テルアビブのアトリエに泊まった話
「カウチサーフィン」というサービスを知っていますか?
AirBnbが主流になる前、旅人の間では、カウチサーフィンがよく使われていた気がします。
いつの間にか、AirBnbがメインになってカウチサーフィンの名前を聞く機会はめったになくなってしまったように感じます。
かくいう私は、大学生時代にカウチサーフィンにお世話になったのでした。
今日は、カウチサーフィンと通じた出会いの話。
1円でも安く旅したかった学生貧乏旅行
学生の時代、まるで取りつかれたように、バイト代をためてはフライトチケットを買っていました。
時にはいくつかバイトを掛け持ちして、1日の食事の出費を500円に抑えようと頑張って、年に1回くらい海外逃亡するのだ。
何を思ってそんなに旅に出たがっていたのかはわかりません。
新しいところに行くほど、今まで全く知らなかった世界とつながって、自分自身が少し大きくなった気がするからかもしれないし、
今いる場所にとどまっていたら、絶対に出会えなかっただろう人と、人生が交差する不思議な感覚が快感だったのかもしれない。
そこまで英語が流暢なわけではなかったし、家族は誰も海外に行ったことはない。誰もパスポートを持っていないのです。
今となっては、自分がとても恵まれていると思うのですが、たまに貸与の奨学金を使いはしたものの、両親のサポートがありながら大学生活をしていた私。交際費などを抜いて残ったバイト代は、すべて旅費になったのです。
(あまりに物欲がなく、洋服にお金を使おうという意思がなかった私は、たまに親から「あまりにみすぼらしいから新しい服を買いなさい」といわれるまで、気に入った古着を着たおしておりました。)
ということで、どこに行けるのか、旅先で何ができるかは、私の稼ぎ次第。
もともと貧乏性だし、なるべくローカル目線で旅をしたかった私は、旅の最中は徹底節約志向でした。
(写真のポシェットは100均、Tシャツはサークルで作ったやつ。バックパック中は特に機能性+なくなっても良いものしか身に着けていませんでした)
友人がいる地域では、ホームステイ。なければバックパッカー宿。
そして、ユーザーが多い地域では「カウチサーフィン」というサービスを使って、宿泊場所を確保していました。
カウチサーフィンって?
ちょー簡単に言うと、AirBnbの無料版みたいなサービスです。
カウチ(ソファー)を旅人のために貸してあげる、というのがコンセプトで、旅人と各地からくるゲストと交流したいホストを繋ぐプラットフォームです。
カウチの場合もあるし、ベッドがある場合もあります。
日本人の知人も、東京でカウチサーフィンのホストをして、世界各地の旅人を泊めていたそう。
AirBnbのように認証(本人確認)システムもあります。
私が初めてカウチサーフィンを知ったのは、イスラエルを旅していた時。
イスラエルでは、男女ともに兵役の義務があります。当時は男性3年、女性2年(聞くところによりと、男女差をなくすために最近はこの限りではないそう)、高校卒業後に軍に入ります。
兵役中は規律が多い生活。そして出費は減るけれど、多少の報酬によって貯金がたまる人も多いそうです。
そこで、兵役後に多くのイスラエル人の若者は、半年~1年くらいの長期旅行に出るそうです。
もちろんみんながするものではないですが、思い切ってインドや南米などに長期バックパック旅行に出てから、就職や進学をするのが、カルチャーのようになっているとのこと。
そんな文化的背景もあり、イスラエル人には旅好きの人も多いです。
彼らに「カウチサーフィン」を教えてもらったのが、きっかけでした。
アートの街、テルアビブのアトリエに泊まった
カウチサーフィンを教えてくれたのもイスラエル人であれば、イスラエルにはカウチサーフィンのホストも多いのです。
(※2014~2016年当時)
友人曰く、旅で現地の人に良くしてもらった経験が、旅人を快く迎えたい気持ちにつながっているとか。
特に、モダンな経済都市、テルアビブには、カップルや家族、一人暮らしの人など、さまざまなホストがいました。
(2018年くらいにカウチサーフィンを試みた友人は、ホスト探しに苦労したそう。出会い目的に使う人が増えて、人気が下がり、カウチサーフィンからAirbnbに転向する人が増えたそうです)
最初は友人の家に泊めさせてもらうと思ったのですが、彼女はパートナーと同棲を始めていてやむなく断念…。
カウチサーフィンを試してみることに。
イスラエルは、モダンアートやコンテンポラリーダンスが有名なのですが、テルアビブはまさにそうしたアートが盛んな街。
