27 遊園地の話
22歳のころ、幼馴染と2人で
ナガシマスパーランドへ遊びに行った。
ナガシマスパーランドといえば、全長が世界一のジェットコースター。2000年辰年に開業した
【スチールドラゴン2000】である。
私は若干の高所恐怖症でこの手の絶叫系は苦手だったのだが、スチールドラゴンに乗りたいという、少し頭のネジが飛んでしまった幼馴染の付き添いで私も行くことになった。
入ってからそれなりに幾つかのアトラクションを楽しんだが、すぐに感じた。
「この遊園地、ガチだ」
今までUSJは何度も行ったことあるしディズニーシーも1回だけ行ったことがある。その中の絶叫系も勿論経験済みだが、どこかエンターテインメント性があり、子どもでも楽しめるような感覚はある。だがこのナガシマスパーランドでは、スチールドラゴン2000の前に乗る準備運動と思っていた子分的なアトラクションでさえちょっと怖かった。絶叫ガチ勢のモノホン遊園地だったのだ。
スチールドラゴンに並びだしたときは、ぶっちゃけかなりテンションが下がってこの世に存在するビビりが酷使する言葉の全てを幼馴染の前で吐き出した。幸運だったことといえば、その幼馴染が女性ではなく男だったことだ。もし女性だったら、いくら幼馴染というキャッキャウフフな関係でも失禁間近のビビりまくり22歳には幻滅され、彼女に困ったとき女の子の友達を紹介してくれなくなることは確実だった。
私は、失禁スレスレでスチールドラゴン2000へ乗り込む。次にこの席に座る人ごめん。そしてお母さん今までありがとう。と考えながら機体は頂点に。幼馴染の期待も頂点に達し、100mの高さから三重県を見渡した瞬間、一気に落下。その後のことは正直覚えていない。
メーンイベントを終えた私はズボンが山吹色に染まっていないか確認し、帰ろうとしていた。その時、急流すべりが目に留まった。「シュート・ザ・シュート」と呼ばれるそのアトラクションは見た目は少しインパクトの弱い、20人くらいがボートに乗る急流すべり。
とてもスチールドラゴンの後に乗る代物ではなかったので、乗るのは躊躇ったが、見ていると急流すべりによる水しぶきが半端でなくでかい。そういえばTwitterで桟橋に立っている人がすごい水しぶきを浴びているのを見たことがある。どうせ帰るだけだし、この水しぶきを浴びて気持ち良くなろうという結論になった。
軽い気持ちで桟橋に立つ。するとさっきまでいた群衆がそろりそろりと桟橋から離れていく。気づくと残ったのは私と幼馴染と小学生くらいの子どもが5,6人。さっきまでカップルとかたくさんいたのにと思いながらボートが坂を降りてくる。
水しぶきなんて生易しいものではない。私たちは明らかに水圧だけではない衝撃波を全身で真正面から受け、撮影していたiPhoneはもちろん、全身水浸し。水は前からしか飛んできていない筈なのに背中から裏ももまでぐっしょり濡れていた。
ボートが桟橋の下を抜けた直後
「あ、これあかんわ」という一言だけが頭の中を駆け巡り、諦めた私たちは笑うしかなかった。
その後はぐっしょぐしょのまま、横に併設されている三井アウトレットパークに入り、新しい服を買って帰ったが、店員の顔が引きつっていたのは見なかったことにした。
もしアウトレットにバスローブ専門店があれば、スチールドラゴン2000を凌駕する最高のアトラクションだった。