
ベルフラワー
事を急(せ)くのは、君の悪い癖
油断と隙(すき)しか残っていなくて、
恐怖すら切り離しているくせに
いつまでも凪だと思っているの?
蒙(くら)い波に呑まれて
うねりが生きがいだった
突堤の小舟は、必ず離れていく
近付くフリをして、また離れる
だからいっそ蒙さに呑まれた方が楽だった
陽が上(のぼ)っても、ここには届かない
期待しない事が、君の盾のはず
でも油断と隙を埋める灯りで
いつの間にか盾は要らなくなった
凪だと思った場所は草原で
ふと気づくと足元には、
桔梗の花が凛と咲いていた
もう上陸(あが)ってもいいのかな
引かれた腕がまだ痛い
うねりの底から見あげなくても
ここで見守っていていいのかな
突堤の小舟は、流され消えて見えない
だからいっそもうここに、
拠点(いえ)を作ろ啓(ひら)くために
小さく細くても、灯りはもう消えない
もう上陸(あが)ってもいいのかな
引かれた腕がまだ痛い
うねりの底から見あげなくても
ここで見守っていていいのかな