見出し画像

善児からトウへの世代交代劇に涙。史実と違う仁田殿の最期にも騒然!第32回「災いの種」見どころ振り返り!【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第32回の感想です。

前回の感想はこちら↓

(※以下、ネタバレ注意)

ギャグシーン無し!?ドラマ始まって以来の大鬱展開にお茶の間阿鼻叫喚!

今までレギュラーとして活躍していた登場人物が次々死ぬ“鬱回”が連発しており、今回はギャグシーンすらナシ!?のドス黒い回となった気がします。覚悟はしていたんだけどさ……まじで「ここまでするかぁ!?(by頼朝・大泉洋)」ですよ。

一応、唯一笑えるシーンがあったとすれば、三浦義村(山本耕史)が和田殿(横田栄司)に対して言った「バカ……場数を踏んでいる」ぐらいでしょうか。まじでギャグシーンを探すのも『ウォーリーを探せ』状態ってどういうことだよ。

ただ、いつものギャグを捨ててでも「この回をしっかり観て!胸に刻んで!」という脚本家の三谷幸喜さん、並びにキャストやスタッフの皆さんの想いがたっぷり詰まった回になったというような気も。まぁ撮影として相当大変だったのは富士の巻狩りの回だったのはドキュメンタリー番組『100カメ』でも紹介されてましたが。いや、にしても懐かしいな。あの時にタイムスリップしてぇわ……。

と、いろいろ衝撃がある中でやはり多くの視聴者の皆さんの心に衝撃を与えたのは、一幡(相澤壮太)を殺せと命じられた善児(梶原善)の「できねぇ」というセリフ。それから仁田(ティモンディ・高岸宏行)殿の自害じゃないでしょうか。善児はそもそもフィクションのキャラクターですが、仁田殿がまさか史実を変え、誅殺ではなく自害という最期を迎えたのは、歴史クラスタの皆さんとしても仰天だったのでは。

史実だとコメディー?仁田忠常の最期を考える

「史実と違う」と言うと、歴史クラスタじゃない皆さんも「えっ、それって駄目じゃないの?」みたいに思われるかもしれません。ただ、そもそも「史実」として描かれている仁田忠常の最期があまりにコメディーな感じなので、これをそのまま再現しようとすると折角シリアスが続いてた『鎌倉殿』のストーリーが急にぶち壊しになりかねんなと……。

詳しくは↑でも紹介されてますが、簡単に流れを書くとこうですな。

・頼家から時政の討伐を命を受けながら、時政の館に招かれて酒宴を楽しんでしまう忠常
・帰りが遅かったので一族の者たちが「忠常が討たれた」と勘違いし、将軍御所に攻め込む。一族は返り討ちに
・忠常自身も、加藤景廉という御家人に討たれる

ドラマでは、和田殿に「一杯やらねぇか?」と言われて「いえ、私は……」と断っていますから、ここも史実とは違う流れに。サウンドノベルゲームでいうところの「選んだ選択肢によって展開が変わった」みたいで、それはそれで面白い描き方な感じもします(ただ、どちらの選択肢を選んだとしてもやっぱり滅びたじゃねーか……)。

またドラマでは、「一族の者たち」も「加藤景廉という御家人」も出てきてませんから。これがまたうまいこと登場人物を端折ったものだなと、制作寄りの視点で見ても感心させられます。

ただ初見のときには、ひょっとして仁田殿には「一族の者たち」がいなかったのかな?とも。設定上「天涯孤独の身」として描かれていたから、あの時代であって簡単に自害するなんて道を選べたのか?なんとも現代人的な感覚だけど……という違和感もあったのですが。考察を進めながら、いやそれは違うとも考えました。

「仁田一族の者たち」は、飽くまでドラマでは端折られていただけで、あの世界の中でも生きている。そう考えると、実際に比企能員を手にかけた仁田忠常自身が、北条一族に謀反を起こそうとしたらどうなるかということを自身も悟ったハズです。

しかし鎌倉殿へも謀反は起こせない。ならば、自分の首を差し出すまで。それで一族を守ったとすれば、あの時代の武士の考え方にも即していますし、また仁田殿の死の重さも変わってくるなと感じましたね。

いずれにしても、仁田忠常の詳しい家系図は現存してない模様。つまりは、末裔となる人々も不明ということに……。ただ比企家や梶原家のように「滅びた」のではなく「不明」というところで、今回のドラマの展開が描かれるようにもなったと考えると、まだそこに救いも感じられます。

いずれにしても、またドラマ的にも、歴史的にも、惜しい人を亡くしましたね……「仁田ロス」になっちゃうなぁ……。

生きていた一幡。善児からトウへの世代交代劇のために殺された?

