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罰走に効果はあるのか?

罰走が話題になっているので、ちょっと罰走についての私の考えを書きたいと思います。

まず、罰走なんて責任転嫁の恥ずかしいことをよくできるな、というのが私の考えです。

試合に関して、采配の責任は監督にあります。選手の体調や調子、モチベーションも含めて管理し、采配して勝利することが求められます。

もし、試合前や試合中にやる気の無い選手や気合の入っていない選手がいれば、自由に交代させることができます。また、アドバイスを送ったり、コミュニケーションを取ることもできるはずです。にもかかわらず、負けた後で、試合に負けたのは選手がたるんでいるからだと罰走をさせるのはお門違いで、私は選手を管理できていない無能監督ですと世間に発表している、ものすごく恥ずかしい行為であると思います。

選手にとって辛いことは、罰走ではなく、試合に出れないことだと思います。やる気がなく、勝利に不要な選手と判断したなら、試合に出さなければ良いだけです。逆にやる気がなくても、勝利に必要だから試合で使い続けるのも監督の自由です。全ての采配は監督が決めるのですから、その責任を取るのも監督しかいません。

そもそも、罰走は罰として適切なのでしょうか?
プロであれアマチュアであれ、試合に出して貰えないことのほうが辛いと思います。試合に出れなければ困るのは自分自身です。試合に出して貰えない可能性があれば、必死に取り組むはずです。

一方で罰走は、たしかに精神的、肉体的に辛いかもしれませんが、一時的であり、罰走があるから頑張ろうと思う選手は少ないと思いますし、その程度の思いで取り組んでいる人はあまり成長しないでしょう。

最も重要なことは、なぜ試合に真剣に取り組むことができなかったか、集中力が切れてしまったかという根本的な原因が解決されていないことです。

原因が解決できていなければ、罰を与えてもまた同じことを繰り返す可能性が高くなります。

例えば、プロがアマチュアと試合をして、打っても、抑えても当たり前として、対して評価されないのに、打てなかったり、打たれたりした時だけ必要以上に批判されるとしたら、リスクとリターンのバランスが悪く、モチベーションが上がらないかもしれません。同じポジションに絶対的なレギュラーがいて、自分がどれだけ成果を出しても公式戦に出ることができないなら、やる気がおきないかもしれません。

どちらも、だからしょうがないと言っている訳ではありません。納得させる必要があると言っているだけです。例えばプロであれば、必要無い選手ならクビにすればいいだけです。罰走より残酷かもしれませんが、慈善事業ではないので、必要なければ解雇すれば良いと思います。精神面さえ改善させれば、戦力になると思うのであれば、精神面を改善させるのも監督の努めです。別に直接話し合う必要もありません。周囲のスタッフでも外部のサービスでも何を使っても良いので改善させれば良いのです。

学生野球などで、教育の一貫として行っている場合には、クビはありませんが、休部や退部という手もあります。もちろんこれは最終手段で、基本的には、話し合いや条件の提示で納得させることがベストでしょう。同じポジションで絶対的なレギュラーがいても、怪我をする場合もあるからと控えの重要性を説明し、説得する必要があるかもしれません。余裕がある時には、別のポジションでスタメン起用すると交渉する必要があるかもしれません。学生野球では野球だけの問題ではなく、バランスが難しい部分もありますが、だからといって罰走が最適とは到底思えません。

たまに、試合中にミスをしたり悪い結果が出た途端に、精神的な部分を指摘してくる指導者がいますが、そのプレーが出る前に指摘するのが指導者の役目です。精神的に通常で無いことを見極め、指摘する、あるいは交代するのは監督やコーチの役目です。外から見ただけでは分からないのであれば、それは采配能力が不足しているのでしょう。ホームランを打って浮かれている選手がいたら、守備でも気を抜かないように注意する。久しぶりのバントで緊張している選手がいたら声をかける。もしくは交代をする。上位打線にばかり気を取られ、下位打線に対して投手が集中力を切らし、ストライクを取りにいきすぎているなら、タイムをとって話し合う。これらをチームの仲間やコーチを含め全員で補いながらやるのは当たり前のことですが、チームとしてできていないなら、それは監督の責任です。本人だけでなく、ベンチに対してなぜ声を掛けてやらないのかと注意するのも監督の仕事でしょう。ただし、後から罰を与えるのは全く別です。むしろ、事前に指摘できなくて申し訳ないと反省の弁を述べるべき問題です。「力不足だった。次の投手の采配で頭がいっぱいだったが、今後はこのような事態にならないように対策していく」「試合展開に熱くなり、外野の選手の集中力まで目が行き届かなかった。ベンチも含め一丸となる重要性を再確認する。」など語るべき問題です。しかし、反省どころか選手に罰を与えて責任転嫁ですから、非常にまずいと思います。

ここまでは、結果がでた後の罰の話をしてきましたが、何かをやる前に罰を提示するのはどうでしょうか?

