祖母の一番古い記憶
母が引く荷車の荷台に乗せられ、足をふらふらだしながら田植え前のあぜ道を進んでいた。まだまだ桜が咲く前で肌寒むさが残る盛岡を柔らかい春風が気まぐれに通り過ぎる。
気まぐれな風が少女にはまだ少し大きめの麦わら帽をすくい上げ、ふわふわとあぜ道に咲くたんぽぽの横に置いてきぼりにしてしまった。少しづつ少しづつ離れていく麦わら帽子。ガタガタと音をたてながら昼下がりのきらめく道を荷車がゆっくり進み続ける。
その時何故だか母にそのことを伝えられなかった。何故だかは分からない。
どんどん小さく