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食のインフラを影で支える黒子集団〜卸売会社の役割りについて①〜

<生産を活かすも殺すも流通次第!>
 今回のnoteでは一般的にはほとんど知られていない"卸売会社(おろしうりがいしゃ)"とそこで働く人たちについてお伝えします。

 ”食”や”農”が語られる際に、まずみなさんの頭に浮かぶのが”生産者さん(農家さん)”の存在だと思います。私たちの食をつくってくれているのは生産者さんであり、生産者さんのおかげで食べ物を口にできているというのはまがいのない事実です。

 一方で、そうした生産者さんたちが作ってくれた農産物をみなさんが食卓や飲食店で食べるためには、流通というプロセスが非常に重要になります。

 特に農産物は、消費地である都市部からは離れた地方で作られていることが多く、産地である地方から消費地である都市まで、いかに素早く、低コストで農産物を移動させられるかが重要となります。

 また、輸送効率の関係から産地(地方)で大きくまとめて出荷・輸送された荷物(農産物)については、消費地にてバイヤーや消費者など農産物をほしがる事業者や消費者へ荷物を適切に振り分けていく作業が必要となります。これを分荷(ぶんか)と呼びます。

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 さらに、天候など自然の影響を大きく受ける農業において、農産物の需給バランスは日々変化する上、工業製品とは異なり、一つ一つの商品が一様ではない(大きさや品質が異なる)という特徴が農産物にはあるため、分荷と合わせて、値付けといった複雑且つ非常に細かい取引が必要となってきます。

 これらに加えて、農産物は鮮度という時間的な制約条件が存在しており、上記を最短且つ効率的に行なっていかなければなりません。また、土日だからといって食事をしないという人はいないように、農産物の流通には休みがありません(常に稼働し続けています)。

 すなわち、生産者さんが丹精込めて生産してくれた農産物を活かすも殺すも"流通次第"といえます。

 実際に、適切に消費者と結び付けられなかった農産物が産地で大量に廃棄されたり、消費地にて生産コストを下回るような価格で売買されてしまうことも珍しくはありません。

 こうした非常に繊細且つ複雑な食の流通の大部分を24時間、365日支えているのが卸売会社という存在であり、そこで働く人々なのです。

 今回は一般の人がふつうに生活していたらほとんどその存在に気づくことがない一方で、ほとんどの人が日々お世話になっている"卸売会社"についてお伝えしていきます。

<農産物の価格を決めている卸売会社>
 これまでに書いたnoteの中でもちょくちょく触れてきましたが、改めて、まずは卸売会社という存在について説明していきます。

まずは下記の国内における青果流通の図をご覧ください。

流通

 国産青果物の流通の8割を占める市場流通において、産地で生産された農産物は、産地の農協や商社、卸売市場を経由して、消費者へと届けられます(経路の詳細については、以前書いた「市場流通と産直流通どちらが良いのか!?」を読んでみてください)。

 上記の中で卸売市場(俗に言う市場)と呼ばれる場所が中央市場(比較的大きな都市に存在)と地方市場合わせて1,000ヶ所くらい存在しています。東京では、国内最大の卸売市場である大田市場(大田区)や築地から移転した豊洲市場(江東区)など青果でいうと都内23区に8ヶ所、23区外を含めると14の市場があります。

 そうした市場の中には、卸売会社と呼ばれる事業者が1〜2社(大田市場は3社)存在しており、市場に持ち込まれる農産物については、一旦この卸売会社がすべて受け取ることになっています。

 そうして(通常午後から夜にかけて)市場へ入荷した農産物は翌日の朝に卸売会社によって、需要家である仲卸会社や売買参加者などの買参人へ販売されます。

 ちなみにですが、上記で市場に荷物が持ち込まれる際に、"仕入れる"ではなく、"受け取る"と書いたのは、市場流通の約6割が"委託販売"という形を取っているためです。

 卸売会社は産地や生産者から農産物を買い取って、需要家へ販売をしているわけではなく、販売委託という形で産地や生産者から農産物を預かり、彼らの代わりに需要家へ販売を行うという形をとります。

 そのため、卸売会社は産地や農家さんの販売窓口として、農産物の値段や売り先を彼らに代行して決めているとも言えます(尚、卸売会社の利益は委託販売手数料という形で販売金額において一定の割合が定められています)

 卸売会社の担っている役割(機能)としては、教科書的にいうと下記のような大きく5つの機能があげられます。

○ 集荷機能(荷物を生産者や出荷団体から集める)
○ 分荷機能(集めた荷物を需要家へ振り分けていく)
○ 価格形成機能(日々需給が変動し、多種多様な商品に値段をつけていく)
○ 決済機能(出荷元への支払い、需要家からの代金回収を確実におこなう)
○ 情報機能(出荷者に対しては需要側の情報を、需要家に対しては出荷側の情報を伝えていく)

 わかりやすいようにざっくりとまとめると、"産地(農家)"から必要な量の荷物を集め、"消費地"にて集めた荷物を需要家へ適切に配分・販売していく(そのプロセスで発生する決済や情報収集の役割も担っています)という役割を卸売会社は担っています。

取引図1

流通2

 青果流通における卸売会社の役割と重要性を理解頂けたかと思うのですが、天候などの外的要因に大きく左右され、数百種類以上にものぼる青果物(それぞれの規格の種類や産地も含めるととんでもない数になります)の需給を日々適切にマッチングさせ、最適な相場形成(値付け)を担う卸売会社の人々の仕事は、一言でいうと"肉体的にも精神的にもすごくハードな仕事"だと思っています。

 例えて言うなら、相場と日々対峙しながら株式を売買する証券マンの精神的な負担をイメージしてもらった後に、売買する株式を品質がすぐに劣化し且つ365日24時間、ものが動き続けている野菜や果物に置き換えてもらう感じです。

 次回のnoteではそんな青果流通を支える卸売会社の仕事とそこで働く人々についてお伝えしたいと思います。

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