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【書評】私は障害者向けのデリヘル嬢

以前,NHKのバリアフリーバラエティ「バリバラ」で,障がい者と性というテーマで話している会があり,そのときなんとなくamazonで調べてみて買ってみた一冊.

20代女性の障がい者向けのデリヘル嬢をしていた時の仕事とその時の赤裸々な感情が書かれていて,面白くて一気読みしてしましました.

今回はその中の自分が活かせそうだなと思った箇所を備忘録がてら書いていこうと思います.

ビジネスチャンスは転がっている

pp.70 ラブホテルのエレベーターだから,もともと広く設計しようなどと考えていないのかもしれないが,こういうところにもっと気を遣えば,車椅子の人の利用も増えるに違いない.バリアフリーのラブホテルって,国内にどれくらいあるのだろうか?漠然とそんなことを考えた.

介護は力仕事

pp.78 車椅子から,ベッドに移動させるために,彼女はゴロゴロと不思議な器械を運んで来た.大きな椅子のようなもので上からベルトが吊るされている.「これを使っている人はあまりいないらしいんだけど,うちは女手なんでね」

性欲は最大のリハビリになる

pp.94 しかし,そんな東田さんに徐々に変化が見られたことも付け加えておく.本人も,「これが一番のリハビリになるんだよね」というように,回を重ねるごとに,少しずつだが体が動くようになっていったのだ.最初のころ,ほとんど動かなかった右手が私の胸を触るために動くようになってきたし,服の着脱のときも,おしりを浮かせたり,寝返りを打たせるときに,今まで私の力だけだったのが,本人の意思と力も加わって,横に向けるのが少し楽になったり.
食欲,睡眠欲と同じように性欲は,人間の三大欲求のひとつなのだとあらためて実感した.性欲が刺激され,解消されれば,何かが変わっていくのかもしれない.

恋愛も結婚も諦めた

pp.102 「でもねえ.やっぱり僕らは恋愛とか結婚も無理だなあ,ってどこかで思っちゃうのよ」

オムツに悩まされる

pp.121 私はそれまで出会ったお客様に対して,哀れむように「かわいそう」と思ったことはなかった.しかし,こんなオムツで自宅から出て来た里見さんを,そのとき心底かわいそうだと思った.オムツだって,今はだいぶ性能もよく,進化しているだろう.だから,一度くらいの排泄では,ここまで漏れて濡れることはあるまい.そうなったとしても,身の周りに頼める人がいれば,すぐに好感してもらえるはずだ.しかし,里見さんにはそういう人がいないのかもしれない.ヘルパーさんが来る時間まで,いつもこんな状態を我慢しているのだろうか.

制度を作るということが人を分ける?

pp.130 「世界には宗教と民族があるから,争いがなくならないんですよ.そのふたつがなければ,みんな,もう少し仲良くできると思う.宗教も信じるのは自由だから否定派しない.民族でほとんどの国が分かれているのだから,それも仕方ないことだと思う.だが,そもそも国という単位,区別があるから戦争になるんじゃないでしょうか」
健常者と障害者も同じです.こういった障害者専用のデリバリーというシステムを作ることは否定しない.だけど,作らないといけない現実がある.作らないといけない,というのは差別があるから.差別や偏見がなかったら,ふつうの風俗にも入れるし,自由に恋愛や女性に接することもできる.本当に良い状態というのは,このようなシステムを作る必要がない社会ではないでしょうか
pp.132 障がい者の性を考えるとき,もっといえば差別とはなにかを考えるとき,当事者である彼ら自身の考えには,健常者である人間は遠く及ばないのかもしれない.林さんの言葉は,深く鋭く私の心に刻み込まれた.一般的に健常者とくくられている私たちは,そこまで深くいろいろな物事を考えているだろうか.
pp.132 身近に障害を持った人がいなければ,考えるきっかけにすら出会えないのかもしれない.だけど,とても大切な問題.周囲にいないからといって,関係ないわけがあない.誰しも,見過ごしていい問題ではないはずだ.だが,現実はどうだろう.林さんがいっているように,静的な欲求を満たしたいと告げた場合,家族やヘルパーの人たちは,動揺せずそれにきちんと答えてあげられるだろうか.いろいろな方法でその欲求を満たしたり,解消させようと努力してくれるだろうか.
いや,大半の人は戸惑うだろうし,ときには「そんなこといったら駄目ですよ」と諭したりするかもしれない.贅沢だ,という人もいるだろう.事実,このサービスの利用者のほとんどは,家族に内緒である.東田さんのように家族に公認されている課程はごく稀だと思う.それでなくても親子間や家族観で,性的な話を基本的にはタブーとしてきたのが,この国の文化だったりする.確かに,もう少し一般に家庭での性の話題がオープンになれば,障碍者の問題だって,もっと話し合う機会が出てくるのではないだろうか.そうすればここまで障害者の性というものが特別視されるされないだろうし,こんなにも隠れながら,デリヘルを利用する,ということも減ってくるのではないだろうか.

