変形性膝関節症による痛みのメカニズム
こんにちは!
整体師/パーソナルトレーナーの牛窪逸人です!
今回は「変形性膝関節症による痛みのメカニズム」について解説します。
「侵害受容性疼痛」
「神経障害性疼痛」
「侵害可逆性疼痛、感作」
の3つに分けて解説してみます。
侵害受容性疼痛
侵害受容性疼痛(nociceptive pain)は、組織の損傷や炎症から生じる痛みの形態であり、変形性膝関節症の痛みメカニズムにおいても重要な要素です。以下にその具体的な概念を説明します。
侵害受容性疼痛は、組織損傷や炎症により生じる化学物質(例えば、プロスタグランジン、ブラジキニン、セロトニン、成長因子、サイトカインなど)が、特殊な感覚神経末梢である侵害受容器(nociceptors)を刺激することで発生します。
膝関節では、侵害受容器が関節包、靭帯、骨膜、軟骨下骨に分布しています。変形性膝関節症においては、関節軟骨の破壊に伴い骨が露出し、また炎症反応によりこれらの侵害受容器が刺激され、脳への痛みの信号が増加します。その結果、患者は痛みを感じます。
また、変形性膝関節症の進行に伴い、炎症と痛みの連鎖反応が生じ、侵害受容器の感受性が高まる「感作」現象が起こることがあります。これにより、同じ刺激に対してより強く反応し、痛みが慢性化することがあります。
したがって、変形性膝関節症の治療においては、侵害受容性疼痛のメカニズムを理解し、それに対する対策(例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や物理療法など)を適切に組み合わせることが重要となります。
神経障害性疼痛
神経障害性疼痛(neuropathic pain)は、末梢神経、脊髄、または脳内の神経経路に損傷が生じた場合に発生する特殊な疼痛形態です。このタイプの痛みは、神経系が正常に機能していないときに起こるため、しばしば非常に強い、そして慢性的な痛みとなります。
神経障害性疼痛は、通常、神経が物理的に損傷された場合、例えば手術、外傷、あるいは病気(例えば、糖尿病や帯状疱疹)によって神経が傷ついた場合に発生します。
これらの損傷は、神経の信号伝達を乱し、一部の神経が過敏になったり、正常な刺激を痛みとして解釈したりすることがあります。変形性膝関節症においても、痛みの一部は神経障害性疼痛に起因する可能性があります。
病状が進行すると、関節周辺の神経が炎症や圧迫により傷つくことがあります。これが神経の過敏性を引き起こし、膝に対する正常な刺激(例えば、立ち上がる、座るなど)が痛みとして感じられるようになることがあります。
神経障害性疼痛は、他のタイプの痛みと比べて治療が難しいことがあります。NSAIDsや鎮痛剤が必ずしも効果的でない場合があり、代わりに抗てんかん薬や抗うつ薬が用いられることがあります。これらの薬は神経の痛み信号の伝達を調節し、痛みを軽減することができます。
侵害可逆性疼痛・感作
疼痛の閾値が低下する現象を指します。
これは特定の組織の損傷や炎症が長期化した結果、痛みの感知システムが過敏になる状態です。この状態では、通常は痛みを感じないような軽度の刺激でも痛みを感じたり、通常の痛みよりも強く痛みを感じることがあります。
この感作現象は、二つのレベルで発生することが知られています。
末梢感作と中枢感作です。
(1)末梢感作:これは、疼痛受容神経終末(nociceptors)が損傷組織から放出される化学物質によって活性化され、その結果として過敏になる現象です。これらの化学物質(例えばプロスタグランジンやブラジキニンなど)は、神経終末の反応性を増大させ、より低い刺激で活性化されるようになります。
(2)中枢感作:これは、長期の痛みの存在下で脊髄や脳内の疼痛伝達路が変化し、より強く疼痛信号を伝えるようになる現象です。これにより、痛みが長期化し、治療が難しくなることがあります。
変形性膝関節症においても、これらの感作現象が起こりうることが知られています。
関節の慢性的な炎症や損傷は、末梢感作を引き起こす可能性があります。また、長期間にわたる痛みの存在は、中枢神経系の変化を引き起こし、中枢感作を誘発する可能性があります。これらの現象は、痛みの慢性化や治療の困難さを引き起こす要因となります。
変形性膝関節症は圧倒的に日本人に多いと言われている病気です。なので、対応することも多いと思います。セラピストやトレーナーもしっかりと内容を理解しておくことが必要です。
この機会にぜひ!