夜が明けていくとき…に立ち会う
「夜明けのすべて」 瀬尾まいこ を読んで
言葉のやりとりのひとつひとつに破顔してしまう本。瀬尾まいこ氏の本はこれで二冊目なり。
以前「強運の持ち主」を読んだ後に書いた記事はこちら↓
前作はぶらっと立ち寄った本屋で思わず買ってしまった本。
今回はAudibleでの耳読で、くすっと笑っている自分。
パニック障害で大企業を辞め、恋人と別れ、なにもかも諦めている山添くん。
PMS(月経前症候群)で普段はおとなしいのに急にイライラを爆発させ、言葉の暴力を止められない藤沢さん。
心と身体に爆弾を抱えていると感じているふたりは普通に生活することだけを望んでいる。
それぞれが語る段落でできていて、なんとなく大昔読んだ「冷静と情熱の間」を思い出す。全然中身は違うけど。
とにかくお互いに「別に好きじゃない、どちらかといえば苦手」なふたりの距離が相手を気遣うことから縮まっていく様子が面白い。
男と女じゃないから、好きでも嫌いでもないから、だから気が楽で何も考えずに、素でいられるのかも、と分析は進む。
なにかに怖気づいているふたりの素直な心のぶつかり合いが笑いを生み出す。関わるふたりにも、読んでいるこちらにも。
例えばこんなやりとり。ちょっと長い下りを引用しちゃいます。
自分に素直に言葉を発している。もう思ったままを言葉にしている。
その上でPMSとパニック発作を飄々と引き合いに出して会話してしまうふたり。
まったく好きじゃないと言いながら、他の人には見せられない姿も心もどんどんさらけ出していく。こうした場面が多々あって、ほっこりして本当に破顔してばかりの数時間でした。
じわじわと幸せを運んできてくれる本。
「夜明けのすべて」という題名にもあっぱれ!明けない夜はないんだわ。
瀬尾まいこワールドにやられっぱなしですわ、わたし。