🦁⚾️2017年~全国覇者・日本体育大学の強さとは~
開幕8連勝でリーグ戦の王座に
近年、多くの投手をプロの世界に輩出している日体大。この年は松本航(現:埼玉西武ライオンズ)や東妻勇輔(現:千葉ロッテマリーンズ)をはじめ、吉田大喜(現:東京ヤクルトスワローズ)や森博人(豊川)を率い、秋季リーグ戦は開幕8連勝の圧倒的強さを誇り優勝。関東大会も制し全国の頂点に立った。
日体大には上記で挙げた投手以外にも豊富な人材が揃う。今回は多彩な投手陣を切り口に、全国制覇までの道のりを含めた今日までの足跡を振り返る。
投手王国の先駆者 松本 航
投手王国の名にふさわしい多彩な投手を揃える日体大。松本もその1人であり、一人者である。1年次より登板し、ローテションに定着。当時は振り子のような独特のフォームだったことが記憶されている。その後は辻孟彦コーチの教えをもとに、フォームの改良がおこなわれた。
印象的だったのは、東海大との一戦だ。優勝した3年次の逞しい姿とは違い、まだまだ下級生だった頃のあどけない表情が残る。
松本 航 投手(1年次)
松本航 投手(2年次)
松本 航 投手(3年次) 神宮大会優勝年
松本 航 投手(4年次)
彼こそ、日体大最強投手陣を形成した先駆者といえよう。2年次には最高殊勲選手と最優秀投手に選出。首都リーグを通じては通算30勝を挙げ、3年次には2017年夏季ユニバーシアードに野球代表選手に抜擢。華々しい記録を残し、2018年10月25日のNPBドラフト会議で埼玉西武ライオンズより1位指名を受けた。
闘志剥き出し最速155㎞ 東妻 勇輔
松本航とともに、二枚看板として挙げられるのがこの東妻だ。下級生よりリーグ戦で登板する機会もあったが、なかなか思うような結果を残せずにきた。しかし、1年次に68㎏(首都大学野球連盟パンフレット抜粋)だった体重が大学4年次には82㎏に。大幅な肉体改造の結果、プロへの道が切り開かれた。(現在は90㎏ある模様)
東妻 勇輔 投手(2年次)
東妻 勇輔 投手(3年次) 神宮大会優勝年
東妻 勇輔 投手(4年次)
気迫あふれるピッチングで帽子がとんでいくことも。
3年の秋季リーグ戦において、対 明星大学で首都リーグ史上16度目のノーヒットノーランを達成。
ノーヒットノーランを達成した 東妻 勇輔投手
本人からはグリコのポーズみたいといわれる始末。
第48回明治神宮野球大会では星槎道都大学を破り優勝
第48回明治神宮野球大会 優勝の瞬間
秋季リーグ戦、横浜市長杯と優勝投手の機会を逃してきた東妻。ようやくこの全国の舞台で、その称号を手に入れた。
首都リーグが2年連続神宮大会に出場しただけではなく、連続して決勝の舞台に駒を進めた。これだけでも相当の躍進だが、優勝という最高の結果を残した。間違いなく首都リーグの歴史が塗り替えられた。
【神宮大会・戦歴】
2017年11月13日
2回戦 日本体育大学7―1九州共立大学
日体大 010 000 000 6=7 H8 E0
共立大 000 001 000 0=1 H5 E2
[日] 松本 、 東妻 - 馬場
[共] 島内 、 竹本 、 久保 、 谷川 - 緒方
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2017年11月14日
準決勝 東洋大学0―4日本体育大学
東洋大 000 000 000=0 H4 E0
日体大010 200 01X=4 H11 E0
[東]甲斐野 、 山下 、 中田 、 村上 、 片山 - 西川
[日] 松本 - 馬場
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2017年11月15日
決勝 星槎道都大学0―3日本体育大学
道都大 000 000 000=0 H2 E0
日体大 000 021 00X=3 H9 E1
[道]福田、市毛、藤塚、細川 -塚原、吉田
[日]東妻 -馬場
ドラフト会議にて 松本 航×東妻 勇輔
番外編 引退試合
同年12月に行われた日体大の引退試合では、東妻投手が本塁打を放つシーンも。
W左腕 西澤 大×石川 勇二
投手層の厚さに定評のある日体大。この年は松本、東妻に加えて多くの精鋭が集う。西澤 大投手(春日部共栄高校→日本体育大学→現:日立製作所)と石川 勇二投手(糸魚川高校→日本体育大学→現:YBC柏)の2人だ。
西澤 大 投手
※帝京大学の西澤 海 投手(聖望学園)は彼の弟である。
石川 勇二 投手
