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流刑囚の映画百物語~第83回『鉄男』(’89日)


私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。今夜ご紹介するのは『鉄男』。


本作の5点満点評価は…

コンセプト…3点
カメラワーク…2.5点
ビジュアル…3.5点
脚本…2.5点

総合評価…2.9点


『鉄男』、もう15年くらい前だろうか、何かの機会で一回見たことがあったのだが、音声がうるさすぎて途中で見るのを断念したのであった。というわけで今回の視聴はある意味2度目であり再挑戦でもある。

関係ないが『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』という作品もタイトルに違わずうるさすぎて最後まで見れなかった。

本作で音楽を担当しているのはZEITLICH VERGELTER、Der Eisenrostなどでも活動していた石川忠。本作をはじめとして長らく塚本晋也作品を担当していたが2017年に逝去している。

では行きましょう。(シャキーン

まずオープニングで「普通サイズの怪人シリーズ」と出てくるのは東宝の変身人間シリーズを意識してのことなのか。それとも東宝や円谷プロなどに登場する巨大怪獣との対比なのだろうか。

主演は田口トモロヲ、彼がこれより10年後、メタルヒーローが跋扈し『ブレードランナー』や『ブラック・レイン』などのイメージの源泉ともなった80年代までの「金属国家日本」を回顧する『プロジェクトX~挑戦者たち~』のナレーションを務めるのはなんというか皮肉ではある。

さて冒頭、自分の脚を裂き、その傷口にボルトを挿入する。そこに蛆が湧いて慌てる。そりゃそうなるだろう。

本作と同じく80年代の末に作られた自主制作映画として『追悼のざわめき』などについても同じことが言えるのだが、現代的な目で見るとどうも「作り」がわざとらしすぎ、露悪的すぎ、形式的すぎるように見えてしまうのだ。それは特撮や特殊メイク等の技術の問題ではない。当時としてはアングラでありショッキングであり革新的だったのだろうが、やはり時の流れというのはそれすらも陳腐化させてしまうということだろう。

つい先日もさえぼうこと北村紗衣が『ダーティハリー』を腐して炎上していたが、時とともに陳腐化してしまう表現もあればなかなかに「腐食」の遅い表現もあり、さらに陳腐化した後一周回って再び新鮮に受け止められる表現というものもある、ということなのだ。

この作品も1920年代に作られた『狂った一頁』と同じように制作当時の世相や文化を象徴する史料的価値はあるのだろうが、一本の映画として見た場合「特撮や特殊メイクが(モノクロだということを差し引いても)凄い」という程度の評価に落ち着いていくのではないか。

これは筆者自身が塚本晋也という映画作家をあまりに好きになれないことからくる過小評価なのかもしれないが。ただまあ当時としてはインパクトがあったんだろうな、とは思う。

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