苦戦しているコーヒー店と、そうでないコーヒー店、突然の危機に強いのは「コーヒー豆販売」と「人」だった、という話し
そもそも今現在は「不要不急の外出は避けてくれ」と言われていますが、騒動が起こってから最近までは外出は自主的な判断に任されていました。大手はリモートワークを進め、出勤や外出を控えるなか、外食・サービス業は深刻なダメージを受けている店も多いでしょう。
そんな中、ダメージが大きい店とそうでもない店の中には、結構重要なポイントがあると感じました。仕事柄、多くのコーヒーロースターを回り、それぞれのお店の状況を目にして感じたことをお話ししたいと思います。
最初に断っておきますが、これは特にロースター、つまり自家焙煎店の場合の話しです。
店内の席を利用し、カップコーヒーやパン、ケーキなどを楽しむお客様が多い、いわゆる”繁盛喫茶店”として生計を立てている形態は、比較的ダメージが大きいように見えます。
喫茶はやっているけども、持ち帰りのコーヒー豆販売を強化し続けていた店は、昨今の買い溜め騒動で、見事、自分の店のコーヒーも買いだめ対象に入れてもらうことができ、売上をコロナ騒動以前よりも伸ばしていたりします。
「コロナ騒動が本格化 →出社できない、外出できないかも・・・ → やばい!コーヒー切れる! →いつもの店で買いだめしよう!」という考えに至ったお客様が数多く来店されたということです。
繰り返しますが、これは自家焙煎店、ロースターであった場合の話しです。
自家焙煎店の場合、商社や輸入業者から生豆を買って、自分たちで焙煎します。ここで大きなポイントは、「コーヒーの価格は生豆と焙煎豆で大きく異なる」ということです。例えばお店で焙煎豆を購入する場合、品質の良いものを買おうと思うと、皆さんは100gで800~1,200円は出さないといけません。キロ単価にすると、8,000~12,000円です。これが生豆になると、だいたいキロ単価1,500円から3,000円くらいあれば、国や地域にもよりますが、十分いいものが購入できるようになります。(もちろん目利きは必要ですよ)
念のためことわっておきますが焙煎屋さんは、焙煎機の購入コストや、焙煎作業にかかるコスト、技術者の育成および人件費などのコスト、パッキングや生豆の保管費用もあるので、このような値付けは全然ぼったくりでも何でもありません。
つまり自家焙煎店は、キロ単価1,500円から3,000円の生豆を、焙煎豆として販売することで8,000~12,000円で売ることができます。ここから、単純に粗利が大きいことがわかると思います。そう、自家焙煎の店は「生豆を仕入れる→焙煎する→そのまま焙煎豆が売れる」というサイクルにおいては、非常に粗利がいいということです。なので賢いコーヒー屋さんは、なんとか豆売りを伸ばす手段を考えます。
いやいや、カフェだって1杯10〜15gのコーヒー豆を使って、500円から下手をすれば800〜1,000円のコーヒーになるんだから、カフェのほうが儲かるじゃないか!っていう方がいるんですが、ここには粗利だけでは見えない落とし穴があります。それは、喫茶営業は、豆売りに比べてなかなか余計なコストがかかる、ということです。
繁盛喫茶店で売り上げが作られる状態をイメージしてみましょう。まず店に入って席へ案内し、お水やメニューを出し、コーヒーを挽いて抽出し、提供し、水のお代わりを注ぎに行き、御会計をして、食器を片付けて、洗い物をして、、、、です。スタッフに抽出させるたには、教育コストや技術的コストもすごくかかります、ましてやカプチーノになると、おそらく1〜2ヶ月のトレーニングでは、十分なクオリティの商品はまず作れないでしょう。(セミオートのエスプレッソマシンを自在に操れるようになるのは、私の感覚では素質があっても半年はかかります)
そもそも1杯500円で2時間滞在されれば、それ以上、その席から売り上げを伸ばすことはできません。繁盛喫茶店の売り上げは座席数の限界に縛られるので、売り上げを伸ばしたければ店舗面積や座席を広げないといけない。しかしそこを広げると固定費が増大する、、、う〜ん、難しいです。
これが豆売りだと、どうなるでしょうか。そもそもコーヒー豆挽いて粉にしなくてもいいとなると、もはや豆を店の紙袋かなんかに入れて、お客様に渡し、お金をもらうだけです。とても簡単なオペレーションです。接触も少なく、特別な抽出技術も必要ありません。面積も喫茶店ほど必要ありません。かかるコストや労力がまったく違うことがわかると思います。
自家焙煎店は、粗利のよいコーヒー豆を、豆のまま販売する「豆売り店」になっていくことが、1番コストをかけずに売り上げを上げていける方法です。
おお!それはいい!うちも豆売り店になるぞ!、、、、と簡単にはいかないのです。
今はネットでも簡単に全国のコーヒー豆が買えますし、コーヒーブームなので評判の店は山ほどあります。それに近所のスーパーに行けば驚くほど安い値段でコーヒー豆が売っています。そんな中で自分の店を1番のお気に入りにしてもらえるのか?これが豆売り店として繁盛していくための、最大にして唯一の関門だと言えるでしょう。
しかし、それでもこの問題に挑むことは価値があります。なぜなら、そんな難しい問題に長年取り組んできた豆が売れているコーヒーブランドは、私が知る限り軒並みこの騒動でも、大きく売り上げを落としていないからです。
〜人にファンが付いている〜
自家焙煎店じゃない店は、どういった傾向にあるのか。非自家焙煎コーヒー店、カフェでも1つの傾向が見てとれます。それは、サービスするバリスタやスタッフなど「人」が強い店だったか?ということです。
このバリスタやスタッフがいるから行く、このオーナーの店だから行く、などの人への依存度は、結局のところコロナであろうが信頼度が変わることがなく、むしろ応援したい!潰してはならない!と思うようでして、一時的に来店が減っても、「お気に入りの店を助けよう」というファンにより厚く支えられている傾向にあります。
〜地域密着〜
最後に、自家焙煎、非自家焙煎に限らず見られた1つの傾向に、「地域密着度」がありました。結局インバウンドや観光客需要が見込めなくなった今、頼みの綱は地元のお客様です。地元、地域の方にどれだけ愛用されていたかは、今の売り上げに結構な影響を与えているように見えます。
なので必然的に同じブランドでも比較的古い店は影響が少なく、新店舗などは影響が大きい傾向にあります。
コロナ騒動もいつかは終息します。もしその日が訪れたら安心せず、「次の混乱やリスクに備えて、どういうお店を作っていくか」を考えてください。
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