、根強く残っている無農薬と慣行栽培の野菜の栄養価と安全性の違いについての情報共有をしたい。

まず、大前提として慣行栽培でも出荷時には残留農薬は殆どゼロである。
また、栄養価も有意差は無い。
つまり、無農薬と言われる野菜と安全性/栄養価に差はない。
この部分については、未だに諸説ありとされ、話していると結局「色々な考え方がありますね」とにっこりされて終わる話題だ。

もしも、差があるなら、学校給食や病院食に納められる野菜に無農薬や減農薬野菜が含まれている場合、栄養計算をしないといけないのではないか?
農薬や化学肥料も様々な種類がある、何をどれくらいの量使ったらどの程度の差が出るのか把握しないと栄養計算がおかしくなってしまわないだろうか?

つまり差があったとしても健康を大きく左右するほどの差はない。

と、Base Side Farmは理解してる。
もし大きく差が出るなら、noteに書いている場合ではない。すぐに消費者庁に通報したほうがよい。

「食べる人に安心な食べものを、という理念を持っていたとしても、目の前の虫をどうにかできるなら、わたしなら使ってしまうかもしれない。」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

使ってしまっても安全性は変わらない。しかし、安心はまた別問題ではあるなと思う。

日本人特有かわからないけど、浄不浄問題として、農薬という危険っぽいものが一度でもかかった物は危険であるという感覚かなと思う。

「農薬を使うことのなにがそんなにいけないのか。
消費者はわがままで、虫食い野菜や、虫のついた野菜にいちいちクレームをつけてくるのだから」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441


これは消費者の好みの問題だけではなく、収穫後の傷みも関係してくる。多少の虫食いが平気なのは収穫直後だけで、虫がついていたら食害が進み、糞も出る。つぶれた虫の水分で腐ったり、異臭を放ったりする。
そのような野菜が入った箱から無傷の物だけを取り出して店頭に並べる手間よ……

「農薬や化学肥料は、野菜に残るものだけではなく、農業水路を通って水を汚染する。やっぱり問題はあるのだ」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441


残留農薬の現状はもう少しオープンにされたほうが良いと思う。
確かに、輸出のイチゴから農薬が検出という話題もあり、ゼロではないこともある。しかし、そこに量の概念はあるだろうか?

農薬が水路や地下水を通って環境問題になる。というのは確かにある。適量とされている量でも、環境負荷はゼロにはできないだろう?では、どれだけの負荷なら良いのか?なるべく減らしながらも、収穫量を確保し、食糧自給率を上げるために許容される環境負荷とはどれくらいなのか?
農薬は環境問題だ。だから使ってはいけない。
と思いながらもどこかで折り合いを付けないといけないかなと思う。

「化学肥料に頼るようになると、野菜は本来の力を出せなくなり、虫に弱くなる。だから農薬にも頼らざるを得なくなるわけだが」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441


とある本の内容を解説されている一文だが、この本を鵜呑みにするのはちょっと危ないかなと感じた。
実際畑では化成肥料を使った野菜が元気に育っている。堆肥だけで育てている野菜も元気に育っている。
どちらも一定量虫に食われることもある。作物と、農園の方針で農薬を使う事もあれば、放置することもある。
頼らざるを得ないというのは……ちょっと違う気がする。
例えると、「自分で野菜を育てる土地や時間がない、だから野菜を買わざるを得ない」というだろうか?

「肥料と農薬を使わずに、美味しくて安全で、より栄養価の高い野菜を作れたらどうだろう?肥料と農薬には相当の経費がかかるが、それを節約できる。しかも、収量を落とさずに、耕起の手間も省ける」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

それができる土壌や品目もある。
全てがすべて同じようにできるわけではない。畑にも個性がある。芋がやたらうまく育つ畑、ほうれん草が得意な畑。
無農薬でも、不耕起でも野菜は育つし、収穫もできる。しかしどれほどの量がとれるか、本当に慣行栽培と変わらない収量なのだろうか?

「農薬会社と肥料会社には耳の痛い話だろう」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

不耕起栽培も無農薬栽培も、農薬や肥料の会社にとっては耳の痛い話ではない。
農薬会社と肥料会社は時々、悪の秘密結社みたいに見えてしまう事もあるだろう。しかし、その農薬会社と肥料会社は誇りを持って日々研究し、日本の農業を支える理念を持っている。そして私たち農家は多大にお世話になっている。
肥料の会社も堆肥を作ることもある。肥料にも色々な種類がある。

「不耕起、被覆植物(ヘアリーベッチなどの緑肥)、輪作。
この3つは、その夢のような話を叶えてくれる方法であるようなのだ。」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

不耕起は経験がないが、緑肥と輪作は慣行栽培でも普通に取り入れらている手法である。
慣行栽培=完全に化学肥料だけ。と思われがちだが、土壌の物理性を上げるには緑肥や堆肥はある程度必要で、併用している農家も多い。
これらの方法をとらないのが、溶液栽培や室内栽培である。無農薬栽培を売りにして売られていることもある。

「今のやり方では、農業は続かない。らしい。特に大切なのは、耕起のしすぎによって何度も土壌生物圏を撹乱することを避けることだ。」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

毎年堆肥を入れて耕運しているのだが、続かないという事かな?
農業が続かないとはどのような状態なのだろう?
本に書かれていることをコピペした文章だと思うが、ちょっとよくわからない……土壌生物圏攪乱しているけど、我が家の野菜は元気においしく育っておりますぞ。
本に書いてあること=事実とも限らないなぁと思う。

「F1種(交配種)と化学肥料と農薬のほうがシンプルだし、失敗も少なそうだ。でもやっぱり、それは不自然なのだ」

秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。https://note.com/symbiosis17/n/n26977ddc8441

そもそも自然栽培でも、慣行栽培でも、農業をやる時点で不自然なのである。
F1種の誤解も根深い。メンデルの法則という自然の摂理が受け入れられない、F1種の野菜を食べると不妊になるという不安に付け込むマーケティングには腹立たしさも覚える。

F1についてはこちらで解説しております。

なかなか根深い農業への誤解をできる限り解いてみました。
もちろん私の意見がすべてではなく、中には本当に、適当に農薬散布する人もいれば、農薬は危険だから家族が食べる分には農薬をかけないという人もいる。(適当にでも農薬取締法遵守していればよいのですが、量を間違えたり適用を誤ってはダメ絶対)
農家だから農薬をすべて理解しているわけではなく、先輩農家に訊いたり、JAや普及センターに問い合わせることもある。
農家自身が農薬を誤解していることもある。

そんな誤解をできる限り解説したnoteをまとめました。
https://note.com/basesidefarm/m/mfb3970815e08


Base Side Farmは援農ボランティアさんの手を借りて草取りや、収穫をしている。それなりに多くの人の手間暇と愛が込められた野菜ばかりである。

化学肥料と農薬を使ったF1のBase Side Farmの野菜を不自然だなぁと思いながら食べてもらってもいいけど……ちょっと悲しいな。



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