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攻殻機動隊の電脳化が現実に? ブレインマシンインターフェース技術の最前線

「攻殻機動隊」は、外部と情報通信をすることができる電子デバイスを脳に埋め込む電脳化などの技術により、脳と電子デバイスが融合した世界を描いている。

近年脳と電子デバイスをつなぐブレインマシーンインターフェース(BMI)の技術が進展しており、ニュースなどでも目にするようになった。SFで語られる電脳化は、どのようなことまで可能になりそうで、それを可能にする技術は現在どこまで進歩しているのだろうか?


脳と電子デバイスの間

脳は電子デバイスと同様電気的活動により情報を処理をしているものの、ニューロン内ではアナログ的な計算を行いつつもニューロン間で伝わる情報はデジタルで、これらを組み合わせた計算処理をしている。さらに、感覚受容器から感覚ニューロン、介在ニューロン、視床、大脳皮質などと情報が受け渡されていく過程で複雑かつ階層的な処理がなされ、1000憶にもなる神経細胞が、基本的には異なる情報を表象している。

よって、現代の神経科学はそれぞれの細胞がどのような情報を処理するか予測するレベルには達しておらず、直接脳と電子デバイスをつないで詳細な感覚や記憶の情報を書き込む・読みだすことは困難である。とはいえ、脳の情報処理には重複もあり、原始的な脳部位では同様の情報を持つ神経が固まって存在していることがあるため、被験者に思い浮かべてもらった単語を(数%の誤差がありつつも)当てるなど、情報のエンコード・デコードも部分的には可能である。

技術的には、動物では単細胞レベルの神経活動を読み書きすることが可能になってきている。ラットなどの特定の脳領域に電極を挿し、電気刺激を与えることで、行動にどのような影響があるかを調べるといった研究は古くから行われてきた。また、神経活動のレコーディングについても、脳にNeuropixelsなどの微小電極を挿してマウスに特定のタスクをさせ、その際の数千個の神経活動を単細胞レベルでレコーディングするということが行われている。All-optical approachを用いれば活動を記録した細胞から特定のものを選んで活動を操作するといったことも可能である。しかし、これらの技術は侵略度が非常に高いため、ヒトでは直接適用することは困難である。

NeuralinkとBMIの最前線

イーロンマスク率いるNeuralinkは、侵略型のブレインマシーンインターフェースの技術を開発し、サルの脳に電極を埋め込むことで脳の活動のみでピンポンゲームを操作させることを可能にしている。2024年1月には四肢麻痺患者を対象に電極を大脳皮質に埋め込んで電子デバイスと通信し、コンピューターを直接操作する臨床試験を開始している。現在は治療目的での開発だが、イーロン・マスクの目指すところは人類の知能の拡張であろう。資金の莫大さからその実現に最も近づいている組織であることも間違いなさそうだ。

BMIはヒト自身をも変えうる

一方で、脳と電子デバイスを完全な形でつなぐことができ、様々な情報・感覚刺激を脳に直接入力できたと仮定して、次は脳のワーキング・メモリーの容量が問題になる。ヒトは一度に9桁程度の数字しか記憶できないとされているように、一度に扱える情報量に限界がある。多量の情報が入ってきたとしても意識的に処理できる情報は限られているのだ。

ではワーキング・メモリーを電脳化により高速化、大容量化すればいいのではないか、と思われるかもしれない。しかし、ワーキング・メモリーが保持されているのは脳の前頭前野であり、これは人格や性格に大きくかかわる脳部位である。実際に、前頭前野に事故で鉄パイプが突き刺さってしまったフィニアス・ゲイジは、事故後に性格が大きく変わってしまったことが知られている。脳はフォン・ノイマン型のコンピューターと異なりメモリとプロセッサーなどが分離していないため、大容量化・高速化を突き詰めていくとヒト自身を変えてしまうのである。

参考文献

「攻殻機動隊」が描く電脳化の世界に近づきつつある現代、ブレインマシーンインターフェース(BMI)技術は脳と電子デバイスを部分的につなげることを可能にしているが、完全な感覚や記憶情報の操作は未だ困難である。近年ではNeuralinkのような最先端技術により、ヒトの脳で直接デバイスを操作する試みが進行中だが、脳の構造的な限界や倫理的課題も浮き彫りになっている。電脳化が進む中で、記憶容量の拡張や高速化が実現すれば、人格や意識に影響を及ぼす可能性がある点が指摘されている。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はDALL-Eにより生成

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