さて前回、死んだと思っていた頼家の息子・一幡ちゃん。第31回放送時、善児に迫られつつも最期は描かれませんでしたし、公式サイトを見ても「故人」マークが付いてないから「もしかして生きてる?」説は流れてましたけど、まさか善児がそのまま連れて帰っていたとは。

トウ(山本千尋)と共ににこやかに玉入れ遊びなどに興じる様子を見ながら、忌々しい顔をしていましたね、善児……。てっきり、泰時(坂口健太郎)の命令で「殺すな」と言われたので、実行を一次保留→上位命令者である義時(小栗旬)の「殺せ」コマンド入力待ち状態でヤキモキしてるだけかと思ったら。いざ義時が現れて「あれは生きていてはいけない存在だ」なんていわれると、まさかの「できねぇ」と命令を拒否。

「脚本家の思い通りに動く殺人ロボットかと思っていたら、まさか善児も人の子だったのか」とSNSも騒然としていましたが。ただ、どうして善児がここにきて命令を拒んだのか。義時のセリフには「千鶴丸と何が違う」とあり、それに「わしを好いてくれている」と返していました。

ただこれ、「じゃあ、最初に殺した頼朝の子・千鶴丸は、善児を好いてくれてなかったの?」と言うと、そういうことではないと思うのですよ。序盤のころだって、善児が千鶴丸とも楽し気に遊ぶ様子が描かれていました。「殺せ」と命じられて「川遊びに行きましょう」と連れ出したシーンはやや強引だったようにも記憶していますが、少なくともあの時代の善児は幼い子を殺すのに躊躇はなかったのです。

それが、次々と多くの人々を手にかけていった後で遂に――まぁ、言ってみればこれも善児自身が口にした通り、「わしも年を取りましたので」ということだと思うんですよね。

SNSでは、「善児が一幡を殺せなかったのは、孤児であるトウを育てたから」といった考察も流れていましたが、私個人としてはむしろ逆。「自分が老いて、人を殺せなくなる(技術的にも、精神的にも)のがわかっていたから、トウを育てた」のではと感じました。

結局、刃物を手にして一幡を前にしても躊躇していた善児。その前に義時が歩み出て、まさかと思いきや。次の瞬間、トウが「水遊びいたしましょう」と一幡を連れ出したのでした。「水遊び」て……まじ「水遊び」はアカンて。千鶴丸のときと同じテやないか!

しかしこの「水遊び」で伝わる脚本の妙ですよね。この後、一幡について何も描かれなくても、「川に流されて亡くなったんだ」とわかる。それと同時に、善児がアサシンとしての役目をここで終え、その仕事が弟子のトウに受け継がれたということを現わすシーンでもあるように感じました。なんて哀しい世代交代だ……。

比企尼も生きとったんかワレ!最後の最後でありったけの呪詛をキミ(北条)に♥

ついでに比企尼(草笛光子)も生きていましたが、一幡の異母弟・善哉(長尾翼)の元に現れて「北条を許してはなりませんぞ」と呪詛のようなセリフを放ち、亡霊のように消えていきました。これも怖いて。

そして次回の相関図からも「故人」マークは付いたのかと思えば、顔アイコンごと消滅。確かに史実でも「没年は不明」とされていますが、この「死んだか死んでないのかもわからない」というラストにしたのはホラーすぎやしませんかね……(※褒めてる)。

これも善哉にとっては後々の展開につながっていくのはわかっているので、詳しくは書きませんけど(ネタバレ自重!)。

比企尼も、元は頼朝の乳母。平治の乱で源氏が破れ、頼朝が流人となった後も生活を援助していたと言いますから、当時の比企尼も頼朝に「父・義頼様の命を奪った平氏を許してはなりませんぞ」みたいに言い聞かせていたのではなどと考えると、何とも言えない気持ちになります……。

政子&義時の姉弟バディにも亀裂が?覚醒した実衣がコワ過ぎて天国の全成も号泣ww

一方、一幡の生死を巡っては、政子(小池栄子)と義時の姉弟バディにもトラブルが。一幡が館の火の中に飛び込んで死んだと告げた義時の嘘がバレ、「あなたは私の孫を殺した。頼朝様の孫を殺した!」と、政子が義時にビンタをかましたのでした。

