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際限のない欲望の話

推しバンドBUMP OF CHICKENの新曲「Sleep Walking Orchestra」がリリースされた。
年明けから放送される、九井諒子先生の漫画「ダンジョン飯」アニメ化の主題歌である。
ダンジョン飯、書店でたびたび平積みにされているのを見かけていて、気になるなぁと思いつつも読まないまま来ていたタイトルで、これを気に電子版をまとめ買いし、それはもう一気に読んでしまった。面白くて。あんまり予想のつかないところから笑いポイントが飛んできて、そのくせじわじわと不穏な空気が漂ってきたりする。温度差がすごいのに唐突さがない。もっと早いところ読んでおけばよかったというきもちと、ちょうどコミックス最終巻が出たところだったので、早く続きをおぉおおとジタバタしなくていいきもちと。なお、BUMP OF CHICKENのメンバーみなさんも作品の大ファンだそうだ。こうして色々、彼らの音楽を通じて、色々自分の知らなかったものとのご縁を繋いでもらっているなぁと思う。

それはそれとして。
実はこの記事、書き出して、書きかけのまんまひと月近くほったらかしていた。その間に原作を読み、アニメも放映が始まっている。
で、毎度毎度書き始めの時にうんうんいいながらタイトルをつけているのだけども、このタイトルをつけた時の私は「まだ原作を全部読んでいなかった」。ダンジョン飯をご存知の方には伝わるかもしれない。偶然てこわい。……いやまぁ、こういうものなんでいくらでも言えるんですけども。

そもそもなんでこのタイトルをつけようと思ったかというと、Sleep Walking Orchestraにはこんな歌詞が出てくる。

幾つかの普通が重なり合うと
時々そこには魔法が宿る
あれは恐らく悪魔だった
あれから醒めない夢の中

(Sleep Walking Orchestra / BUMP OF CHICKEN)

「悪魔」なんて、だいぶ強い言葉が出てきたなぁと思いながら、ぎくりとした。おおよそ彼らの音楽に出会ってからの自分にあまりに重なるのだ。
多分noteでも書いているのだが、私がこうして彼らの大ファンになったのには、複数の偶然が積み重なっている。長い付き合いの友人がファンだとか、大好きな漫画の音楽を作っていたとか、その友人がライブに一緒に行く予定の人がいけなくなってしまったとか、一つ一つのことを数えていくと、よくある「普通のこと」だ。そのなんでもないよくあることがきれいに積み重なった結果、私は彼らのライブに行き、そしてここにいる。
そこからどんどん楽しくなって、ライブもあちこち何度でも行きたくなったし、会いたい人もやってみたい色んなことも増えた。こうやって何かものを書くこともそう。でも、当然だけど、その全部がまるっと、思う通りに上手くいくわけがない。
ライブに行きたいったってまずチケットが取れなくちゃならない。仕事だって家のことだってあり、そもそも全国飛び回れるほどの稼ぎもない。
そして、趣味やりたいことで、知識や技能が必要なものとか、それはまたちょっと違うベクトルの話だけど、やってみたいなぁと思って始めてみると、最初比較的簡単なところは、一つ一つできてくると楽しい。で、もっとこんなことができるんだなぁと知って、チャレンジする。上手く行かなければ練習したり色々調べてみたりする。それでもなかなか思うように上達できなくて、そうこうしているうちに、周りがどんどん先に行く。この文章だって、ほとんど勢いで、これでちゃんと伝わるんだろうかとか、読んでいて面白い文章書ける人沢山いるしなぁとか。努力を努力と思わず、ただ楽しいと思って続けられることは一つの才能であり、上達にあたって最強であるという話を耳にするけれど、それは本当にその通りだ。
あっちこっちに行きたい、できたらいい席でライブを観たい、あれもこれもやってみたい。あの時手を取ってもらえなければ、見えなかった山ほどのすばらしい景色と幸運で得難い出会いがあって、あの時手を取られなかったら知らなかった悔しさ、もどかしさ、みにくいほどの嫉妬心もある。そのじりじりしたままならなさが暴れるのを思い出して、ああ、だから「悪魔」なのだろう。

そういうぐずぐずな感情は、できればどうにかうまいことコントロールしたいところだけども、それはそれとして、ある程度の元気がなければ、喜ぶこともんぎぃーーっとなることもかなわないだろう。
だから、できる限りに体に気をつけて、まだもうしばらくは、踏ん張って「生きて」いたいなと思うのだ。

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