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🐦⚾️2019年~革新・武蔵大学の快進撃~

飛躍と苦難~革新を遂げた組織~
2017年春。桜美林大との入替戦を制し、見事1部昇格を果たした武蔵大。以来、勢いを増したチームは2019年秋に9年ぶり2度目となる関東大会に出場。ここまでの経緯を辿れば、華々しい躍進といえるだろう。しかし、到達するまでに幾度となく厳しい戦いを強いられた。今回は革新を合言葉に、関東大会出場を果たすまでの過去4年間を顧みる。

泥沼の入替戦(2016年)

武蔵大の快進撃に欠かすことのできないエピソード。それは2016年春の帝京大との入替戦だ。3戦目までもつれ込んだこの試合は、あと一歩のところで昇格を阻止された。最後まで緊迫した試合内容。武蔵大は本田健一郎投手(日大鶴ヶ丘高校→武蔵大学→現:JFE東日本)、秋山翔投手(日大鶴ヶ丘高校→武蔵大学→現:三菱自動車岡崎)やヒンブル・ローレンス・ポール投手(東福岡高校)と三世代にわたったエースを投入。それでも打ち破ることができなかった。私が観戦した中で最も劇的な入替戦だった。

~2016年春季リーグ・入替戦の戦歴~

1戦目
2016年5月28日 平塚球場
帝京大学―武蔵大学

帝京大 000 100 000=1 H4 E1
武蔵大 000 000 03X=3 H7 E1

[帝] 小倉、菊地―黒田
[武] 本田―廣瀬

二 姫野2(武)

2戦目
2016年5月29日 平塚球場
武蔵大学―帝京大学

武蔵大 000 000 030=3 H8 E3
帝京大 000 007 00X=7 H3 E0

[武] ヒンブル、河野、島﨑、秋山―廣瀬
[帝] 三浦、廣畑、菊地―塚畝

二 河邊、金子卓(武)

3戦目
2016年6月4日 東京経済大学野球場
帝京大学―武蔵大学

帝京大 200 002 040=8
武蔵大 003 021 100=7

[帝] 三浦、菊地、小倉―塚畝、黒田
[武] 本田、秋山、ヒンブル―廣瀬、金子卓

本 河原、小山ソロ、山口2ラン(帝)
三 黒田(帝)
二 布施、河邊(武)

当時の試合の様子

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悲願の1部昇格(2017年)

来る2017年の春。昨秋の覇者、桜美林大をストレートで撃破。泥沼の入替戦から1年。最高の形で1部昇格を成し遂げた。
特に活躍をみせたのが姫野稜涼と君嶋祐治。当時の2年生野手だ。彼らの一振りが、勝負の明暗をわけた。

~2017年春季リーグ・入替戦の戦歴~

1戦目
2017年5月27日 相模原球場
桜美林大学―武蔵大学

桜美大 000 100 000=1 H8 E0
武蔵大 000 200 00X=2 H6 E0

[桜] 庄司海―大平達
[武] 本田―廣瀬

本 大平達ソロ(桜) 姫野2ラン(武)
二 細野(桜)

2戦目
2017年5月28日 相模原球場
武蔵大学―桜美林大学

武蔵大 000 102 000=3 H6 E1 
桜美大 001 000 000=1 H4 E2

[武] 島﨑、本田―廣瀬
[桜] 宮﨑、安高―大平達

本 君嶋2ラン(武)
三 工藤(桜)
二 三浦(武)

1部昇格の瞬間

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君嶋 祐治 選手(宇都宮商業) 

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本田 健一郎 投手(日大鶴ヶ丘→武蔵大学→現:JFE東日本)

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波瀾曲折の年 (2018年)

上昇気流に乗った春
2018年春。エースの秋山を引っ提げ、リーグ戦に臨んだ。結果は7勝5敗 勝ち点3。優勝こそ逃したが、見事に東海大に次ぐ2位の座に就く。1部の名に恥じない戦いぶりであった。またこの春、土屋亮二(都留→武蔵大学)、山北泰輝(雪谷→武蔵大学)と清水凌(松山)の3選手がベストナインに選出。チームは一気に盛り上がりをみせた。