そりゃあ、自分の孫を殺されたのだから怒るのも当然ですけれども。しかし「初めから助ける気などなかった、義高の時と同じ」なんて言われちゃあ「ちょっと待ってくれよ、そこで義高を引き合いに出すのは違うだろ」と思いつつ。そう言えば政子は、義高の最期をちゃんと知らんのですよね……。

それでも、頼家(金子大地)に話しに行こうとする義時を制し、自分が伝えに行くと出向いた政子。「どう伝えるべきかはわきまえています。馬鹿にしないで」なんて半分キレかけながらも弟の不始末を尻ぬぐいしようと励んでましたけど……。

でも流石に、「頼家が目覚めないと思った比企一族は、諦めて自ら滅びた」はムリがあるやろ。嘘ヘタクソかよ姉ちゃん……。それやったら前回の、『諦めの悪い男』じゃなくて『諦めが良すぎる男』になるやん。佐藤二朗さん「あー、もうどうにでもなーれ☆」とか言いながら放火しちゃったみたいな。ただのコント俳優になってまうやんか。(それはそれでヤバイ)

結果、頼家には真実がぜんぶバレちゃいました。あーあ台無し。まぁ、遅かれ早かれこうなってたかとは思いますが……。そして「自分が何のために生き永らえたか考えなさい」なんて、また要らん励まし方までするから。それで「北条を絶対許さん!」と闘志剥きだしの頼家ですよ。もう母子の間にも修復不可能な亀裂が入ってしまいましたね。

一方、妹・実衣(宮澤エマ)ちゃんの豹変ぶりも怖かった。実衣ちゃんの望んだ通り比企が滅びたのに、「あの人には比企の血が流れています」と義時の妻・比奈(堀田真由)を非難。そして終盤、自分が乳母となって育て上げた千幡 a.k.a 実朝(嶺岸煌桜)が3代目鎌倉殿として就任するや、赤い着物をまとって御家人たちの前に現れたのでした。

そのときに実衣ちゃんが浮かべた不敵な笑み。遂に「権力を勝ち取ってやった」と言わんばかりに……何だか恐ろしいものがあるよ。これには「赤が似合う」と言って散っていった全成(新納慎也)殿も、草葉の陰で泣いているのでは……。

なんて思ったら、演じていた俳優さん、ガチで哀しみのツイートしてて草。

比奈ちゃん離縁で、まさかのナレ死!遺された息子たちが「希望の種」となるか?

2代目ヒロイン・比奈さんも、とうとう退場の時がきてしまいました……。起請文があるから義時とは離れられないハズ。もし別れたら「全身の毛穴から血が噴き出して死んでしまいます」と義時に言ったのは、あれはギャグなんですかね……いや、呪術の類を信じていた当時のキャラクターとしてはマジの哀しみとして語っていたんでしょうけど、わざわざセリフとして聞くと何やら笑けてきます(実際に笑えるようなシーンじゃなかったけど)。

そこで比奈さん自身から義時に離縁を言い渡すことになるのは、まぁわかってはいたけど、やはり辛い展開ですね……。さらにナレーションも「京都に行き、4年後に亡くなった」と、まさかのナレ死。無慈悲!ただ一応、史実を辿ると、京都で源具親なる官人と再婚し、2人子も成したようなんですよね。

また紀行でも語られていましたが、義時との間にも北条朝時、北条重時という2人の息子がいたそう。

なおこの2人、ドラマでの出演はないのかな……と思いきや、31回、縁側で物思いに耽ってる比奈ちゃんの前で、「えい!えい!」とチャンバラに興じている兄弟がいました。「母上ーっ」なんて声に、比奈ちゃん、「2人とも、上手ね」なんて言って笑うんですけど。

これ……初見で気づいてた人、いる!!??(ちょうど比企能員が殺されて、これから比企の館を攻めに行くぞーってところの間ぐらいのシーン)私もTwitterで知って、慌てて録画を見直しましたけど……ほとんど顔もわからないくらいボケボケな感じで映ってましたw

