学ぶことの意味
小林秀雄の「本居宣長」を読んでて、はっと気づいたことがあるので、書き記しておく。
先日、「動物性と人間性」という雑記で、人間の究極の目的は、「人間性を高めていくこと」と記載したけれど、人間性を高めていくには?ということで、水戸光圀公の掲げる「彰往考来」が重要だと自分は考えていて、とにかく現代の書籍ではなく、昔の人の書籍、考えを自分にインプットするようにしている。
「彰往考来」とは、古きを知ることで、未来を考える。温故知新のようなものだ。この彰往考来の元になっているのは、彰往察来で、中国のタオのルーツともなる、易経に記載されている四字熟語である。
水戸藩は、正しい日本の歴史をまとめることが日本の未来のために必要だと考え、200年ものあいだ水戸藩の予算を年間1/3程使って正しい尊皇の歴史である大日本史を編纂した。
この大日本史や、歴史に対しての姿勢、そういった思想の元となった水戸学に明治天皇は影響を受け、教育勅語を発表したのである。
この教育勅語が、明治から世界第二次大戦の敗戦までの日本の教育の根底にある思想であるため、敗戦後のGHQが介入したあとの個人主義・自由主義的な教育・政治しか受けていない自分とかが、日本古来の価値観・考え・美意識等を魂の中から発掘するには、順にさかのぼっていくしかないと考えている。
もっと前のルーツを知るためには、古事記や万葉集、そして平安時代含め、古来の日本は中国に強く影響を受けている、というか中国の文化がそのまま日本に輸入されているため、
四書五経である、『論語』『大学』『中庸』『孟子』、『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』を素読し、魂に転写し刺激をいれることが重要だと思っている。
古事記を深く知るには、古事記伝を読むべきなのだけれど、それを書いた本居宣長の人となりを知る必要があるなと思って、小林秀雄の本居宣長を読んでいるのが今である。
もう一つ自分の中に今あるのは、吉田松陰の教育である。
吉田松陰は松下村塾で実質2年程度しか教えていない(安政の大獄で殺された)にも関わらず、幕末の日本を改革した人物を多く輩出している。
ここに学びがあると思っていて、吉田松陰そのものや、松下村塾での教育方法みたいなのを調べてるのだけれど、ここでずっと自分の中にあった問いが、「学びとはなんなのだろう?」ということだった。
学びとは、真似ぶであり、知識として識り、真似して、体験することで学ぶのだけれど、教育において、教える側、気づかせる側が、相手の個性を尊重することなく、自らの思想を反映させてしまった知識を伝えてしまってはいけないと感じている。ということは、なにかを人に伝える、教えるときに、
自らの立場を明確にすること、また、学ぶことの目的をもっと普遍な部分に柱を据えることをやる必要があると思っていた。
そんなときに、小林秀雄の本居宣長の本で書かれた一節がぼくの魂に、直接呼びかけてきたのだった。
それは、更に、「あしわけ小舟」の中の引用なのだけれど、(カタカナ表記とかはめんどくさいので、適当に)
「問、和歌は吾邦の大道也と云事いかが、答、非なり。大道と云は、儒は聖人の道を以て大道とし、釈氏は仏道を大道とし、老荘は道徳自然にしたがうを大道とし、それぞれに、我が道を以て大道とす、吾邦の大道と云時は、自然の神道あり、これ也、自然の神道は、天地開闢神代よりある所の道なり、今の世に、神道者など云ものの所謂神道は、これにこと也、さて和歌は、鬱情をはらし、思いをのべ、四時のありさまを形容するの大道と云時はよし、我国の大道とは言われじ、儒は、身を修め、家をととのへ、国天下をおさむるの大道也、仏は迷いをとき、悟りをひらき、凡夫をはなれ、成仏するの大道也、かくのごとく心得る時は皆それぞれに大道なりとしるべし」
※小林秀雄 「本居宣長(上)」 新潮文庫 p135~136より引用
という一節だった。
自分の理解としては、それぞれに大道があり、一つの大道があるわけではない。つまり、そういった古書から知識を得て、自らの大道を見つけ、確固たるもののして、定めていくことが学びなのではないか?と今は考えている。
つまり、なんで知識を得るか?教育を受けるか?それは、自らの宿命ともいえる大道を確固たるものとして、歩んでいくために必要なのだと思う。
そういった考えに立つと、やはり、それぞれの宿命、個性は違うのだから、知識の得る方法も、それを魂にいれることで起きる反応も、受け取り方も違うのだろう。それに意識的になった上で、教えるということも、学ぶということもしていく必要があると思っている。
なんだか、現代は、「結果」を手に入れるための技術としての情報(知識ではないと自分は思う)ばかりに目がいくけれど、きっと、学ぶというのは、自らの大道を定め、歩むために必要な知識を入れ、実践し、体験し身につけることなのだろうな。
本日も読んでくださりありがとうございました。感謝します。
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