革新の実現・塚崎 智彦
この結果を得た背景には、題名のとおり組織の革新があったと私は考える。特にこの春季リーグ戦で際立ったのが、当時の主将である塚崎智彦(足立学園)のきめ細やかな声掛けだった。仲間を鼓舞する姿勢、周囲に気を配る取組。少し前では見られなかった光景だ。それとともに、スタンドの選手たちの意識の変化も感じ取れた。主将の思考がチームに浸透し、共有なされた賜物であろう。現在の武蔵大の礎を築いたのは、間違いなく彼らの世代の努力だ。チームの意識改革を実現させたのは、塚崎(含めこの世代)だと言い切れる。

ベストナイン受賞風景

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塚崎 智彦 元主将(足立学園)

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山北 泰輝 選手(雪谷)

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土屋 亮二 選手(都留)

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待ち受ける地獄の入替戦
勢いに乗った春と裏腹に、秋は難局に直面した。1つも勝ち点を挙げることなく入替戦行きが決定。春の好成績から一気に奈落の底へ突き落される。これが首都リーグの恐ろしさだ。相手は前年まで1部に所属をしていた明星大。降格を避けたい武蔵大にとって、絶対に負けられない戦いだ。試合は3戦目までもつれ込んだが、最後は相手に1点も許さず残留を決めた。
2016年から3度の入替戦。追う立場と追われる立場、両方の側面を経験することになる。試合終了後、選手たちからは安堵の表情が見られた。

~2018年秋季リーグ戦・入替戦の戦績~

1戦目
2018年10月27日 相模原球場 

武蔵大学ー明星大学

武蔵大 010 100 200=4 H12 E0
明星大 000 100 100=2 H5 E0

[星] 宮内、野村、坂本ー齋藤駿
[武] 秋山ー塚崎

本 高山ソロ(星)
二 花岡、塚崎(武)

2戦目
2018年10月28日 相模原球場

明星大学ー武蔵大学

明星大 000 001 010 01=3 H10 E0
武蔵大 100 000 100 00=2 H6 E1

[星] 佐渡ー齋藤駿
[武] ヒンブル、熊川、村田ー堀尾

3戦目
2018年11月3日 上柚木公園野球場

武蔵大学ー明星大学

武蔵大 020 020 000=4 H9 E1
明星大 000 000 000=0 H5 E2

[武] 秋山、ヒンブルー塚崎
[星] 佐渡、宮内ー齋藤駿、小金井

三 土屋雄(武)
二 山北(武)

入替戦後の集合写真

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土屋 雄真 選手(上尾)

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秋山 翔 投手(日大鶴ヶ丘)

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下剋上・挑戦し続ける者たち(2019年)

数々の苦難を乗り越え1部で戦い続ける武蔵大。2019年の戦歴を振りかえる前に、まず活躍を遂げた主な選手たちを取り上げたい。

ヒンブル・ローレンス・ポール 投手(東福岡)
1年次(2016年)より登板経験のある武蔵大のエース。1部昇格後も筑波大にを1安打完投するなど活躍をみせた。4年春は怪我の影響で登板がなかったが、秋季リーグ戦後半より電撃復帰。関東大会でも好投を見せた。

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姫野 稜涼 選手(八戸学院光星)
2017年の入替戦では、2ラン本塁打を放ち1部昇格に貢献。武蔵大のクリーンアップとして打線の中核を担った。

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山内 大輔 投手(東海大菅生)
女房役の鹿倉とともに、東海大菅生バッテリーとして名を馳せる。1年春より登板機会を増やし、2年次より武蔵大の1枚目として頭角をあらわす。

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鹿倉 凜多朗 選手(東海大菅生)
2年春より正捕手としてチームを牽引。先述のとおり、東海大菅生バッテリーの女房役。秋の日体大戦では3打数2安打3打点1本塁打の力強い打撃を見せつけた。

