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一本のワインのストーリーを楽しむとは?

たまにはワインの話をしてみます。
ノートにはあまり書きませんが、私は日本ソムリエ協会認定ソムリエです。実は料理やワインの話を書くのが1番楽です、、

昨今ワインの保存技術の向上と共にどのレストランでもたくさんのグラスワインを安定的に提供できるようになった。
そんな世を見ながら、古参のソムリエの方からよく聞こえてくるのは

「一本のワインをゆっくり飲み切るからこそストーリーが分かる。」

一度のディナーで様々なグラスワインを少しづつコースに合わせてペアリングさせて楽しむのもいいが、2人や3人でワインを楽しむ場合、まず食事を通す一本のワインを決めてそれに合わせて料理をオーダーし、食事中ワインの変化を楽しみながら一本で通すことでそのワインがやっと見えてくるっと言う意見だ。

確かに、ワインは空気に触れる事で香りや味わいが変化するし、冷えている時と常温の時では全く表情が変わってくる。
初めは冷やし気味で前菜と楽しみ、香りが開き温度も落ち着いた時にメインの皿がくる流れもまた楽しい。

その昔、ワインは一度抜栓すれば劣化が早く、需要の関係もありグラスよりもボトルでオーダーするのが一般的だった。今は抜栓しなくても少量のグラス用ワインを取り出すコラヴァンという器具があるし、液体に解けない気体で液面に蓋をして抜栓後の劣化を防ぐ方法もあり、2.3週間は問題なくグラスワインのクオリティを保てる。(もちろん初期費用はかかるが)
ワインリスト内全てグラスワインとして出している店もある。

グラスワインペアリングでもボトルで通すのもどちらも僕は好きだ。
この楽しみ方の違いから皆様にお伝えしたいことは、ワインがもつ味わいのについてだ。

ワインには味わいの枠がある。大きな枠の中で様々な料理と合わせる方法を例えるなら、ピノノワールを一本飲む場合、前菜の雲丹や白子などの味わいがしっかりした魚介とも合うし、後半の豚肉、鶏肉などのタンパクな食材とも合わせられる。つまり、全く違う料理でも合わないともいえないという広い領域でワインを楽しむこと。物凄く良いわけでもないが悪くはないっという状態だ。
反対に小さな枠とはそのワインの味を細かく分析して足りない要素(あるいはよりよくなる味わい)の料理を作り出し、そのワインにとっての理想的な料理とすることだ。またはその料理にとってのベストな味わいのワインを選びぬくこと。これを一般的にマリアージュと呼んでいる。

マリアージュはフランス語で結婚だ。ピタリとハマった気が合う唯一無二の者同士というニュアンスだろう。
この小さい枠だけに囚われるとワインはどんどん小難しくて疲れる物になってしまう。
楽しみ方にルールはない。味覚は人によって好みが大きく分かれてるし、考え方も人それぞれ。なにが正解なのかを考えている間に、おおらかさを持ってその場に合わせた自分らしい楽しみ方を見つけていきたい。

実際の結婚もそうだがいつも2人は意気投合するわけではない。不一致な部分を苦しみながら、また許せるほどに楽しめなければ長く続くことはない。

一昔前と違い、ワインの輸入関税の緩和などにより良質で手頃なワインが普通のスパーにも並ぶようになっている。1,000円もだせば申し分ないクオリティのワインがごろごろあり、いつも驚いている。
レストランだけでなく家でも良いワインを気軽に楽しめる時代になり堅苦しく小さな枠を気にすることなく、気楽に大きな枠でワインを捉えて純粋に楽しむことをおすすめしたい。

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