⚾フルスイングの裏に、努力の跡がある。
なんでそんなに打てるんだよ。と、思わず叫びたくなった。打席に入った瞬間の恐ろしさは、ただならぬものだった。その言葉通り、たった一振りで試合の流れを変えてしまう。
その正体は、桜美林大学の中野航太選手(明大中野)だ。四年次は指名打者として活躍し、同チームの春季リーグ戦初優勝に貢献。秋季リーグ戦ではベストナインにも選出された。
桜美林大学は2016年の明治神宮大会準優勝を境に、二部降格と一部昇格を繰り返した。中野選手は、そんな苦しい状況に追い込まれたチームを救い出した一人だ。
そもそも『指名打者』とは投手のかわりに打席に入るもの。打撃専門であるからには、その一振りに期待がかかる。そこで私は色々と疑問を抱いたのだ。
どうやって試合のリズムを掴むのだろう。
指名打者は他の選手と異なり、守備につく機会がない。その中で、一体どうやって試合の流れを掴むのだろう。体も冷えるだろうし、難しいのではないか。
それ以前に思うこともあった。大変失礼で申し訳ないが、指名打者起用というのは『守備につけない何らかの理由がある』と偏見さえ抱いていた。守るに至らない、打てるだけの人(打てるだけというが、それがどんなに大変なことかは重々承知している)。通常考えてあり得ないような思考を、私はしていたのである。それは中野選手の躍進で、ようやく覆された。
指名打者って凄いじゃないか。
中野選手のスイングを見るたびに、そう思わざるを得なかった。どんな球も力強くはじき返す。いとも簡単にスタンドへ運んでいるようにしか見えない。どれだけの準備と努力をしてきたのだろう。
そこで抱いた疑問が『どうやって試合のリズムを掴むのだろう』だった。試合のメンバーの中で一人だけ、みんなと違う空間に存在する。率直に中野選手にこの疑問を投げかけた。
やはり守備につかないことに違和感を覚えていたようだった。それでも自身で工夫を凝らし、適応していった。だからこそ好成績残し、ベストナインに選出されたのだろう。
聞けば聞くほど『指名打者』の奥深さを知った。もう二度と、守備につけない何らかの理由のある人だなんて思わない。チームに必要な存在であり、試合で大切な役割を果たしている。
最も記憶に残ったのは、2021年の秋季リーグ戦、筑波大学との試合だ。中野選手はこの日、一試合に二本の本塁打を放った。仲間と喜んでハイタッチをする、大きな背中は忘れられない。
桜美林大学を大きく前進させた。その立役者の一人が、中野選手であることは間違いない。暗闇の中に迷い込んだチームを、光ある場所へ導いた。
中野選手は来季より、ハナマウイに進む。首都リーグ最強の打者が、東京ドームで大暴れするのを私は心待ちにしている。
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指名打者って、どうせ守備が下手くそなんだろう。実は今までは、そんなふうに思っていました。なんて失礼な話でしょう。守備につけない何らかの理由があると、勝手に決めつけていたのです。
指名打者はそんな簡単なものではないと、私は再確認をしました。打つだけというけれど、その打つことがどれだけ難しいことなのか。そう見せないことに、技術の高さを感じました。
試合の流れを掴むために、他の誰より集中している。体を冷やさないために、人一倍気をつかっている。指名打者を見る目が、私の中で変わってきました。
各々の工夫があって、そのポジションが輝く。考え実行しなければ、何かを残すことはできない。自分は生きる中で、どんな工夫をしているのだろう。また自分に矢印を向けるきっかけを見つけました。
あの素晴らしい打撃をまた見ることができる。なんて嬉しいことでしょうか。次のステージでも、大暴れを楽しみにしています。
いただいたサポートは野球の遠征費、カメラの維持費などに活用をさせていただきます。何を残せるか、私に何ができるかまだまだ模索中ですが、よろしくお願いします。