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梅田 大樹 投手(佼成学園)
春季リーグ戦において、2戦目の先発投手としてマウンドに立つ。秋は怪我の影響で登板機会はなかったが、今年は復活に期待したい。

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島田 海都 投手(川越東)
秋季リーグ戦で梅田が不在の中、2戦目の先発投手として存在感を発揮。勝利の要となった。

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土屋 雄真 選手(上尾)
2年春(2018年)より中堅手として出場。3年次からは、リードオフマンとして破竹の勢いを見せる。春季リーグ戦ではベストナインを受賞した。

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清水 凌 選手(松山)
2年春(2018年)より正遊撃手として起用。俊足巧打、好守で評判を博する。同春にベストナインを受賞。その経験値を生かし、3年次もチームの中心人物として内野手の舵取り役を成す。

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松下 豪佑 選手(佼成学園)
首都リーグが誇るバケモノルーキーの1人。1年春より4番にすわる。秋季リーグ戦では打率3割2本塁打10打点で、チームの関東大会出場に貢献。ベストナインにも選出された。

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関東大会出場までの険しい道のり
春季リーグ戦は4位の結果で閉幕。夏のオープン戦はわずか2勝止まり。芳しくない状況の中で、秋季リーグ戦を迎えた武蔵大。山内―鹿倉の東海大菅生バッテリーに最強ルーキー松下。経験値の高い清水や姫野を擁して挑んだ。

開幕直後に好機が訪れる。筑波大、帝京大を破り4連勝を飾ったのだ。しかし、4週目の東海大戦で2敗を喫し首位から脱落。残るは春に昇格を果たした大東大と日体大。2位に食い込めば、関東大会の切符を掴むことができる。

2連勝すれば関東大会出場が決まる大東大との試合。1戦目は松下の2ラン本塁打で先勝するも、翌日の2戦目で惜敗。1勝1敗とし、絶対に負けられない状況に追い込まれる。翌週の3戦目では山内が相手打線を2安打に封じ、何とか勝ち点を奪取。争うは日体大のみとなる。
※首都リーグは混戦をしており、最終週まで武蔵大・日体大・筑波大の関東出場の可能性があった

最終週1戦目。日体大が誇る二刀流の矢澤が初回に先制弾を放つ。その後も追加点を許したが、7回に武蔵大の4番・松下の3ラン本塁打により2-3で逆転。順調にゲームが進めば関東大会出場が決まる。しかし、野球の神様はそれを許さなかった。9回に日体大・馬場のスクイズで逆転を許し、最後はまたも矢澤の適時三塁打で追加点を奪われた。何とか追いつきたい武蔵大だが、三者三振にねじ伏せられ5-3で敗れる。

2戦目。武蔵大打線が爆発。9番・鹿倉の本塁打を含めた10安打で、7-3で日体大を撃破。1勝1敗とし、勝ち点の行方は翌日に持ち越しとなる。この日、第3試合に行われる東海大―筑波大で、関東大会出場の明暗がわかれることとなった。結果は2-1で東海大の勝利。この試合をもって、武蔵大の9年ぶり2度目の関東大会出場が決まった。

3戦目。9回裏を3-2で迎えた武蔵大。6番・土屋のソロ本塁打で同点とし、延長戦に持ち込む。10回を無得点に終えた後、11回よりタイブレークに入る。最後は途中から捕手にはいった9番・黒川の適時打でサヨナラ。リーグ戦を8勝4敗、勝ち点4で締めくくる。

1戦目
2019年10月19日 平塚球場

日本体育大学ー武蔵大学

日体大 101 000 003=5 H5 E0
武蔵大 000 000 300=3 H5 E2

[日] 吉田、森ー馬場
[武] 山内、矢口、葉坂、村田、ヒンブルー鹿倉

本 矢澤ソロ(日) 松下3ラン(武)
三 矢澤(日)
二 上西、小儀(日)

2戦目
2019年10月20日 平塚球場

武蔵大学ー日本体育大学

武蔵大 030 310 000=7 H9 E1
日体大 020 000 100=3 H9 E0

[武] 島田海、山内ー鹿倉
[日] 北山、川畑、春田、森ー馬場、小口

本 鹿倉2ラン(武)
三 佐藤海、土屋(武)
二 姫野(武) 矢澤2、稲本(日)

