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労働運動内のアナキスト(3)

原文:https://blackrosefed.org/anarchists-in-the-labor-movement-3/
原文掲載日:2024年8月19日

この記事は、「労働運動内のアナキスト」と題したインタビュー゠シリーズの第3回である。それぞれのリンクをクリックして、第1回の教育労働者拙訳)、第2回の医療労働者拙訳)について読んでいただきたい。

このインタビューでは、米国中西部の州の金属加工労働者ダニエル゠ボヴァード-カッツに話を聞いた。

タイトルが示しているように、このシリーズでは職場の組織化に取り組んでいるアナキスト達に話を聞く。話を聞く人々の中には、既存労働組合の一般組合員の中で戦闘的少数派を構築している者もいれば、新しい労働組合キャンペーンを通じて未組織労働者の組織化をしている者もいる。また、労働組合の支援が得られない情況下で職場闘争に勝つための能力を構築する方法を見つけている者もいる。

このシリーズの目的には、単に、米国労働運動にいるアナキスト闘士の存在にスポットライトを当てるという面もある。より本質的には、インタビューを受けた人達に、成功も失敗も含めて自身の経験を批判的に振り返り、一般化できる教訓を導き出してもらっている。

このシリーズでインタビューした人達は、全員ではないが、ブラックローズ/ローサネグラのメンバーである。

分かりやすさと長さを考慮して、回答は編集されている。


ダニエル゠ボヴァード-カッツ(金属加工労働者)

BRRN:あなたの政治見解を一言でまとめてもらえますか?

ダニエル:私の信念はラディカル゠デモクラシー(急進的民主主義)です。社会に影響を与える力を全ての人が平等に持つという意味です。

BRRN:あなたが取り組んでいる組織活動の背景を教えて下さい。

ダニエル:私は多くのキャンペーンに取り組み、自分の職場で組織を作ったり、組織作りをしている人達を支援したりしてきました。私の職場について言えば、私は中西部に住んでいて、広い意味での金属・機械産業で働いています。私達はNLRB(原註:全国労働関係委員会 National Labor Relations Board、米国労働法を執行し、一部の労働組合選挙を監督する連邦政府の機関)の承認を求めていないので、決まった交渉単位というものはありません。私が組織作りを始めたのは、数年前、多額の未払残業代に不満を持ったからです。でも、この問題で私自身と私と同じような業務をしている一人の同僚が基本的な勝利を勝ち取った後、組織作りを止めてしまいました。友達の一人がこの会社に雇用され、彼女がそれまで一緒に働いていた人も採用されたので、最近この活動を復活させたのです。

BRRN:既成組合と組んでいるのですか、それとも独立しているのですか?

ダニエル:私達は世界産業労働者(IWW)に加盟しています。IWWに加盟したのは、全ての労働者を組織することに関心を持っているのは彼等だけだと思ったからです。

BRRN:自身のアナキズムの政治見解は、同僚と共に権力を組織化することとどのように関係していると思いますか?

ダニエル:組織活動レベルを含め、労働組合全体で民主的意思決定に重点を置いています。そうでなければ、政治はあまり話題になりません。

BRRN:アナキズムの政治について同僚と話すことはありますか?同僚と「政治」(世界情勢や地元の権力構造)について話しますか?

ダニエル:ほとんどないですね。普通、かなり表面的です。一度、同僚と職場の問題とその対処方法について話し合ったことがありました。しかし、彼は、その後、自分が強く支持していたナレンドラ゠モディを持ち出して、インドのイスラム教徒は皆テロを支援していると言い出しました。私はそれに穏やかに反論しようとして、イスラム教徒は何も関係ないのにテロ攻撃をイスラム教徒のせいにする人達が米国にもいると話したのですが、あまり上手く行かなかったようです。今にして思えば、この会話にもっと力を入れて、なぜ彼がそんなことを言ったのか時間を掛けて聞き出すべきだったと思いますが、少し力不足でした。

BRRN:あなた方の組織活動には、自らを「政治的」と見なしつつも、異なる政治的伝統や政治組織に属している人々もいますか?

ダニエル:よく分かりません。組合に参加した人は皆、自分をある種の急進左派と見なしていると思います。ただ、もっと保守的な労働者の中にも、変革が必要だとか集団行動すらも必要だということに同意している人達がいるのですが、未だ組合に加入するよう声を掛けられていません。私達は組織作りの初期段階にいるので、後々問題になるかもしれませんが、今のところ特に問題にはなっていません。

BRRN:労働組合の組織化は、社会変革や革命といったあなたのヴィジョンに合致していますか?

ダニエル:はい。さっき述べたように、私の信念の核心は民主主義です。人々が平等な力を持つという意味です。労働組合は恐らく、職場で権力を有意義にシフトさせる唯一の方法でしょう。そこでは社会の意志決定の大半が行われます。ですから、私の思うプロセスは次のようなものです。(1)全ての職場で労働組合を結成し、(2)民主的に何を生産するのか実際に決定するところまでこうした労働組合を作り上げ、(3)もはや何もしない管理層を切り捨て、(4)複雑な社会に必要な工業生産を管理することで職場外の社会を統制している国家を労働者による管理に置き換える。

BRRN:組織を作る上で、最も役立ったリソースは何ですか?

ダニエル:IWWオルガナイザー養成プログラムはとても良いですよ。

BRRN:労働組合を組織しようとしているアナキストにどのようなアドバイスをできますか?自分が始めた時に、知っておけば良かったことは何ですか?

ダニエル:相手への思いやりに基づいて人間関係を築かねばなりません。組織作りの会話を始める前であっても、同僚に話し掛けて、その人達のことをもっと知りましょう。一緒に働きたいとか、話したいとか思われる(少なくとも、絶対嫌だと思われない)人になりましょう。

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