流刑囚

元ライター、映画評論家 https://twitter.com/kyotoanda

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【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

第一部 帝国の分裂第八章 邪悪なる前奏曲 ③ 大内裏を出たパルムスの面持ちは明るくはなかった。 たとえ演技とはいえ、彼のこれまでの行動は「無能」の烙印を押されても仕方のないものであった。 彼はもはや宮廷に仕える身ではなくなった。ただ故郷でもあるオリファルオンには先帝ファルムスより賜った土地もあり、奴隷たちもいるはずだ。そこで本格的に農園でも始めてみるのもよいかもしれない。もしフェリオやウェド・カークたちの手によってエリチャルドスが倒され、フェリオの息子が皇帝の座に着く

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    • 【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

      第一部 帝国の分裂第八章 邪悪なる前奏曲 ③ その日、パルムスは皇帝エリチャルドスによって玉座の前に跪かされていた。 「パルムスよ、なぜお前がここに呼ばれているか、承知しているか」 「は、はあ……」 「我が兄グレイムス、先帝リヴィアタイザーの暗殺、財務卿ウェド・カークの出奔、愚弟にして謀反人ガルフリードによる宮殿内での放火、帝都破壊……いずれもお前の目の前で起きたことだ。違うか?」 「仰せの通りでございます……」 「お前はその時、何をしていたのだ?ただ事の成り行

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        第一部 帝国の分裂第八章 邪悪なる前奏曲 ② ――帝都アレニア。 「おぬし、フェリオ様を、フェリオ様を見かけなかったか?」 宮殿の中を、ターメスはフェリオを探しうろつき回っていた。 「フェリオ様?であらせられましては神殿で祈祷をしておられるとか」 「何ですと!臨月の体で祈祷とな!?そんなことをすれば、ご自身は元より、お腹のお子様にも何があるかわからぬ!」 ターメスは急ぎ神殿へと向かった。 アレニアの宮殿はこの神殿を囲むように建築物が配置されていた。皇帝の住まう

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          第一部 帝国の分裂第八章 邪悪なる前奏曲 ① ガルフリード一行が、アクレアスト大陸東部のやや内陸にある広大な森林地帯「帰らずの森」を抜けたのはおよそ1週間後であった。 森は帝都アレニアとウェリス王国との国境としても機能しており、森を抜けるということは無事に本拠地に帰国ができたということでもある。 一行が王都オルドに入ったのは翌日深夜のことであった。国王が、自らの主であるアレニア帝国および皇帝エリチャルドスに、半ば宣戦布告するような形で帰還する。この事実にオルドの者たち

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          第一部 帝国の分裂第七章 最終決戦 / 闇からの招待 ⑤ 「アリシャ様、レムロスです。お呼びでしょうか」 「お入りなさい、レムロス」 「レムロス!」 ワタシは裸になりレムロスに抱きついた。ワタシたちは熱く抱擁と接吻を重ねると、そのままベッドに雪崩込む。 ――その時。 「何者!」 レムロスは咄嗟に懐のナイフを部屋のカーテンに向かって投擲した。 ナイフは不自然なまでに軌道を逸らすと、側面の壁に突き刺さった。 「これはこれは物騒ですな。私は呼ばれたからやって来た

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          第一部 帝国の分裂第七章 最終決戦 / 闇からの招待 ④ 「冥界におわします五正神よ、我ら物質界の卑しき者どもに、どうかご慈悲をお与えください…」 アタシは跪いて祈りを捧げた。そうするしかなかったのだ。 そして、それと同時に、パパの言葉がアタシの頭の中を反芻していた。 (ワタシが、神殿の巫女に……) その時、天空城の方角から、凄まじい爆発音と爆風がワタシたちを襲った。 「キャアッ!」 「空を見よ!」 「て、天空城が…天空城が見えるぞ!」 「いや待て、ゆっくりと

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          第一部 帝国の分裂第七章 最終決戦 / 闇からの招待 ③ 2日後の朝。それは異様に赤い朝焼けだった。 大臣から下男下女まで、宮殿のすべての人々は庭やバルコニーからその真っ赤な空を眺めていた。 「…始まったな…」 「まさか…」 「孵化したのか…?天空龍が…」 「馬鹿な!100年はかかると聞いたぞ!」 「レイガルの剣…ついに抜いたのか……?」 「奇跡を起こすというあの剣を……」 「それ以外にどう説明するというのだ……」 「ゴゥァァァァァァ!!!ヴォェア!ギャァァァ

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          第一部 帝国の分裂第七章 最終決戦 / 闇からの招待 ② 「フェリオ様は…フェリオ様は神殿の巫女として勇者たちの戦いを見届け、必勝を祈願すると……」 「何?つまり天空城に……フェリオめ、この期に及んで巫女としての役目を全うすると言い出すとは……ゲフッ!ゲフッ!」 「大丈夫ですか、陛下。ここのところ咳をなさることが多いような……」 身を案じ、駆け寄ってくる宦官たちをパパは静止した。 「心配するな。大したことはない…季節の変わり目に体調を崩しただけじゃ……フェリオよ、

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          流刑囚の映画百物語~番外編『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(’24日)