3戦目
2019年10月21日 平塚球場
試合終了(11回からTB)

日本体育大学―武蔵大学

日体大 000 000 300 00=3 H6 E1
武蔵大 100 000 101 01x=4 H10 E0

[日] 北山、川井、川畑、春田、早稲田、吉田、矢澤ー馬場
[武] ヒンブル、荻島、葉坂、矢口、村田、島田海ー鹿倉、黒川

本 土屋ソロ(武)
二 上西(日) 濱田(武)

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9年ぶり2度目の関東大会

幾度となく難戦を乗り越え、遂に関東大会の舞台にやってきた。
関東大会を乗り越えれば、次は全国の舞台。リーグ戦とは異なるトーナメント方式。負ければ終わりの世界だ。

1戦目、横浜商大との試合。おなじみ山内―鹿倉の東海大菅生バッテリーで挑む。7番・川野辺の三塁打を含む8安打で初戦を突破。

2 戦目、城西国際大との試合。2枚看板の島田を起用。序盤のピンチを切り抜けるも、3回に相手打線に捕まり2点を奪われ降板。その裏、5番・土屋の犠飛で点を取り返すが1点に留まる。4回にはいよいよエースのヒンブルがマウンドへ。相手打線を完璧に抑え、追加点を許さない。試合は2-1のまま9回を迎えたが、勝ち越すことができず試合終了。関東大会ベスト8の成績を残し、武蔵大の秋が終わった。4年生はこの試合をもって引退。大粒の涙を浮かべながら、球場を後にした。

1戦目
第15回関東地区大学野球選手権大会
2019年10月28日 横浜スタジアム

武蔵大学ー横浜商科大学

武蔵大 000 120 003=6 H8 E2
横商大 000 010 000=1 H7 E1

[武] 山内ー鹿倉
[横] 藤村、飯田、川村ー粟田、浅賀、西ノ坊

三 川野辺(武)
二 八幡、御田、成本(横)

2戦目
第15回関東地区大学野球選手権大会
2019年10月30日 横浜スタジアム
試合終了

城西国際大学ー武蔵大学

城国大 002 000 000=2 H6E1
武蔵大 001 000 000=1 H5 E1

[城] 中島ー梅田
[武] 島田海、ヒンブルー鹿倉

二 村上(城) 鹿倉(武)

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あとがき

今回は、武蔵大の関東大会出場までの道筋を振り返った。この快進撃は決して1年で得たものではない。2016年の激しい入替戦、2017年の悲願の1部昇格。2018年、頂点一歩手前で勝ちあぐねた春。秋は追われるかたちで迎えた苦い入替戦。荒波に揉まれながらここ(関東大会)までやってきた。この短期間でチーム全体を改革できたのは、私が見てきた中で武蔵大が1番だと声を大にしていえる。1部に突如あらわれたダークホース。彼らはこれからも関東大会出場もさることながら、リーグ戦優勝。そして全国の舞台に立つことを目標にし、高みを目指すだろう。今後もさらなる活躍、そして止まることのない発展を心より願っている。

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補足

振り返りシリーズ4回目。内容が濃く、1番手こずりました。紹介したい選手もまだまだ多くいます。リリーフ、クローザーとして活躍した村田投手。要所で好打を見せた石川選手など。今回書くことのできなかった選手も、いつかどこかの機会で書けたらと考えています。

本文でも取り上げましたが、これほどまで短期で成果を残し、改革できたチームは他にありません。塚崎元主将の年代に敬意を表します。新チームになってから何度かオープン戦も見に行かせていただきました。どの選手も逞しい表情になっていたのが印象的でした。

1部にいられることが当たり前ではないこと。それは今の4年生が痛いほど理解しているでしょう。上位に食い込んだあとの戦いが険しいものであるのは、首都リーグの歴史に如実にあらわれています。これからも楽しみにしています。特に二遊間は気を抜かないように。

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