異質な物、美しさ、呪力
私のFacebookページに【個展メモ】として不定期で発信しているテキストを、やはり不定期にnoteへ転載してゆきます。
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【個展メモ⑧】
日本の古代宗教や縄文に関する本を読みながら、物に神が宿ることについて思いを馳せている。
かつて読んだ小林秀雄の著書に、美術愛好者はすべて偶像崇拝者である、といったような記述があったと記憶する。その時はピンと来なかったが、今はそのことをよく考える。ただの日用品と美術品には境目があって、わざわざ後世に残すのは、何か異質な物だろう。
芸術家は平面なり立体なり、形あるものを作り、そこに価値を与えようとする。さらにその価値とは、有用であるということでもない。私があえて言葉にするなら「美しい」という事だが、それはいわゆる「美しい」ではない。形而上学的な何か、呪力を持つような物を私は想像する。
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小学生の時、友人とよく石を蹴って通学路を帰った。ある日、果樹園に転がる間引きされた小さなリンゴが最適だと発見した。抜群に蹴りやすくよく転がるのだか、それが仇となって次々と用水路へ落ちて脱落していく。そんな中、奇跡的に水路を避け続け、バイバイする最後まで生き延びたリンゴがあった。興奮した私と友人はそれを「伝説のリンゴ」と命名した。今思えば、まるで民間信仰の始まりのような話だ。
(2020.10.1 Facebookページに記載)