社会人で活躍をする左腕たちの今後にも期待だ。
不動の名遊撃手・船山 貴大
投手王国で名を馳せる日体大だが、勝利の立役者は他にもたくさんいる。その1人が船山 貴大(日本大学第三高校→日本体育大学→現:日本生命)だ。優勝したこの年は、1年を通じて公式戦ノーエラー。守備力の高さは首都No.1といっても過言ではない。特に、坂本耕哉(松坂高校→日本体育大学→現:永和商事ウイング)との二遊間コンビは最高だ。
船山 貴大 選手
神宮大会の決勝では先制の本塁打を放つ。優勝後「ヒットやホームランをたくさん打ってきたと思うが、今日のホームランを打ってどんな気持ちだったか」とインタビューを受けた際「ホームランは大学に入って2本目なのでたくさんは打っていません」と答え、場内の笑いを誘った。
本塁打を放つ 船山 貴大 選手
現在は社会人野球の名門、日本生命でプレー。今後もその守備力の高さに期待だ。
日本一の主将・濱村 和人
当時の主将をつとめた濱村。捕手として活躍し、現在は日本製鉄鹿島でプレー。4 年次ではスタメン起用こそあまりなかったが、主将としての役割を果たす一方で積極的に選手を鼓舞し続けた。神宮大会で優勝した際は、誰よりも大粒の涙を流した。
濱村 和人 元主将
優勝時の集合写真
影の立役者・アナライザーのもつ役目
勝利の方程式をつくるのはデータ班(アナライザー)だと言い切れるほど、日体大のデータ班はハイレベルだ。観察能力はもちろんのこと、発信力も兼ね備えている。日体大に限らず、首都リーグでは他チームのデータ班ともやりとりが頻繁にある。開門前から、3試合を通してバックネット裏に座っていればこの行動は自然だろう。データ班同士のコミュニケーションがあることで、首都リーグのレベルの底上げにつながっている。
選手ももちろんだが、データ班にも注目だ。
期待の新星・髙垣 鋭次
髙垣は1年春のリーグ戦よりベンチ入り。そして、いきなり4番・サードで出場しレギュラーに定着。49打数13安打、打率.265、打点4の成績を残し鮮烈なデビューを飾る。神宮大会でも全3試合に4番・サードでスタメン起用。12打数3安打、打率.250を記録。期待の新星として頭角をあらわした。
髙垣 鋭次 選手(1年次)
髙垣 鋭次 選手(2年次)
髙垣 鋭次 選手(3年次)
~3年後 日体大を背負う主将へ~
華々しいデビューを飾った髙垣だが、今日までの道のりは険しいものだった。3年次には打撃不振に陥り、昨秋のリーグ戦ではついにベンチメンバーから外れた。苦難に直面した髙垣であったが、同秋に主将に抜擢される。
逆境を乗り越えて、有終の美を飾れるか。最後のシーズンに期待が寄せられる。
投手王国の火付け役 辻 孟彦 コーチ
誰でも知っているだろう伝説の投手。そして2015年より同大学のコーチに就任をした辻コーチ。現役でプレーしているところを見たことのある私としては、恐れ多く何も語ることができない。大貫晋一、松本航、東妻勇輔、吉田大喜と数々の教え子をプロの世界に輩出。投手王国を築いた功労者だ。
多くの日体大OBが口を揃えて辻コーチの素晴らしさを語っている。
あとがき
首都リーグから2年連続の全国大会出場(次回書くであろう筑波大と昨年の東海大を含めたら4年連続)はとても大きな功績だ。首都リーグ全体のレベルが上がっていることが実感できる。そして1ついえるのは、どのチームも勝ち進むごとに団結力が増す。だからこそ悪循環に陥ったときに、どうやって向き合うかが肝になる。1度折れた人間は強い。
全国を経験した選手が日体大にはまだ残っている。そう、現在の4年生だ。
特に挫折を味わった髙垣主将のラストシーズンにはとても期待している。
そして投手王国もまだまだ続く。今年は森博人投手と吉髙壯投手、そして二刀流の矢澤宏太投手と続く。さらに期待が高まる。
今回も私の主観で2017年のチームと、付随する現在までを記した。当時の選手たちの多くが、現在も社会人の舞台で活躍をしている。歴史とは点ではなく線で結ばれるもの。どこかでその線が切れることがないよう、飛躍に期待している。
私の考える日体大の強さとは、選手個人の潜在能力を最大限に引き出せる環境が用意されているところ。そして、それを選手が理解してさらなる高みを目指すところにあると考える。その環境をものにするのも、捨てるのも自分自身。自主性がカギになる。
特に今の時期がそれにあたる。さぼっていればそれなりの成績。コツコツ積み上げていればその後のスタートが変わる。苦境の中ではあるが、その先の試合がとても楽しみだ。