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まさかの筋肉祭り!義時と政子の政治バトル勃発にも戦々恐々。第42回「夢のゆくえ」見どころ振り返り!【鎌倉殿の13人】
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第42回の感想です。
前回の感想はこちら↓
(※以下、ネタバレ注意)
癒し系弟・トキューサもブラック化?哀しい物語のはずなのに筋肉がすべてもっていく……
実朝(柿澤勇人)の忠臣であり、親友でもあった和田義盛(横田栄司)とその一族の命が奪われた41回に続き、42回では実朝が抱いた夢であった唐船の造船計画が、北条義時(小栗旬)によって台無しにされてしまいました。
これだけ書くと、ほんと酷い叔父なんですけどね、義時。友のみならず、夢まで奪うのか。可愛い甥っ子であり、支えるべきはずの鎌倉殿である実朝に何の恨みがあってこういうことしてるんだ、なんて文句言いたくなる方の気持ちもわかりますけど。
しかも、そんな哀しい物語が展開している一方で、八田知家(市原隼人)は筋肉むきだしだし。いや、唐船を沖に浮かべようと必死になった結果がソレなんですけど、問題は三浦義村(山本耕史)よ……お前まで何で脱いだ。そして、脱ぐだけで手伝わんのかい、とか思っちゃったわwwwwwww
いやぁもう本当、泣いていいのか笑っていいのかよくわからない。「ああ今回も、人は殺されなかったけど、哀しい話だったな……筋肉が。筋肉が悲しい話だった……あれ?なんだっけ?八田と三浦の筋肉が由比ヶ浜に沈む話だったっけ?」とゲシュタルト崩壊起こしそう。
とりあえず落ち着こう。やっぱり義時の行動について考察していきたいですよね。なんで唐船に対してあそこまで否定的だったのか。そしていざ造船が始まるや、五郎トキューサ(瀬戸康史)を使って設計図に細工してまで、完成を阻んだのか。
そもそもトキューサも、ようあんなことしてくれたわと。「今までノンビリした感じの癒し系弟だったのに、ついにお前もブラックに染まったのか」なんてTwitterは荒れてましたが。まぁ彼の行動理由はそんな複雑じゃないです。
あいつってば、第33回「修善寺」で「兄上のことはすべて私が受け入れます。何でもお申しつけください!」なんて言ってますからね。それを有言実行しているだけのことです。
ホント、いいように扱われるパシリ役に成り下がっただけなんですけど。それに対して義時ですよね。また彼のブラック化はどこまで進んだのか。前回の和田合戦のときも「まだ迷いがあった」と私は分析していたんですけど。今回はどうか。
義時が実朝の夢を阻んだワケ。京の罠、そして実朝の「頼家化」を危惧してか
少なくとも「野心は持っちゃいけない」のが義時のキャラのシバリなわけですから、自由に夢を持ち始めた実朝に対して多方面から分析していくわけです。「この船は坂東のためにならん。御家人たちへの負担が大きすぎる」と。
そもそも、実朝がいきなりこんなこと言い出したのも、「夢のお告げが現実になったから」だと言いますが。それについても京からきた源仲章(生田斗真)に仕組まれたものだったのではないかということを泰時(坂口健太郎)も報告しています。つまり実朝個人の純粋な夢ですらなかったのです。全ては朝廷の罠。鎌倉を守る者として、そんな罠にハマるわけにはいかないと。
ただ、罠だと知りながらも八田殿に頼んで造船計画を推し進めたのは泰時。朝廷の罠でもなんでもいい、きっかけがどうあれ、実朝が自分から夢を抱いて大きな事を起こし始めてくれたことが嬉しかったのでしょう。何より今回、実朝が自ら「側に仕えよ」と抱えてくれることになった家臣としては、支えていくのが当然です。
それもあって進んでしまった造船計画。義時は途中からでも「上皇様にそそのかされて造る船など、必要ござらぬ!」と実朝に迫り、辞めさせようとするのですが、今度は三善殿(小林隆)が「どうか、船の建造は続けさせてください」と頭を下げます。この人も一貫して実朝様の味方ですが、元は気弱な感じだったのが、だんだん義時にもモノ言えるようになってきました。メンタル強くなったよね。
そして「坂東のためにならない問題」も、泰時の「建造に当たった御家人たちの名を記すのです」という機転によって一先ず解決。今で言うところの「エンドロールにクラファン支援者の名を載せる」作戦ですね。思わず私も五郎みたく「いい案だ……」って言いたくなりましたが。
