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アルペジオの山

部屋の北側の窓からは
田んぼにポツポツと家が立ち
その先に山々が見えるのどかな風景

その中に特に目立った山が一つ
小学校の遠足でも登った山だ
綺麗な三角形はまるで
ピアノの楽譜にあるアルペジオのように見えた

小さな頃に親に買ってもらった双眼鏡で覗くのも
初めて出来た彼女と長電話する時も
大人ぶってタバコを吸ってみた時も
この部屋から出る時に名残惜しむ時も

アルペジオの山の景色を見ていた

自分はどんどん変わっていくのに
その景色は季節によって色味が変わるくらいで
ずっと大きくそのままだ

たまに帰省してかつての自分の部屋に入った時も
喪服を着て一人きりになりたかった時も

私はこの景色の中のアルペジオの山を見ていた

変わってしまう人生がもどかしいから
変わらない景色を求めているのかもしれない

アルペジオの山は今日もずっと大きくそのままだ

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