伝統となるには
こんにちは。
世界各地で人が住めば文化が生まれ、そして歴史が蓄積されます。
もちろん日本も例に漏れず、長い歴史が存在し、島国という地理的な条件からかユニークで他にはない多くの文化が生まれてきました。
もちろん隣国とは長きに渡り関係があるため、文化的な影響はありますが、それはどの地域でも同様であり、影響を受けた文化が違う地域で独自の発展を遂げると、また新たな魅力としても体験することが出来ます。
ただ日本と一括りにしても、細かい地域ごとに見ていくとそれぞれさらに違う文化があり、その地域でその文化を継承していっています。
歴史ある文化は、いつしか伝統と呼ばれることになり、その伝統を継承していくことが地域の文化保全に貢献していることは間違い無いでしょう。
一方、伝統と呼ばれるからには長い歴史が必然的に付きまといますが、現在の時点で伝統に触れる際にその歴史をしっかりと理解して感じたり、体験することは容易いことではありません。
村のコミュニティに属し、村で生活をして、村のために働くような環境でしたら深く村の伝統を理解して継承していくことが出来るかもしれません。
しかし、現社会においてそのような人はどの程度いるでしょうか?
伝統を継承するにはその関連した仕事をしている人たちに委ねられることが多くなると思います。
私の立場を考えれば、建築を生業にしていることから、日本の伝統建築について歴史を含めた文化的な意味などを継承していくことが必要なのかもしれません。
しかし伝統は本当に継承しなくてはいけないのかという疑問が出てきます。
いわゆる日本の伝統建築を想像すると木造・瓦屋根・畳・障子が思い浮かびます。
ずいぶん端折っていますが、これらですら条件が整う建物は多くないでしょう。
経済合理性や技術の発展により、日本の伝統建築はほとんど姿を消しました。
当然の話ですが伝統建築は今の生活から考えれば性能が低く、決して快適なものではないと言えるでしょう。
しかし伝統建築は不要かと言うと、決してそんなことはないと私は思います。
その理由として、まず歴史があります。
歴史あるものだから残したいというよりは、今に至るまでの資料として、歴史というのは残す必要があると考えます。
次に観光資源として有効だからです。
どの国にも言えると思いますが、伝統建築は他国の方から見たら文化を視覚的に捉えられるわかりやすい資源となります。
また伝統建築は再現するのは非常に大変であり、今あるものを保存していくのが有効だと考えます。
そして最大の理由としては、長年人々に受け入れられてきた美しさがあるからです。
歴史的な意味や機能性などを考慮しなくても、いつの時代にも美しいと評価されたことは何よりも建築としての存在意義を有します。
建築に限らずとも、工芸やお祭りなども美しさが人々に感動を与え、継承していくモチベーションとなっているのではないかと考えます。
伝統として残るものは、おそらくこれからも美しいものであり、人々に感動を与えるものであると思います。
そして、そうでなければ伝統と呼ばれるほど残り続けることは難しいとも考えられます。
これからも多くのものが生まれては消えていくのが繰り返されることになるでしょうが、建築に携わる身としては、美しさにこだわりを持って残り続けるものを生み出せれば何よりも喜ばしいことです。