それでも唐船の完成を阻止した義時。それによって「実朝の威光が高まる」ことを危惧したためですが、決して「北条の権威が落ちるから」という理由からではないんですよね。それが朝廷側の目的であり、義村から指摘されたところだとしても。義時が本当に恐れていたのは、実朝の「頼家化」。またあの頼朝の長男のように好き勝手され、結果的に誅殺せねばならないという悲劇を繰り返すことでした。
志がどうであれ、時政と同じ道をたどろうとする義時。政子も政治の表舞台に立ち、いよいよ孤立
じゃあ義時の望み通りにするには、実朝はどうすりゃよかったんだ……今まで通り「傀儡」でいるより他なかったんじゃないか。それこそ、お前が追放した時政(坂東彌十郎)と同じやり方じゃないかと言われれば、まさにそう。
それで終盤では泰時からは「父上、あなた一人の鎌倉ではありません」と、自分が時政に言ったようなことを言われて、「黙れ!!!!!」と叫ぶしかなかった。でもあの「黙れ」にはいろいろな思いが込められてそうだなと感じましたよ。「これは私個人の意思じゃない、すべて坂東のため、お前たちのため。私は父・時政とは違う。なのになぜわかってくれないんだ!」という憤りの爆発だと。
ただあるいは、義時自身も老いてきて、もはやどれが他者から託された感情で、どれが自分自身の思いなのかがわからなくなってきているのかもしれません。ひたすら自分を押し殺して生きてきたが故の苦しみ。自分のワガママで生きていけた方がどんなにラクなのか。むしろ小四郎自身の純粋な願いとしては「今すぐ伊豆に帰りたい。あるいは死んでしまいたい」だけしか残ってないのかもしれません。
しかし亡き三郎兄や頼朝様、そして自分が追放した父・時政から託されてきた思いもある。なにより梶原・比企・畠山・和田と、多くの御家人たちの犠牲の上に立って生きてきた以上、今さらおいそれとその地位を放り出すわけにはいきません。そこには力ある者の「強い責任」がある。いや、もはや「呪い」だと感じてしまいます。
それを小四郎に任せ、小四郎のいいようにやらせてきたのも政子(小池栄子)なら、今さらしゃしゃり出てきて小四郎と逆の政策を打ち出そうとするのも政子。その政策とは、新たな鎌倉殿を京から呼び寄せ、実朝が大御所となって政治を取り仕切るというものでした。これも、頼朝が晩年言ってた話じゃん。政子自らが考え出した画期的な案、というわけではありません。すべては頼朝政権の焼き直し。まぁ「頼朝さまの思いを託されて」と言えば聞こえはいいんですけれども。
なお、政子の政界進出は、「逃げてはなりません」と大江広元(栗原英雄)からけしかけられたことが契機となりました。また広元よ。こいつは時政が執権の時にも徐々に義時へシフトチェンジし、そして今回もまた政子に流れていくのかよ。まるでイナゴですわ。
ともかくこれで義時は完全に孤立しました。なるほど今回の物語は、また久々に誰も誅殺されない穏やかな物語かと思ったら、そういう地獄が描かれていたんですね。
父・時政の穏やかな最期。一転して、義時にとっては地獄
また物語のラストシーンでは、泰時が伊豆で隠居している時政の元を訪れていました。今回、唯一亡くなったキャラは時政ですけど、政治の世界から離れ、すっかり肩の荷が降りて穏やかになった好好爺としての姿が描かれていました。
妻のりく(宮沢りえ)は京へ帰ったのだと言いますが、またサツキ(磯山さやか)なんていう可愛らしい娘さんにも世話してもらってよ……完全に勝ち組じゃねぇか。
こういう穏やかなシーンが挟まれるのは、このドラマの良いところでもあるんですが。そのいいシーンを使って、また地獄を描いていくんですよね、このドラマ。何かって、気づきません?そう、「謀反人」として追放された時政がこう穏やかであればあるほど、死の最後まで政治の世界にいた義時の地獄が際立ってくるんですよ。
本当は義時だって、伊豆に帰りたかった。けれどもそれが叶えられない=最期の最期まで義時にはこの時政のような幸せを味わえないんだと思うと、愕然としてしまいます。主人公をここまで追い詰めるのか三谷幸喜……。そうやって見てみると、本当に悲劇のドラマですよこれ。
さて、次回はまた次期・鎌倉殿を巡っての一悶着ですか。頼家の忘れ形見・公暁まで帰ってきたということは……もういよいよ、いよいよですね、皆さん。皆まで言わないよ。
そして最終回まで、あと残り6話。最後まで見納めましょう……。