“子どもが主役”―世界の教育事例【ヨーロッパ編】
こんにちは。
オンラインでつながれる人同士で、やりたいことを企画してどんどん動いちゃおう!という、プロジェクトラーニング・スクール(base campus)を仲間と一緒に開設・運営している一人、おとわです。
これからの「学び」を考える上で、ぼくたちが参考にしている世界の最新の教育事例を紹介していきたいと思います。
教育関係者だけでなく、子育て中の方や、「学び」に興味のある方にもぜひご覧いただきたい代表事例を中心にピックアップします。
最初にフィンランドやオランダの事例を見れば、大きな潮流が分かると思うので、そこから紹介しています。(※ヨーロッパ諸国の例の一部です。)
ちなみに、GAFAなど巨大な企業が生まれる資本主義の大国アメリカの教育はまた違った切り口を見せてくれるので、別のnoteにて紹介します。
アメリカの教育制度に基づいている日本の教育も、グローバルシティズンシップ教育や公設民営のフリースクールなど新しい取り組みがじわじわと始まっています。日本国内でも進んでいる事例についても、また別のnoteで!
さて、今回の本題です。
共通するのは「子どもが主役」「大人がサポート役」ということ。この言葉だけ聴くと当たり前じゃない!?と思うかもしれませんが、中味が全く違います。
大枠としては、大人が知っていることを子どもに教えてあげるではなく、「子どもがやりたいことをチャレンジできるように場を作る」ということです。
わかりやすい例では、大人が用意した宿題やテストはやらない(やらされてやることは、身が入らないしやる必要がない)。宿題やテストがあったとしても子どもたちがやりたいタイミングでやりたい内容について取りに行く(興味関心があることに取り組むので、身が入る)という違いです。
Educationの語源は、「E」は「外へ」を意味する接頭語、「DUCERE」は「導く」、「動植物の生命が本来持っている力を引き出す」「能力を導き出す、引き出す」という意味で、教えて育てるという「教育」という言葉は本来のEducationの訳としてはちょっと意味が違うと感じますね。
先進事例をそのままマネしましょう!ということではなく、日本とは遠い国で起きている先進事例を参考にしながら、自分の近くにある学校や地域、そして家庭や自分自身には何ができるか?ということを考えて取り組めるようなきっかけになるとうれしいです。
地元で一緒に子どもを育てる、フィンランド教育
授業時間を減らしていて昼休み含めて週20時間(日本は授業時間を増やしている)。学校だけが社会じゃないし、学校以外の色んな人と会って色んな遊びや体験するを大事にしていて、日本のような学校の授業を補う学習塾にも行きません。
それでも学力は世界第一位。
フィンランドの文部大臣だけではなく校長先生も口を揃えて「宿題という概念自体が、”時代遅れ”」、全国統一テストも必要なく「テストで点を取る訓練は教育ではない」と口を揃えて言い切ります。テストのために勉強するのではなく、勉強した結果テストの点が良くなるという順番です。目的と手段の順番を見失わずに動画に出てくる大人全員が考えていますよね。
「統一テストがなくて、どの学校が良いか測れないのでは?どうやって学校を選ぶ?」との質問には、文部大臣は「近隣の学校が一番、どの学校もレベルは変わらない」と答えます。
僕には、この文部大臣の答えの意味がしばらくの間わからなかったのですが、ようやくわかってきたのは大人の価値観で”教えていない”からどこの学校に行ってもレベルは同じという意味が理解できてからです。
教える前提だと得意分野によって教師の優劣がどうしても出てしまいますが、「子どもが主役」で子どもの学びたい内容の希望が先にあって「大人がサポート役」としてこと教えるのであれば、先生が苦手な分野で教えることができなくても、その分野の精通した地域の誰かを連れてくることで充分に子どもの希望に寄り添うことができます。
また、フィンランドでは有料の私学は違法だそうです(一部、例外はあるそう)。制度として裕福な家庭の子だけ集まって通える学校に行くということはなく、さまざまな境遇の子どもたちがいることを学校という場で知り触れ合う場になっています。自分と異なる相手と接することができる環境に入ることで、多様性を日常の中で感じながら自然と相手を尊重・理解できるような場ができていますね。
親にとってはお金で買える教育環境がない分、地元の学校が善くないと困るわけで、学校が子どもにとって素晴らしい場所にするためにも、親も積極的に子どもの学びにかかわることを前提とした制度設計になっているようにも見えます。
動画にはないですが、地域の大人と学校の距離が近い印象があり、積極的に地域の大人が学校に関わっているのではないかと思います。地域の子どもは地域で育てる、地域づくりは学校づくりという土台があるのではないでしょうか。