例えば、緊張感を与えるために、キャッチボールでミスをしたらグラウンド1周などです。

まず第1に、何を目的とするかが重要です。緊張する場面でもできるようになるという目的であれば、ほとんど効果は無いでしょう。なぜなら、緊張感は与えていても、どうすれば緊張を克服できるかを教えていないからです。ただし、緊張する場面でできるようになっているかを確認する、または緊張した場面でどのような変化があるか確認するという目的であれば、個人差はありますが一定の効果はあるでしょう。

第2に、そもそも緊張感が問題なのかということです。キャッチボールでミスをするのも、やる気や緊張の問題ではなく、実力が無いだけかもしれませんし、イップスかもしれません。それなのに緊張感を与えても何の効果もありません。

第3に発破をかけてやる気を出させるというものですが、罰が最適な発破の掛け方というのは、あまりにも貧相な考え方だと思います。そもそも、選手は試合に出たいと思っているはずです。練習であれ、試合であれ、監督にアピールしたいと考えるのが普通です。それなのに発破を掛けないとやる気が出ないというのは、選手が普段はよく見てくれていないと感じているということです。

選手はキャッチボールはミスしても試合に出れるから良いとか、真剣にやってアピールしてもどうせ試合に出して貰えないと考えているんです。もちろん口にはだしませんが。
そして、指導者もそれを心の底では分かっているから、急に罰を与え始めるのです。そして、一時的に練習の効果が出たとしても、すぐに元に戻ります。なぜなら、試合に出場できるか否かという大事な部分に影響がないからです。罰を与える練習というのは、口では大切な練習だから真剣にやれと言っておきながら実際の起用法では重視しないことがほとんどです。

みんなバッティングは真剣にやります。好きだからというのもありますが、試合での起用に直結するからです。打てば次の試合に出ることができるとか、ベンチ入りできると考えるから、緊張感を持って真剣に取り組みます。罰なんて必要ありません。

では、レギューラーの選手の足りない能力を伸ばすなど、最重要ではない能力を伸ばすにはどうすればよいのでしょうか。バッティングが飛び抜けて良いから、試合から外すことができないが、走塁を真面目にやらない選手や守備で手を抜く選手などを例にしましょう。

話し合って納得させることです。まずその選手の目標が何なのかという問題です。今よりも上のステージに行きたいと考えているなら、そのために必要である事を説明すれば良いと思いますし、今のチームで勝ちたいと考えているのであれば、勝利に必要であることを説明すれば良いと思います。もしも、現状で満足していて、向上心が無く、チームの勝利も関係無いという考えであれば、それは仕方がありません。選手の目標は監督にはコントロールできない問題です。選手の目標の助言は出来ても、決断に対して周囲の人間がコントロールすることは出来ません。それを監督が納得した上で選手起用法を考え、采配するしかありません。

結局の所、罰を与える指導者にはコミュニケーションが足りていないのです。コミュニケーションも指導者の能力のひとつです。罰を与えるということは、コミュニケーション能力が欠如していますと言っているので、恥ずかしいことです。私なら、どれだけコミュニケーション能力が不足していても、それを公にするなんて恥ずかしくてできませんから、後から罰を与えるなんてできません。例外は上に挙げた1つである、緊張した場面でどうなるかを確認するためくらいでしょう。

罰を与えるより、根本的な原因究明が先です。
罰を与えるより、真剣にやるとなぜ良いのかを教えた方が効率が良いです。

それができないなら、どれだけ素晴らしい選手であっても、これまで指導者として活躍してきたとしても、罰の扱い方は素人ということです。

罰の扱い方が素人だから指導者をやめろとは言いません。
ただし、罰の扱い方が素人なら、罰を用いなければ良いだけです。
なぜ使い方が下手なのに罰という道具に頼っているのかよく分かりません。優秀な選手であったなら、自分が上手くなった体験談として、どのような気持ちで試合や練習に望んでいたかなんかを語れば、十分に人を惹きつけることができるとおもうのですが。

それでは今日も素敵なBaseball Lifeをお送りください。

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