この子達も、元服した後で物語に関わってくるんでしょうか。この殺伐とした物語の中の、数少ない「希望の種」かもしれませんね……頼む、そうなってくれ(血涙)。

ここにも注目!筆者が独断と偏見で選ぶ「見どころ」一挙振り返り

さてさて、最後に。筆者が独断と偏見で選ぶ「見どころ」ポイントを一挙に振り返っていきましょう。

・死んでいなくなるキャラも多い一方、また新登場のキャラも続々出てくる『鎌倉殿』。今回は時政(坂東彌十郎)パパとりく(宮沢りえ)の娘・きく(八木莉可子)が登場。しかもいきなり平賀朝雅(山中崇)なる京都守護に嫁いでいたのでした。この平賀朝雅も新キャラながら、前評判通りのうさん臭さ……「どこへ行ってらっしゃったのですか?」という妻の質問はスルーして、義母のりくに野の花をプレゼント。りくには喜ばれますが、きくの「なんやコイツ……」みたいな険しい表情がたまらなかったですね。イヤイヤ結婚させられたパターンだわコレ……。そして、この平賀朝雅が、また北条家に悲劇を呼ぶことになるのだとか。もうええて……。ちなみにこの朝雅殿、プロフィールをWikiってみるとですね、母親は比企氏出身だそうなんですよ。

あれ……実衣ちゃん、「あの人には比企の血が流れています」って……いや、コイツもそうだったんじゃ……そこはスルーなの?それとも、ドラマだから設定違うわけ??めっちゃモヤりますよwwww

・ちなみに北条政範(中川翼)も初登場キャラか?と思いきや、かつての「北条家、大集合」シーンで赤子として一度登場してましたね……いやぁ、成長著しいわい。

この子も現時点では正室の息子になるので「北条家の嫡男」となるわけですけれども。はてさて今後がどうなるやら……彼もある意味、「災いの種」かもしれませんな。災いが多すぎィ!

・唯一、不安も希望もなくニュートラルな感じで見れるのは、京の後鳥羽上皇(尾上松也)に仕える僧として登場した慈円(山寺宏一)ぐらいでしょうか。後に歴史書『愚管抄』を記したことでも有名ですが、彼がドラマで出てきたということは、これから狂言回しみたいなこともしてくれるんでしょうか?今更??まぁ、何にしても声が良い。七色の声を持つ男ですもんね……。同じ声優仲間としては緒方賢一さんや関智一さんもこれまで出演されてますけど、「カメオ出演」的な扱いじゃなくて、できるだけ本編にもガッツリ関わってきて欲しいなとか思ったりします。てか、あんだけ強キャラ感出してた関さん、もう出ないの⁉

・慈円と一緒に、何気に「元・13人」の中原親能(川島潤哉)さん出てらっしゃいましたな。梶原殿は都に行こうとして誅殺されたのに、中原さんはちゃっかり都で再就職って……これも武士と文官の違いでしょうか。そもそも中原さん、謀反は起こしてないですからね。ともあれ、お元気そうで何よりでした。

・今週の鎌倉裏ボス、三浦義村さん。やっぱり前回「北条との仲を甘く見るな」と言ってたのが嘘だったみたいに、「千幡様に何かあれば、次の鎌倉殿は善哉様」とか欲望が見え隠れするようなセリフを吐いてみたり、「いま北条と事を起こすわけにはいかん(つまり、時期を見て北条に戦を仕掛けようってこと?)」みたいなセリフを吐いてみたり。相変わらず何をしたいかがわからん感じですけど、これもまだまだ助走中ということでしょうか。とにかく、レギュラーメンバーとしてある意味安心して見れるのはもうオマエだけなんだよ……次回、期待しているよ……!

・一方、“俺達の泰時”は、いつの間にか三浦義村の娘・初(福地桃子)と結婚。一幡ちゃんを生かしていたことを「不幸中の幸い!」だなんて言ってましたけど、義時からは「いらんことするな」としか思われてなかったようで……結局、一幡を葬った義時に「父上はおかしい!」なんて歯向かったせいで、ビンタを食らってしまいます。でもあの義時のビンタ、政子からビンタされたことの腹いせみたいにも見えませんでした?

ただ、義時が若いころには、「おかしい」と思う相手が初代鎌倉殿・頼朝でしたからね。否が応にも従うほかなく、それで闇落ちしちゃってるようなところもあるわけですけど。泰時の場合はまだ身内だから、やり直せるハズですよ……ともかく、はよ御成敗式目つくって……!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?