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「ここは今から倫理です。」を読んで①

いつも遅れているけれど、遅ればせながら「ここは今から倫理です。」の1巻だけをタイトルに惹かれて読んでみた。どうやら人気が高いようで、アマゾンのレビューの数を見てもそれが伺い知れる。残念ながら続けて読もうとはおもわなかったけれど、こういった倫理を主題にした漫画なんてこれまで寡聞にして知らなかったのでとても新鮮だ。

それに加えて、そんな漫画が人気を博していてドラマ化していることにも驚いた。こういった形で倫理が広く人びとの関心を引くようになれば、作者もきっと本望だろうことは後書きからもわかる。

さて、僕の読後の感想を述べる前に倫理とは一体なんなのかということを少し述べておきたい。ついでに道徳との違いはなにかも述べておこうか。

まず倫理についてだけれど、早い話が秩序を目的とした基準だと考えている。基準は物事の、たとえば善悪の価値判断をする際の基になる標準のことを指すわけだけれど、それを考えるのが倫理学だと言える。よりよく生きると言うとき、より快適に過ごしやすくという意味より、より美く、より善く生きるという意味で倫理は語られる。

そして、その基準は巷間で言われているように、昔の地位の高い人、あるいは頭のいい人が”勝手に決めたもの”ではなく、人間の自然に従ったものがそれになる。人の自然とは本能や生得的なもののことで、性善説や性悪説もここから議論されている。つまり倫理とは人間の秩序を保とうとする本能を探求したものと言っていい。なので洋の東西を問わず万古不易のもので、普遍性も自ずと高い。

そして道徳はそれを体系化したものだ。普遍性が高い倫理といえど、その表現は時代や場所によって様ざまだ。卑近な例で言えば女性に関する昨今の議論を見ればわかるとおもう。昔なら女性は妙齢になれば早々に嫁ぐのが好ましいとおもわれていたけれど、今は個人の自由に委ねるべきだという考えが主流だ、と言えば解りがいいだろうか。

要するに、倫理は人の踏むべき”道理の基準”を考えたもので、道徳はその時代とその場所の実践的表現と言っていいかとおもう。作中、主人公の高柳は倫理を知らなくても困らないが、知っておいたほうがいいもので、「死が近づいた時とか」に”役に立つ”ものだと生徒に講義している。

死は絶対で確かなものだから、誰も避けては通れない問題だ。なので役に立つ立たないの問題というよりも、万人が向き合うべき真剣な問題で、倫理とは万人が考えるべきものだ。もちろん考えるか考えないかは個人の自由だけれど、考えながら立派に生きるのか、それともただ漫然と生きるのかの分岐点になるのは間違いない。

とはいえ考えながら生きてみたって、必ずしも幸せになれるとは限らない。むしろそれによって不幸を呼び寄せてしまうこともあるだろう。けれど、本当の幸せを得たいとおもうのであれば、考えなければ見つからないことも確かだ。

感想を書こうとおもったけれど、長くなってしまったのでいったんここで筆を置くことにする。

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雨野次薬
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