屋外デート

pp.171 後日,目黒さんとは実験的ではあったが,「泊りコース」というサービスもしたことがある.店には,デリヘルのほかに「デートコース」というのが設定されていた.

バリアフリーって何?

いつもはせいぜい,車からホテルまでの短い道のりだったからかわからないけれど,こうして長い時間道路を押してみると,身をもってその整備の重要性を感じた.
単に段差をなくすだけいいかといえば,そうではない.道幅などが狭いとやはり通りにくいし,ガードレールの内側に電柱が飛び出していたりすると,ぶつかりそうで怖い.予想以上に注意力が必要で,慣れない私は目が回りそうだった.
そして,ホテルに行くことになった.といってもラブホテルではなく,観光ホテルで一応バリアフリーの部屋があり,そこを予約しているとのことだった.部屋は上の階だというのでエレベーターに乗った.しかしエレベーターはかなり狭く,本当にバリアフリーなのかなと思った.

食事介助の難しさ

テーブルに向かい合うと補助ができないので,L字型に並んで,目黒さんに次に食べたいものを聞きながら,食事のお手伝いをする.誰かの口元に食事を運ぶというのも,初体験だった.自分も食事しながら,というのも結構大変だった.箸で食べやすい大きさに切っておくのはもちろん,口に入れるときに食べやすい角度などもあるだろう.ごはんとお刺身では形状が違うから,口への入れ方も微妙に違ってくる.押し込んでもいけないが,口から遠すぎてもいけない.その加減が難しかった.

もどかしい気持ち

そのお泊りコース.私がもらえた金額は,たしか4万円くらいだったと思う.デートして、一晩泊まって4万円.かなりの金額に思えるだろう。しかし、時給8000円の約束になっていたはずだから、計算がおかしい。
後から確認すると、今回の「泊まりコース」は、10万円パックになっていたという。女の子の取り分は、約半分。先に言われていればもちろん納得した。なぜ、そういう大切なことをこちらが聞くまで教えてくれないのだろう?この一件で、また店に対する不信感が募った
サービス面でも、待遇の面でも、スタッフ同士が今の問題点を真剣に話し合い、そう思いつつも、どこかアルバイト感覚の抜けないスタッフたちと、たまにしか顔を出さない社長に、一デリヘル嬢としか思われていないだろう私がどう話を切り出せば、物事が動くというのだろうか...もどかしさと苛立ちが募るばかりだった。

偏見

以前勤めていた店でも、イクことよりイカせることを好むお客様はいた。それは障害者がお客様でも同じだった。私の中で、どこか「障害があるので女の子と接する機会が少ない」イコール「抜く機会があまりない」イコール「何がなんでも抜かないと!」という図式ができあがっていたんだと思う。それが壊された経験だった。イカせるだけがサービスではない。普段できない男女のコミュニケーションを図ることが私たちの役割なのだ、と身をもって実感した。

悲しかったこと

この仕事をしていて悲しかったことがある。
それは、ほとんど全員のお客様に、「なぜこの仕事をはじめたのか?」と聞かれること。ソープで働いていた頃も、「なぜ風俗に入ったの?」という質問はよくされていた。借金があるのか、単にお金が欲しいのか、セックスが好きなのか。いわゆる「風俗嬢」の本心への興味はつきないらしい。だが、似たような質問に聞こえるけれど、前者の質問の真意は、「自分のような障害者を相手にすることに抵抗はないのか?」というところにある。
最初この質問の意図がわかったときは、衝撃が走った。 
そう尋ねられるほど、私は悲しい気持ちになった。
抵抗なんてない、とこっちが相手の心に飛び込んでも、障害者の彼らの方から、線引きをしてしまうという現実。私がどうしてこの仕事をしているのか、理解してくれないお客様もたくさんいたに違いない。
たいていのお客様は、最初のあいさつのときに、「(面倒かけて)すみません」というようなことをいう。最初から、謝る。すみません、ということはないのになあ、お客様なんだから。とそこでもやはり、少し寂しい気持ちになる。逆にいえば、それだけ周囲に対して細やかな気配りをもっている、ともいえる。障害を持って生まれたからこそ、わかることがいっぱいあるのだろう。この仕事で出会ったお客様は、実は繊細な人ばかりだった。たった一言の言葉のニュアンスやふとした視線の動きで、こちらの感情の機微を敏感に感じ取る。心を読まれてしまいそうになる。それだけ敏感にならざるを得ない世界で生きることを強いられてした、ともいえるだろう。

個人的に,特に心に刺さった箇所は

・バリアフリーとなんなのか?について書いている部分と,筆者がどのようにしたらサービスの改善ができるかわかっているのに言い出せない状況にあったという部分です.また,制度を作ることが人を分けることになっているという点も非常に考えさせられました.

この本の詳細について興味が出た方はよかった実際にお手にとって読んでみてください.

ここまで読んでいただきありがとうございました.


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バナナボーイ|人生のすべてをゲーム化する男
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