          私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。今夜ご紹介するのは『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。 本作の5点満点評価は… コンセプト…2.5点 カメラワーク…3点 ビジュアル…3点 脚本…2.5点 総合評価…2.8点 所謂「ゆとり世代」にとってのガンダムシリーズ代表作と言ったらこれになるんだろうか。兎にも角にも20年ぶりのアニメ続編、劇場版である。 劇場版の製作自体はほぼTVシリーズと並行して発表されていたような記憶がある。しかし製作サイドの諸事情

          流刑囚の映画百物語~番外編『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(’24日)

          【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

          第一部 帝国の分裂第七章 最終決戦 / 闇からの招待 ① ワタシとレムロスの再会から、早一年が経とうとしていた。その間、帝都アレニアは三度魔王軍の攻撃を受け、レムロスたち四天王はそれを三度退けた。それでも、攻撃を受けるたびに都は荒廃していった。 魔王軍との戦いでワタシが一番困ったのは、大陸各地からの食料の供給が滞るようになったということだ。これまで帝都には陸路、海路で毎日のようにたくさんの物資が供給されていた。魔王軍の出現により、それらは壊滅的なダメージを受けたのだ。

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          第一部 帝国の分裂第六章 勇者の弟 ⑧ 「ボク?ボクはね…魔王軍七悪賢の一人、不死身のチェルから生まれたチェルジュニア!」 「しちあくけん?ふじみのちぇる?それは、一体?」 「逃げるのだアリシャ!そいつはゾグラフ魔王軍の大幹部の一人、魔族のチェルから生まれたクローンなのだ!今のゾグラフは世界中の魔族や魔獣を蘇らせ、魔王軍として自らに従わせているのだ!」 「え?え?」 「とにかく逃げるのだ!クソッ、肝心な時に豆の種がない!これじゃ戦えないのだ!」 「逃げられないよ

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          第一部 帝国の分裂第六章 勇者の弟 ⑦ 帝都アレニアは、ワタシが生まれ育ったオリファルオンの都よりさらに大きな世界都市だった。港には毎日のように大きな帆を掲げた貿易船が来航し、城外の広大な宿場町はグラスランナーの商隊によって賑わっていた。 あれ以来、ゾグラフはまるで最初から存在しなかったかのようにひっそりと姿を潜めていた。それを見計らい、父であるファルムスは帝都到着後、正式に皇帝(正帝)に就任し、自らの権力の基盤を固めていった。 アクレアスト大陸東部、すなわちアレニア

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          第一部 帝国の分裂第六章 勇者の弟 ⑥ 「なあ知ってるか?ヒルメスのやつ、皇帝直々の命で捕まったんだとさ」 「知ってるさ。アレニアまでわざわざ護送するんだろ?なんですぐ処刑しちまわねえんだろ」 「皇女様を誑かしたとあっちゃ大罪人だぜ。普通ならすぐ八つ裂きだろうになあ」 ――― パパは何故、ヒルメスをすぐに殺さなかったのだろうか?今思えば、その処刑を躊躇わせるなにかが、ヒルメスにはあったのかもしれない。確かにヒルメスの剣の腕は既に都では知られるところだった、だが、それ以上

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          第一部 帝国の分裂第六章 勇者の弟 ⑤ 皇帝の間を、しばし静寂が包みこんだ。 それを破ったのはお姉様の笑い声であった。 「ホ、ホ、ホホホホホ、これは面白いですわ!スパイを使ってゾグラフを殺し、そしてその功労者を皇帝直々に出迎えると見せかけてまた殺し、その宝具まで奪おうというのですか!」 「素晴らしい!私、是非後学のためにもその現場に立ち会いとうございます!ターメス!今すぐ荷物をまとめ出発の準備を!従者がいないというのであれば私一人でも参りますわ!」 「勝手にしろ!」

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          流刑囚の映画百物語~第85回『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(’24米、英)

          私流刑囚がその時々で見た映画を紹介するコーナー。今夜ご紹介するのは『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。 本作の5点満点評価は… コンセプト…4点 カメラワーク…4.5点 ビジュアル…4.5点 脚本…5点 総合評価…4.5点 「映画」である。 思えば自分が一番最初に映画を一本通して鑑賞したのは、ビデオで観た『ゴジラVSキングギドラ』であった。それ以来、自分の中で「映画らしさ」とは端的に言って「大量のエキストラ、名前も呼ばれぬモブ」であり「ロングショット」なのである。

          流刑囚の映画百物語~第85回『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(’24米、英)

          【異世界軍記物語】総括のコンジェルトン

          第一部 帝国の分裂第六章 勇者の弟 ④ 「夢?」 「その夢に、自然と生命の神マーヴァが出てきたのだ」 「マーヴァ様が!?一体どんなお姿をしていたの?」 「それはゾグラフにしかわからないのだ。マーヴァはゾグラフにあるお告げをしたとされているのだ。そしてゾグラフはそれに従い、次の日の夜中、こっそりテントを抜け出したのだ」 ずんだもんは話を続けた。 「それから10日ほど、砂漠を彷徨い続けたのだ。食べ物も水も底を尽き、ゾグラフの命も尽きようとしていた。そんな時、彼はオア

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