(俳優の森山未來さんがコンテンポラリーダンス留学で1年滞在した街でもあります。)
ビーチサイドではランニングやヨガ、筋トレ、ビーチバレーを楽しむ人であふれます。
そんなテルアビブに住むホストもまた、魅力的な人ばかり。
アクロバティックヨガのインストラクター
ダンサーカップル
動物好きの家族
…
そんな中、興味深いと思い宿泊することに決めたのは、街の中心部に住むアーティストカップルの家。
アトリエのソファでの宿泊です。
旅人との出会いから生まれる作品たち
普段はインテリア関係の仕事をしながら、市民アーティストとして、ギャラリーなどに作品を展示している方のアトリエでした。
オイルペイントのにおいが少し残ったアトリエによく似合う猫。
(なぜか私のことを好いてくれず、何回か噛まれました)
自転車も貸してくれたので、テルアビブの街をサイクリング。
アートの街ならではで、ご近所のギャラリーへも案内してくれました。
東洋のマーシャルアーツも流行っているようで、自身が通っている柔道の道場にも連れて行ってくれました。(すみません、私はマーシャルアーツ一切やったことがありませんが。。。)
そして、彼の面白いところは、世界各国からきたゲストとともにアート作品を作ること。
上の作品は、私が泊まった時もアトリエに飾ってあった作品。
長期滞在していたゲストをモチーフに描いた油絵です。
その他にも、そのとき特に注力していたのが、インクを使った作品でした。
ランダムに落としたインクをもとに生まれる作品は、今この瞬間を生きる一瞬の強さと、偶然が生み出す美しさがあります。
日本の水墨画にも関心が合ったようで、2泊の短い滞在でしたが、筆と墨汁を使って作品作りをしました。
旅人と、ローカルの人生が交差する
アトリエという、何かを生み出す場で、旅人が来ては去っていく。
何かを残すわけでもないけれど、お互いの記憶の中に残っていく。
作品となって、ゲストの足跡がアトリエに残っていく。
そんなカウチサーフィンのセレンディピティが、心地よい空気を生み出していました。
大学4年生になった時、就職活動が始まって、なんとなく息苦しさを感じた時に始めたアルバイトは、浅草にあるゲストハウスでの夜勤アルバイト。
例とチェックインをしてきたゲストの対応をしたり、夜中にラーメン屋さんを探す各国のゲストと会話したり、一緒に折り紙を折ったり。
自己紹介をするわけでもなく、ただここに一緒にいる、という、縛られない自由なつながりを味わえる空間が、なんだかとても快適でした。
今住んでいるヨハネスブルグでも、AirBnbのホストをしています。
大学の試験が終わった
これから卒業式
デザインコンテストで入賞した
出張で
これからリンポポ州で医療ボランティアにいく
週末同性カップルとゆっくり過ごす
いろんな理由で私たちの家に泊まりに来る人たちがいます。
一緒に会話をする時もあるし、一度も話さずに去る人も。
空間を移動するからこそ生まれる、人生の交差。
旅人同士であっても、旅人とローカルであっても、この偶然の交差が、旅の醍醐味のひとつだと思うのです。
女子大生が一人で使って平気なの?
最後にちょっとだけ、カウチサーフィンのリスクについて。
サービスとはいえ、知らない人の家に泊まる(カウチサーフィンもAirBnbもですが)ので、やはりリスクも伴います。
特にカウチサーフィンは英語版しかないので、しっかりと機能を使ってスクリーニングすることが大事です。
女性一人で使うのであれば、女性がいるホストのところがベターですし、できたら複数人で使うのが良いと思います。
カウチサーフィン歴がある程度長く、レビューが高いだけでなく、レビュー数が多いところ。レビューが男女ともにバランスよくあるところ。そしてプライベートルームがあるところ。
などなど、かなりスクリーニングして使いました。
スクリーニングした結果、いい場所がなかったら、ゲストハウスやAirBnbなどお金を払ってでもちゃんと安心できるところに泊まるのが大事です。
インドでは、私の他にも複数カウチサーファーがいて、カナダから来た女性2人組と一緒に観光したり、キプロスでお世話になったホストの女性は、同じ部屋をAirBnbとカウチサーフィン両方に掲載していると言っていました。
自宅を開ける、ということはホストにもリスクがあることですし、お互いが気持ちよく使えるとよいですね。
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