「学校って幸せになる方法を、見つける場所じゃない?」という女性の先生が問いかけた言葉がとても印象的でした。
日本教育の前提にある「より多く収入や仕事に就くための方法を、見つける場所じゃない?」「より多く収入を得られる方法を知ることは、幸せになる方法じゃない?」という問いと一緒に考えてみる必要がありそうです。
「幸せや豊かさって、なあに?」と聴かれたら、フィンランド人はどういう回答をするのかもとても興味深いですね。
自分で自分を育てる、オランダの教育
オランダの教育で特徴的なのは、イエナプランと呼ばれて有名な異年齢学級です。よくよく考えると、社会に出たら異年齢の人と仕事をしたり対話をすることは当たり前なのに、学校にいる間だけ同じ年齢の人だけで過ごすというのは変ですよね。社会に出るための準備が学校なのだとしたら、この点だけをとっても、社会に出た時をかなり想定しているように教育制度が設計されています。
社会に出た時を考えると異年齢学級は普通のことですが、仕組みとしても素晴らしい点は、年齢が違う子がクラス内にいることで「できなくて当たり前」が前提になり、子どものうちに「助けてもらう」「助ける」「教えてもらう」「教える」経験を自然とできる環境があることです。先生の言い方ではうまく伝わらない子どもがいても、別の子どもの言葉で伝えてくれるという選択肢があることは、先生にとってもとても助かることが多いはずです。
そしてオランダの子どもたちは、時間割も自分で作る(ブロックアワーという時間がある)。自分で作った時間割を元に、一人ひとりが「違う教科」を「違う教材」「違う方法」「違う場所」で学習します。子どもは身体が小さかったり使える語彙が少なかったりするので、できることが少ないように感じてしまう場面があるかもしれませんが、大人が邪魔をせずにちゃんと尊重すれば、実は自分で決めて自分で活動できるということですね。
時間割で自分で決めたような自分自身の興味関心を深める学びと同様に、自分以外の他者と対話することもとても大切にされてます。動画でも先生から生徒へ「“外国人は出ていけ”という政治家がいたけどどう思う?」という問いかけがされていますが、正解のない難しい問題に対しても、問題を隠さずに話し合うという姿勢の元、問題が起きないことを前提にしているのではなく、「問題が起きることは当たり前で、起きた問題にどう対応するのか?」という点が重視されています。
対話は、自分との「違い・異なる考え方」に対してじっくりと聴く姿勢をもつことと、先生の話を一日中聴くばかりではなく、自分の意思を表明する機会があることが、さすがはジャーナリズム先進国のオランダです。
自分の発言が自分が参加している社会に反映されるという考え方が根底にある力強さを感じさせてくれます。
対話は、学校の授業だけではなく、家庭での対話でも大事にされている姿が紹介されていますが、家庭も学校も同じように学びの場(学びというより暮らしの一部?)になっていて、子どもの学びと同時に大人も同じ目線で一緒になって考えている姿はマネしたい大人の姿ですね。
フィンランドとの大きな違いとしては、地元の学校に行くというよりも、通学区という考え方はなく誰でも好きな学校に通うことができるし、もし善いと思う学校がなければ自分たちで学校を作れるというのは、「子どもが主役」という根底が同じでも大きく制度が異なるポイントですね。信仰や文化が異なると教育理念も異なりますが、異なることに同調させるのではなく個人の選択を尊重するという共通意識がここに色濃く出ています。
オランダの通知表は他者と比べる相対評価ではなく過去の自分と比較する絶対評価というのも知っておきたいポイントです。自分以外の誰かと比べて、できる・できないを判断するのではなく、過去の自分と比べて何ができるようになっているのか?何が得意なのか?がわかるようになります。
「自己肯定感」という言葉を最近よく聞くようになりましたが、他人と比較するから「他者肯定・他者否定」「自己肯定・自己否定」に陥ってしまうのですが、そもそも他人と比較しなければ自己肯定感を削られるというようなことはないわけです。
「どんな社会をつくりたいの?」と聴かれたら、オランダ人はどういう回答をするのかもとても興味深いですね。
時代背景に合わせて教育・学びも常に変化していて、テクノロジーの発展によって人間が担う役割がすごいスピードで変わってきている中で、現在から未来を見て、未来から現在を逆算して何を学び何をしたい?日本から世界を見て、世界から日本を見て、自分は周りの人と一緒に何を学び何をしたい?そういう視点を持ちながら、子どもたちが自分の可能性を追求できるような環境が広がると嬉しいです。
フィンランド人やオランダ人の友人はまだまだ少ないので、本国の生の声を全部拾えているかと言えばまだまだ足りないとも思っています。日本語を話せるフィンランド人やオランダ人(ヨーロッパの方)、もしくは日本人でヨーロッパ在住者や経験者の方はぜひ意見交換させてください!