法定遊戯(41-50)
不思議な題名だと手に取った時から、気になっていました。そして読み終えてその謎が解けても謎からの開放感を味わえずにいます。
その作品は第62回メフィスト賞を受賞し、改題された五十嵐律人氏のデビュー作です。
法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義(くがきよよし)と織本美鈴(おりもとみれい)。二人の“過去”を告発する差出人不明の手紙をきっかけに、彼らの周辺で不可解な事件が続く。清義が相談を持ち掛けたのは、
異端の天才ロースクール生・結城馨(ゆうきかおる)。真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して――?2020年7月、エンタメ界に激震をもたらす長編法廷ミステリー!
<担当編集者より>
著者の五十嵐律人さんは若き現役司法修習生です。応募作を手にしたとき、多忙であろうそんな人が、どうして小説を?と不思議でしたが、読後、あまりの面白さと新人離れした書きっぷりに、絶対にこの小説を刊行したい!と興奮しました。小説と法律、どちらに対しても確かな知識と情熱を持ち合わせた稀有な作家に、ぜひご注目ください!(Amazon内容紹介より)
著者のプロフィールを見ると1990年生まれで東北大法学部を卒業、司法試験合格となっています。
まず読者は第1部無辜(罪の意識のない、また、その人)ゲームで、今後の展開を推理させられます。
続いて、第2部の法定遊戯と題された裁判へと同害報復、無辜の制裁、再審無罪などまさに司法社会の言葉が行き交う中で真実へと向かうという物語に出来上がっています。
読み終えてみれば主人公3人の関係性や生い立ちが昨今では普通のことなのかもしれないと思いつつも、どうしても彼らの心中を思いはせることができませんでした。
それは不幸にして児童養護施設で育った清義と美鈴、司法によって父を亡くした馨、彼らの生き様があまりに奇異だったからかもしれません。
あとは書かれている言葉は読みやすいのに、私のように司法に疎い人間にとって、司法がキーワードとなっているこの物語ゆえに専門用語を注視しつつ読み進めなければならなかったことも大変だと感じた原因かもしれません。
司法というのが人の一生を簡単に変えてしまう恐ろしいものと、著者の文章の端々から感じることができたと思います。
まとまりのない感想になりました。すでに著者は次回作を予定しているようです。著者の作品をもう1冊は読んでみたいと思います。
昨夜はかなり涼しくなって、このまま秋へ向かうのかと思うほどでしたが、まだ今日も真夏日でした。
涼しさを感じると暑さの疲れが出てくるように思います。皆さま、どうかお気をつけて。
今日のバックミュージックはこちらでした。
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